広島市南区の宇品港から約3キロメートル沖合に浮かぶ似島は、島の形状が富士山に似ていることから「安芸の小富士」の愛称で親しまれている瀬戸内海の離島です。周囲約13キロメートルという手頃な距離を誇るサイクリングコースは、初心者から上級者まで幅広いサイクリストに人気を集めています。
島内には信号機が一つもなく、交通量も極めて少ないため、周囲の美しい瀬戸内海の景色を存分に楽しみながら、安全に走行することができます。コース上では、牡蠣筏が並ぶ漁村の風景や、歴史的な検疫所跡、そして透明度の高い海岸線など、様々な表情を見せる島の魅力に出会えます。
さらに、島内には「ウエルカム似島」という観光案内所があり、手軽に自転車をレンタルすることができるため、気軽にサイクリングを楽しむことができます。海からの心地よい潮風を感じながら、のんびりと島を一周する贅沢な時間は、都会の喧騒を忘れさせてくれる特別な体験となることでしょう。
似島のサイクリングコースの特徴と基本情報を教えてください
似島のサイクリングコースは、瀬戸内海に浮かぶ離島ならではの魅力に満ちた特別なコースです。まず、コースの総距離は約12キロメートルと、半日で余裕を持って一周できる距離となっています。実際の所要時間は、写真撮影や休憩を含めても約1時間半から2時間程度で島を一周することができ、初心者でも気軽にチャレンジできる距離設定となっています。
コースの大きな特徴として、島内には信号機が一つも設置されていないことが挙げられます。また、一般車両の通行量も極めて少ないため、自転車に乗る人にとっては理想的な環境が整っています。道路は海岸線に沿って整備されており、島を一周する形で自然と目的地に戻ってくる設計となっているため、道に迷う心配もほとんどありません。ただし、一部には車が通行できない細い道路区間や、多少のアップダウンがある区間も存在するため、走行時には注意が必要です。
サイクリングを楽しむ際の交通手段として、広島市の宇品港から定期フェリーが運航されています。似島汽船の場合、片道約20分で島に到着し、大人一名と自転車一台の往復料金は合計1,240円(大人460円×2、自転車160円×2)となっています。また、もう一つの選択肢としてバンカー・サプライ社の定期航路も利用可能で、こちらは所要時間15分、料金も若干安く設定されています。
自転車については、島内の観光案内所「ウエルカム似島」でレンタルすることが可能です。料金は普通自転車が1日500円、電動自転車が1,500円となっています。レンタル時には簡単な利用者情報の記入が必要ですが、手続きは非常にシンプルです。なお、自分の自転車を持ち込むことももちろん可能で、フェリーでの自転車の運搬も一般的に行われています。
コース上では、瀬戸内海の美しい景観を存分に楽しむことができます。特に透明度の高い海水や、牡蠣の養殖筏が並ぶ風景は、この地域ならではの魅力となっています。また、道中には旧陸軍の検疫所跡や慰霊広場など、歴史的な見どころも点在しており、単なるサイクリングにとどまらない、文化的な体験も得られます。
なお、島内には飲食店やコンビニエンスストアが限られているため、飲み物や軽食は事前に準備しておくことをお勧めします。トイレについても、似島学園前桟橋付近や臨海少年自然の家、似島港付近など、限られた場所にしか設置されていないため、場所をあらかじめ確認しておくと安心です。また、夏場は特に暑さが厳しくなるため、帽子や日焼け止め、十分な量の飲料水を持参することも重要です。
季節を問わず楽しめる似島のサイクリングコースですが、特に春から秋にかけては穏やかな瀬戸内海の気候と相まって、最適なサイクリング日和となることが多いです。ただし、雨天時は路面が滑りやすくなる箇所もあるため、天候には十分注意を払う必要があります。初めて訪れる方は、晴れた日を選んで訪れることをお勧めします。
似島サイクリングの推奨ルートと主要な見どころを教えてください
似島でのサイクリングは、似島港もしくは似島学園前桟橋からスタートすることになります。どちらの桟橋を起点にするかで最適なルート選択が変わってきます。特に初めて訪れる方には、以下のようなルート設定をお勧めします。
まず、似島港から出発する場合は時計回りのルートがお勧めです。その理由は、序盤に比較的緩やかな道が続き、島の様子を楽しみながら徐々にペースをつかむことができるためです。最初の見どころとして、港近くの氏神様の神社があります。ここで安全な走行を祈願してからスタートするのも良いでしょう。その後、島の北側を進むと、広島市街地の眺望ポイントがあり、G7の会場となったプリンスホテルや元宇品の景色を楽しむことができます。
一方、似島学園前桟橋からスタートする場合は、反時計回りのルートが推奨されます。このルートでは、序盤に臨海少年自然の家や慰霊広場といった歴史的スポットを効率よく巡ることができます。特に臨海少年自然の家では、かつての検疫所の面影を残す建造物や、第一次世界大戦時の捕虜収容所跡など、貴重な歴史的遺構を見学することができます。
コース上の特筆すべき見どころとして、安芸小富士トンネルがあります。このトンネルは旧陸軍が建設したもので、昼間でも内部は真っ暗となっており、手動で電気をつけて通過する必要があります。トンネルの先には美しい海岸線が広がり、能美島や江田島を望む絶景ポイントとなっています。
島の南側には牡蠣の保育所と呼ばれるエリアがあります。ここでは、浅瀬に整然と並べられた杭に、ホタテ貝の殻を使って幼い牡蠣を育てる様子を見学することができます。この独特の風景は、広島の重要な地場産業である牡蠣養殖の一端を知ることができる貴重なスポットです。
似島学園周辺では、歴史的な建造物群を見学することができます。特に注目すべきは後藤新平の像で、若き日の後藤新平が検疫所の整備拡充に尽力した功績を伝えています。また、旧陸軍桟橋や検疫所の焼却炉煙突など、当時の面影を今に伝える建造物も残されています。
海岸線沿いには、いくつかの自然海岸があり、透明度の高い瀬戸内海を間近に感じることができます。特に島の北西部には、遠浅の美しい浜辺があり、休憩スポットとして最適です。ここでは、広島湾を行き交う船舶を眺めながら、心地よい潮風を感じることができます。
サイクリング中の写真スポットとしては、家下地区の海岸線がお勧めです。ここからは宮島や市街地を一望することができ、朝夕は特に美しい景色を撮影することができます。また、島のいたるところに点在する牡蠣筏も、瀬戸内海らしい風景として人気の被写体となっています。
休憩ポイントとしては、少年自然の家の周辺がお勧めです。ここには、夏季にはプールやカヌー体験施設も併設されており、サイクリングの合間に様々なアクティビティを楽しむことができます。プールは海水を利用していますが、地下から汲み上げた清浄な海水を使用しているため、透明度が非常に高いことでも知られています。
なお、上級者向けのチャレンジとしては、島の東側にある細い海岸沿いの道を走ることもできます。ここは一般車両の通行ができない区間となっており、アップダウンも多いため、より本格的なサイクリングを楽しむことができます。ただし、初心者の方はメインルートを走ることをお勧めします。
一周の途中では、随所に休憩ポイントが設けられており、海を眺めながらのんびりと過ごすことができます。全行程を通して、瀬戸内海の豊かな自然と、広島の歴史を同時に体感できる、バラエティに富んだサイクリングコースとなっています。
似島サイクリングは季節や時間帯によってどのように楽しみ方が変わりますか?
似島でのサイクリングは、季節や時間帯によって異なる表情を見せてくれます。瀬戸内海特有の穏やかな気候に恵まれた似島では、一年を通じてサイクリングを楽しむことができますが、それぞれの季節で特徴的な魅力があります。
春のサイクリングでは、穏やかな陽気と共に島全体が柔らかな雰囲気に包まれます。この時期は特に空気が澄んでおり、広島市街地や宮島の風景を鮮明に望むことができます。また、島内の道端には春の野花が咲き誇り、サイクリングの途中で心が和む風景に出会えます。潮風も心地よく、長時間の走行でも快適に過ごすことができる季節です。
夏には、臨海少年自然の家のプールが海水浴施設として開放され、サイクリングの合間に水遊びを楽しむことができます。また、7月1日から9月9日までの期間は遊泳期間として設定されており、暑い日のサイクリング後の気分転換に最適です。ただし、夏場は気温が高くなるため、早朝もしくは夕方以降のサイクリングがお勧めです。日中のサイクリングを計画する場合は、十分な水分補給と休憩を取ることが重要です。
秋になると、島全体が穏やかな空気に包まれ、サイクリングには最適な季節を迎えます。特に、夕暮れ時には瀬戸内海に沈む夕日と共に、広島湾を行き交う船の風景が美しく、写真撮影にも適しています。また、この時期は牡蠣の収穫シーズンと重なるため、島の各所で牡蠣打ちの音が響き、活気ある風景を楽しむことができます。
冬は、澄み切った空気の中で広島湾の絶景を楽しむことができます。この時期は観光客も少なく、ゆったりとした雰囲気の中でサイクリングを楽しめます。特に、晴れた日の午前中は、穏やかな瀬戸内海と共に、静かな島の風景を満喫することができます。ただし、防寒対策は必須で、特に海からの冷たい風を考慮した装備が必要です。
時間帯による楽しみ方も様々です。早朝のサイクリングでは、朝日と共に目覚める島の姿を見ることができます。この時間帯は特に空気が澄んでおり、島の東側からスタートすれば、朝日と共に走り出すことができます。また、早朝は漁船が出港する時間帯とも重なり、活気ある港の風景を見ることができます。
お昼前後の時間帯は、太陽の光で輝く海の風景が美しく、透明度の高い海水を最も鮮やかに観察することができます。特に、島の南側にある牡蠣の保育所では、太陽の光が水面に反射して作り出す神秘的な風景を楽しむことができます。
夕方のサイクリングでは、西に傾く太陽と共に、島の風景が刻々と変化していく様子を楽しむことができます。特に、島の西側にある海岸線からは、宮島方面に沈む夕日の絶景を望むことができます。また、この時間帯は気温も下がり始め、快適なサイクリングを楽しむことができます。
なお、季節や時間帯を問わず、フェリーの時刻表は事前に確認しておくことが重要です。特に、最終便の時間は季節によって異なることがあるため、帰りの便を逃さないよう注意が必要です。また、天候の変化にも注意を払い、急な雨や風に備えて、余裕を持った行程を組むことをお勧めします。
デジタルカメラやスマートフォンで写真撮影を楽しむ方には、朝夕の「マジックアワー」と呼ばれる時間帯がお勧めです。この時間帯は、柔らかな光に包まれた島の風景を最も美しく収めることができます。特に、広島市街地や宮島を背景に含めた写真は、思い出に残る一枚となることでしょう。
似島サイクリングではどんな自転車を選び、何を準備すればよいですか?
似島でのサイクリングを楽しむ上で、適切な自転車の選択と必要な準備物の用意は非常に重要です。まず、自転車の選択については、主に3つの方法があります。
1つ目は、島内の観光案内所「ウエルカム似島」でのレンタル自転車の利用です。ここでは一般自転車が1日500円、電動自転車が1日1,500円でレンタルすることができます。利用に際しては、中学生以上であることが条件となり、小学生は保護者同伴が必要です。手続きは簡単で、申込用紙に記入して料金を支払うだけです。ただし、レンタル自転車は数に限りがあるため、特に週末や祝日は早めの利用をお勧めします。
2つ目は、自身の自転車を持ち込む方法です。フェリーでの自転車の運搬料金は片道160円と手頃で、多くのサイクリストがこの方法を選んでいます。自転車を持ち込む場合は、マウンテンバイク(MTB)やグラベルロード、クロスバイクといった、ある程度不整地での走行に対応できる自転車が推奨されます。これは、島内には一部未舗装路や路面状態の悪い箇所があるためです。
3つ目は、宇品港でレンタサイクルを借りて渡航する方法です。ただし、この場合は観光案内所の営業時間(10時開始)に注意が必要で、早朝からのサイクリングを計画している場合は別の方法を検討する必要があります。
次に、サイクリングに必要な準備物について解説します。まず必携品として以下のものが挙げられます:
- 飲料水: 島内には自動販売機が限られているため、十分な量(1人あたり1リットル以上)を持参
- 行動食: コンビニエンスストアがないため、軽食やエネルギー補給食を持参
- 帽子・日焼け止め: 海からの照り返しが強いため、日差し対策は必須
- タオル: 汗を拭うため、また海辺での休憩時に使用
- 携帯電話: 緊急時の連絡用(島内でも通信可能)
- 現金: レンタサイクル料金や飲み物の購入用
- カメラ: 美しい景色の撮影用(スマートフォンでも可)
また、季節や天候に応じて以下のものも準備すると良いでしょう:
- 雨具: 急な天候の変化に備えて携帯用のレインウェア
- 防寒着: 特に冬季は海からの冷たい風に備えて
- サングラス: 海面からの反射光対策として
- 虫除け: 夏季の虫対策用
- バンドエイド: 擦り傷などの応急処置用
自転車に関する装備品としては、以下のものを推奨します:
- ヘルメット: 安全走行のため(レンタサイクルの場合は備付けあり)
- 携帯ポンプ: パンク修理用(自転車持込の場合)
- パンク修理キット: 特に自転車持込の場合は必須
- ライト: トンネル通過時に必要
さらに、安全面での注意点として、以下の事項に留意が必要です。まず、島内には救急医療施設がないため、体調管理には特に気を配る必要があります。また、道路は概ね整備されているものの、一部には急な坂道や狭い区間があるため、経験に応じた無理のないペース配分が重要です。
特に電動自転車を選択する場合は、バッテリー残量に注意を払う必要があります。島内には充電設備が限られているため、残量に余裕を持った利用を心がけましょう。また、一般自転車の場合は、ギア付きの自転車を選ぶと坂道での負担を軽減することができます。
最後に、自転車の整備状態の確認も重要です。レンタサイクルの場合は、乗車前にブレーキの効き具合やタイヤの空気圧を確認しましょう。自身の自転車を持ち込む場合は、事前に十分な整備を行い、特にブレーキ系統とタイヤの点検は入念に行うことをお勧めします。
サイクリングコース上にある似島の歴史的スポットや文化施設について教えてください
似島は、瀬戸内海に浮かぶ美しい景観を持つ島であると同時に、近代日本の歴史において重要な役割を果たしてきた場所です。サイクリングコース上には、そうした歴史を物語る多くの史跡や施設が点在しています。
まず特筆すべきは、似島検疫所の歴史です。明治時代、日清戦争の際に広島城に大本営が置かれ、多くの兵士が宇品港から出征していきました。その際、帰還兵の検疫施設として似島が選ばれ、検疫所が整備されていきました。当時の若き後藤新平が検疫所の整備拡充に手腕を発揮し、その功績により後に台湾総督府への道が開かれたという歴史もあります。現在、似島学園の構内には後藤新平の像が建てられており、サイクリングコース上から見学することができます。
戦時中の検疫所は、日露戦争や第一次世界大戦を経るごとにその規模を拡大していきました。そして、1945年8月6日、広島に原子爆弾が投下された際には、1万人を超える被爆者が運び込まれ、多くの方々がここで命を落としました。現在の慰霊広場は、そうした方々の御霊を慰めるための場所として整備されており、平和について考える重要な場所となっています。
島の南側には臨海少年自然の家があり、これは旧検疫所の主要施設跡地に建てられています。ここでは、かつての建造物の一部が今でも見ることができ、戦争の歴史を伝える貴重な遺構となっています。特に注目すべきは、明治28年に建設された検疫所焼却炉の煙突で、当時の建築技術を今に伝える貴重な遺構として残されています。
文化的な側面では、似島は日本におけるバウムクーヘン発祥の地としても知られています。第一次世界大戦中、ここに収容されていたドイツ人捕虜が、故郷を懐かしんでバウムクーヘンを焼いたことが始まりとされています。現在、「ウエルカム似島」では、この歴史にちなんだバウムクーヘンを購入することができます。
また、島の産業を物語る施設として、各所に牡蠣打ち場が点在しています。特に島の南部にある入り江は、「牡蠣の保育所」と呼ばれ、ホタテ貝の殻を利用して幼い牡蠣を育てる場所となっています。この独特の養殖方法は、広島の重要な地場産業である牡蠣養殖の伝統技術を今に伝えるものです。牡蠣筏の配置場所は数年おきに抽選で変更されるという興味深い仕組みも残されており、地域の伝統的な漁業権の在り方を知ることができます。
駐輪場所としても使用される宇品港駅プラットフォーム跡も、歴史的に重要な遺構の一つです。これは、検疫を終えた帰還兵士たちが本土へ戻る際に最初に降り立った場所で、現在は一部が似島に移築保管されています。当時の兵士たちが、ここから故郷への第一歩を踏み出したという感慨深い歴史を伝えています。
さらに、島内には旧陸軍によって建設されたトンネルが残されており、サイクリングコースの一部として現在も使用されています。このトンネルは手動で照明をつける仕組みが残されており、当時の設備の一端を今に伝えています。
近年では、地元のボランティアによって2021年に似島平和資料館が開設されました。ここでは、島の歴史や戦争に関する資料が展示されており、事前に連絡すれば見学することができます。サイクリングの途中で立ち寄ることで、島の歴史をより深く理解することができます。
このように、似島のサイクリングコースは単なる景観を楽しむだけでなく、日本の近代史を学び、平和について考える機会を提供してくれます。各史跡や施設には案内板が設置されており、サイクリングの途中で気軽に歴史を学ぶことができます。ただし、一部の施設は事前予約が必要な場合もあるため、見学を希望する際は事前に確認することをお勧めします。
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