ロードバイクに乗り始めて少し慣れてくると、自然と視野に入ってくるのが「もっと長い距離を走りたい」という欲求。特に「200km」という距離は、多くのサイクリストにとって一つの大きな壁であり、達成したい目標でもあります。ブルベ(長距離サイクリングイベント)の参加資格となる最短距離でもあり、この距離を克服できれば、自転車の世界が大きく広がります。
しかし、初めて200kmに挑戦する際には、様々な不安や疑問が浮かびます。体力は持つのか?どのような準備が必要なのか?どうやって走ればいいのか?今回はそんな疑問に、実体験と専門知識を交えて答えていきます。

初心者でも200kmロングライドに挑戦できる?成功の秘訣は?
200kmという距離を聞くと、「自動車でさえ2時間以上かかる距離を自転車で走るなんて無理だ」と思うかもしれません。しかし、正しい準備と知識があれば、普段100kmほど走れる人であれば、200kmも十分に達成可能な目標です。
成功の秘訣は何より正しいペース配分にあります。200kmを走り切るコツは、意外にも「いかに頑張らないか」が鍵となります。特に序盤で力を使い果たさないことが重要です。
「こんなペースで間に合うかな?」と思うぐらいのゆっくりとしたペースで始めるのがベストです。普段の巡航速度より2km/hほど遅いくらいがちょうど良いでしょう。これにより体力を温存し、後半も安定したペースを維持できます。
もう一つの秘訣はメンタル面の準備です。200kmという距離は、単なる体力の問題ではなく、精神的な忍耐も求められます。「40kmを5回」「100kmを2回」というように、距離を小分けにして考えると心理的なハードルが下がります。
また、必ずしも一人で挑戦する必要はありません。できれば経験豊富な先輩サイクリストと一緒に走るのがベストです。彼らの経験から学べることは多く、万が一のトラブル時も心強い味方になってくれます。同じ脚力レベルの仲間と一緒なら、互いに励まし合いながら走ることができるでしょう。
200km走行に必要な装備と準備はどうすればいい?
200kmのロングライドに挑戦するためには、適切な装備と入念な準備が不可欠です。以下に必要なものをリストアップします。
必須装備:
- 反射ベスト:ブルベなどに参加する際は必須。安全面でも重要
- ナビゲーション:サイクルコンピュータまたはスマホのマップアプリ
- パンク修理キット:チューブ(最低2本)、携帯ポンプ、タイヤレバー、パッチなど
- 携帯工具:六角レンチセット、多機能ツール
- 補給食と水:ジェル、エナジーバー、おにぎりなど。水は十分に
- 保険証と緊急連絡先:万が一の事故に備えて
- 自転車保険の情報:ブルべ参加時には規定を満たした保険への加入が必須
- 天候対応アイテム:防寒着、ウインドブレーカー、レインウェアなど
夜間走行の可能性がある場合は、前後ライト(予備バッテリーも)とモバイルバッテリーも必要になります。
事前準備:
身体づくりが最も重要です。いきなり200kmに挑戦するのではなく、段階的に距離を伸ばしていくのが望ましいです。理想的には、ブルベに参加する場合、100kmから150kmのライドを定期的にこなしておくと安心です。
トレーニングとしては、L2トレーニング(低強度で長時間行う持久力トレーニング)が効果的です。これは最大心拍数の約60-70%程度の強度で長時間走行するトレーニングで、「走りながら会話できるぐらいの強度」が目安です。基礎体力を向上させ、長時間の運動に耐えられる身体を作るのに役立ちます。
前日の準備も重要です。バイクの点検(特にブレーキ、タイヤ、変速機)、装備の確認、各種デバイスの充電を忘れないようにしましょう。また、十分な睡眠をとり、朝はしっかり朝食を摂ることも大切です。
ロングライド中の正しいペース配分とエネルギー管理は?
200kmのロングライドを成功させるためには、ペース配分とエネルギー管理が鍵となります。
ペース配分:
- 開始は控えめに:スタート直後は周りの速いペースに流されないこと。制限時間を考慮すると、平均15-18km/hで十分間に合うことが多いです
- 一定のケイデンスを維持:80-90rpmを目安に、高いケイデンスで軽いギアを使うと脚の疲労を軽減できます
- 信号や停止後の再発進はゆっくりと:急加速は最もエネルギーを消費するので、徐々に速度を上げましょう
- 登りは無理をしない:小さな登りでも早めにインナーギアに落とし、余裕を持って上りましょう
- 下りや平坦区間は効率よく:下り基調の区間はしっかりペダルを回し、速度を維持しましょう
エネルギー管理:
200km走行では約3000kcalを消費すると言われています。人の体に貯蔵されるグリコーゲンは1500-2000kcal程度なので、途中での補給が必須です。
- こまめな補給:1時間に1回、200-300kcalを目安に補給しましょう
- 補給のタイミング:疲れを感じる前の早めの補給が重要
- 補給食の選択:ジェル、バナナ、おにぎりなど消化の良いものを選びましょう。小麦粉製品は胃腸への負担が大きい場合があります
- 水分補給:20分おきを目安に、少量ずつこまめに水分を摂りましょう。夏場は特に重要です
また、長時間のサドルとの接触によるお尻の痛みを防ぐために、15分おきにダンシングをはさんだり、信号停車時にサドルから腰を下ろすとリフレッシュできます。
200kmコース選びのポイントと初心者におすすめのルートとは?
初めての200kmチャレンジでは、コース選びも成功の重要な要素です。
コース選びのポイント:
- 獲得標高:初心者は平坦中心のコースを選ぶのがベスト。獲得標高2000m以下を目指しましょう
- 交通状況:交通量の少ないルートや自転車専用道が含まれるコースが安全
- 補給ポイント:コンビニや休憩所が適度にあるコース
- 退避ルート:万一の場合に撤退できる駅やバス停がルート上にあるとベター
- 風向き:可能であれば、終盤に追い風になるようなルート設計を考慮する
初心者におすすめのルート:
サイクリングロードを活用したルートが最適です。例えば、関東なら「つくば霞ヶ浦りんりんロード」は、平坦で自転車専用道路のため、初心者のロングライドに最適です。片道約40kmを2往復半すれば200kmになります。
他にも、荒川・江戸川・利根川のサイクリングロードを組み合わせた「関東平野一周コース」も、平坦で安全なロングライドルートとして人気です。
関西エリアなら「ビワイチ」(琵琶湖一周)は約200kmで、日本最大の湖を一周する達成感と美しい景色を楽しめるコースです。
また、ブルベイベントに参加する場合は、「初心者向け」と謳われているコースを選ぶと良いでしょう。主催者がコース設計をしているので、補給ポイントなども考慮されています。
200km完走後のケアと次のステップはどうすればいい?
200kmを完走した後は、適切なケアと次の目標設定が重要です。
完走後のケア:
- クールダウン:急に運動を止めるのではなく、ゆっくりとしたペースで5-10分ほど走ったり、ストレッチをしましょう
- 栄養補給:タンパク質とカーボハイドレートをバランス良く摂り、グリコーゲンを回復させましょう
- 水分補給:失った水分と電解質を補給します
- 休息:十分な睡眠をとり、筋肉の回復を促進させましょう
- 翌日以降の軽い運動:完全に動かないより、軽いスピンニングなどが回復を早めます
注意点として、200kmのようなロングライド後は運転能力が低下することがあります。可能であれば公共交通機関を利用するか、十分休憩してから運転するようにしましょう。
次のステップ:
200kmを完走できたら、次はどうするか?いくつかの選択肢があります:
- 同じ距離でスピードアップ:200kmを走るタイムを縮める
- ブレベ300kmに挑戦:次のステップとして300kmにチャレンジ
- 異なるコース:同じ距離でも異なるコース(例えば山岳コース)に挑戦
- 複数日ライド:2日間で400kmなど、マルチデイライドを楽しむ
ただし、一度200kmを走破できても、長期間乗らないと脚力は落ちます。定期的なトレーニングを継続し、コンディションを維持することが大切です。
200kmという距離は、一般的なサイクリストにとって大きな挑戦ですが、適切な準備と戦略があれば十分に達成可能です。最初は不安もあるかもしれませんが、一度完走すれば大きな自信になり、自転車の楽しみ方が広がります。
無理せず自分のペースで走り、美しい景色や達成感を楽しむことが、ロングライドの醍醐味です。準備をしっかりと行い、ぜひ200kmへの挑戦を楽しんでください!
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