ロードバイクのタイヤ選びで迷っているあなたへ。かつて「細いタイヤ=速い」が常識だった時代から、現在は28Cが新たな標準として急速に普及しています。この変化は単なる流行ではなく、ディスクブレーキの普及やリムのワイド化といった技術革新に裏打ちされた必然的な流れです。
従来の23Cから25C、そして現在の28Cへの移行は、パフォーマンス重視の結果でもあります。最新の研究では、適切な条件下で28Cの方が転がり抵抗が低くなる場合があることが判明。快適性やグリップ力、多様な路面状況での効率的な転がりが、完璧に滑らかなラボ環境での理論値よりも実世界での速度に大きく貢献するという理解が深まっています。
本記事では、あなたのライディングスタイルや目的に合った最適なタイヤ選択ができるよう、25Cと28Cの特性を徹底比較。実測データとインプレッションに基づいた実用的な情報をお届けします。

ロードバイクタイヤの25Cと28C、結局どっちが速いの?転がり抵抗の真実とは
長らく信じられてきた「細いタイヤ=速い」という常識が、最新の科学的研究によって覆されつつあります。この変化の背景には、実験室環境と実走環境での大きな違いがあります。
従来の転がり抵抗テストは、完璧に滑らかな路面での実験室環境下で行われていました。しかし実際の走行では、アスファルトの粗さや段差など、路面状況が常に変化します。SILCAラボが2016年に公開した画期的な実験結果では、「空気圧を上げすぎると転がり抵抗が増す」という事実が明らかになりました。
この現象の鍵となるのが「インピーダンス」という概念です。タイヤが高圧すぎると路面の凹凸を吸収できずに跳ねてしまい、結果として余分なエネルギー損失が発生します。つまり、タイヤが路面と動的に相互作用する中で、垂直方向の動きによるエネルギー損失を最小限に抑えることが、実世界での速度向上に不可欠なのです。
具体的なデータを見ると、Continental Grand Prix 5000 All Season TR 25Cの転がり抵抗は100psi(6.9 bar)で10.9ワット、一方Schwalbe Pro One Aero TLE 28Cは90psi(6.2 bar)で10.5ワットという優れた数値を示しています。適正空気圧同士で比較すれば、28Cが25Cと同等かそれ以上の転がり抵抗性能を持つことが証明されています。
さらに重要なのは、28Cのしなやかさです。28Cと25Cを比較すると、転がり抵抗が小さく、しなやかさに優れているのは28Cであることが明確に示されています。実走インプレッションでも、漕ぎ出しの重さは加速すれば気にならなくなるという報告が多数あります。
この事実が示すのは、トップティアの最新タイヤにおいて、25Cと28Cの転がり抵抗の差は、適切な空気圧調整と実世界での走行条件を考慮した場合、もはや無視できるレベルか、むしろ28Cが有利であるということです。したがって、タイヤ選択の焦点は「どちらが速いか?」という単純な問いから、「速度を犠牲にすることなく、より良い快適性、グリップ力、汎用性を提供するものは何か?」という問いへと移行しています。
空力性能についても、近年のワイドリムホイールとの組み合わせにより、28Cタイヤの空気抵抗増加という懸念は大幅に軽減されています。「105%ルール」(タイヤに対してリム幅が105%の時に最も空気抵抗が低い)に基づけば、現代のワイドリムは28C〜30Cタイヤと最適にマッチするよう設計されており、システム全体として高い空力性能を発揮します。
25Cと28Cの乗り心地の違いは?長距離ライドならどっちを選ぶべき?
乗り心地の差は、エアボリュームの違いによって明確に現れます。25Cタイヤはエアボリュームが少ないため、乗り心地が硬く、路面からの衝撃を拾いやすいという特性があります。特に長距離ライドでは、路面からの振動が直接身体に伝わりやすく、手や腕の疲労、さらには痛みにつながる可能性があります。
対照的に、28Cタイヤの最大の優位性は圧倒的な快適性にあります。エアボリュームが増加することで、乗り心地が格段に向上し、段差や荒れた路面からの衝撃吸収性が高まります。これにより、長距離ライドにおける身体への負担を大幅に軽減し、疲労の蓄積を抑制できます。
具体的な運用例として、25Cが5Barの空気圧で運用されるのに対し、28Cは4Barといった低い空気圧で運用可能です。この低空気圧運用が、さらなる乗り心地向上をもたらします。快適性は単なる贅沢ではなく、パフォーマンスを向上させる要素として理解されています。
28Cの優れた快適性は、長距離ライドにおいてサイクリストの疲労を軽減し、終盤まで「フレッシュな状態」を保つことを可能にします。疲労が少ないサイクリストは、より長い時間、より高いパワー出力を維持し、集中力を保つことができます。これは結果として、全体的な走行時間の短縮や、より充実したサイクリング体験につながります。
グリップ力の向上も見逃せません。28Cはタイヤと路面との接地面が増えるため、グリップ力が高まり、特にコーナーでの安定感や安心感が増します。実際のインプレッションでは、「より安心して曲がれた」「安心してバイクを倒せる」という声が多数報告されています。ウェットな路面でもスリップしにくく、安心して走行できるという点も大きなメリットです。
パンク耐性についても、28Cが明らかに優位です。エアボリュームが大きく、衝撃への耐性が向上するため、段差などによる「リム打ちパンク」のリスクが大幅に軽減されます。これは特に、日常使いや荒れた路面での走行において、大きな安心材料となります。
25Cのメリットは、軽量性による漕ぎ出しの軽快感と、サイドウォールが低いことによるシャープなハンドリングです。しかし、28Cが提供するグリップと安定性による「安心感のあるハンドリング」は、結果としてより速いコーナリングと安全な走行を可能にします。
長距離ライドを快適に走りたいサイクリストには、28Cが圧倒的に推奨されます。乗り心地の向上、路面からの衝撃吸収による疲労軽減、グリップ力向上による安心感が、ロングライドのパフォーマンスと楽しさに直結するからです。
自分のロードバイクに28Cタイヤは装着できる?互換性の確認方法
28Cタイヤへの移行を検討する際、最も現実的な障壁となるのが「互換性」の問題です。特に、既存のフレームやブレーキとのクリアランスは、タイヤ選択を左右する重要な要素となります。
ディスクブレーキとリムブレーキの違いが、この互換性に大きく影響します。ディスクブレーキを搭載したロードバイクは、25Cや28Cタイヤの装着がほぼ標準仕様であり、設計上余裕を持って対応できる場合がほとんどです。ディスクブレーキシステムは、リムブレーキのようにタイヤとブレーキキャリパーが干渉する可能性が低いため、より広いタイヤクリアランスを確保しやすいという特性があります。
一方で、リムブレーキ仕様の古いロードバイクでは、28Cタイヤが物理的に収まらない場合があることを理解する必要があります。これは、古いフレームが細いタイヤを前提に設計されているため、タイヤとフレームやブレーキの間に十分な隙間がないためです。
具体的な確認方法として、タイヤとフレーム・ブレーキの間に4mm以上の隙間が確保できるかをチェックしてください。比較的新しい時代のリムブレーキバイクでも、この隙間が確保できれば太いタイヤの装着が可能という目安があります。ただし、これは個々のバイクによって異なるため、購入前に必ず確認が必要です。
確認すべき箇所は以下の通りです:
- フロントフォーク:タイヤ上部とフォーククラウンの隙間
- リアフレーム:シートステーとチェーンステーの隙間
- ブレーキキャリパー:特にリムブレーキでの干渉チェック
- チェーンステー:タイヤとの最小クリアランス
リムとの互換性も重要な要素です。現在、完成車を含め多くのホイールがワイドリムを採用しており、太めのタイヤ(25c〜32c)との相性が良いことが確認されています。しかし、極端に幅の狭いリムに太いタイヤを取り付けると、タイヤの断面形状が最適化されず、性能が最適化されないだけでなく、安全性にも影響を及ぼす可能性があります。
ETRTO規格に基づく推奨組み合わせとして、28Cタイヤには19-23mmのリム内幅が最適とされています。19mm以上のワイドリムは25C以上のタイヤと特に相性が良く、現代の23mmの内幅リムは28mmタイヤに最適で、より低いチューブレスタイヤ圧に適しているという情報もあります。
タイヤの実測幅についても注意が必要です。公称サイズが「28C」と表記されていても、実際の測定幅は異なる場合があります。これは、表記されているサイズが公称値であり、特定のリムに装着された際の実際の幅は、メーカー、モデル、そしてリム内幅によって変動するためです。フレームとのクリアランスがタイトな場合、この実測幅の理解は非常に重要となります。
互換性に問題がある場合、バイク全体のアップグレードを検討する価値があります。現代のエンデュランスロードバイクでは、32Cタイヤを前提にジオメトリ(特にトレール値)が計算されており、太いタイヤのメリットを最大限に引き出すフレーム設計が採用されているからです。
レースやヒルクライムなら25C?用途別の賢いタイヤ選択法
用途別のタイヤ選択では、あなたのライディングスタイルと優先事項を明確にすることが重要です。従来の「レースタイヤ」の定義も大きく進化しており、現在では28Cが「快適なレース用ロードバイクのタイヤ」として認識されています。
レース・ヒルクライム重視のライダーの場合、非常に滑らかな路面でのレースや、絶対的な軽量性を追求するヒルクライムでは、25Cが依然として選択肢になり得ます。例えば、あるメーカーのデータでは25Cタイヤが250gであるのに対し、28Cは280gと1本あたり30g、前後輪で合計60gの差が生じます。この軽量性は、特に勾配が10%を超えるような急な上り坂で、より軽快な感覚をもたらす場合があります。
しかし、現代のレースシーンにおいても28Cの採用が進んでいることを考慮すると、路面状況やコースプロファイルによって最適な選択が異なることを理解することが重要です。多くのプロ選手も28Cを使用している現状は、そのパフォーマンスが競技レベルでも十分に通用することを示しています。
ロングライド・快適性重視のライダーには、28Cが圧倒的に推奨されます。長距離を快適に走りたいサイクリストにとって、28Cの大きなエアボリュームは乗り心地を格段に向上させ、路面からの衝撃吸収による疲労軽減に大きく貢献します。これにより、長距離ライドの終盤まで身体への負担が少なく、フレッシュな状態で走行を続けられるメリットがあります。
通勤・街乗り・汎用性重視のライダーには、28Cが最適な選択肢です。日常的な通勤や街乗り、あるいは多様な路面状況に対応したい場合、パンク耐性の高さ、悪路への強さ、そして空気管理のしやすさといった実用的なメリットが際立ちます。街中の段差や砂利道での安定性は、安全で快適な走行を可能にし、雨の日でも路面との接触面積が大きい太いタイヤは、スリップのリスクを低減します。
体重が重めのライダーの場合、タイヤの耐久性や安定性を求める上で、28C以上の太さがより有益です。太いタイヤは、より大きな荷重を支えつつ、適切な空気圧設定により、パンクリスクを低減し、快適性を維持することができます。
路面状況に応じた選択として、走行する道路が完璧な舗装路に限られる場合は25Cも選択肢ですが、荒れた路面や未舗装路(グラベルなど)を含む場合は、28Cが圧倒的に優位です。28Cは路面の凹凸を吸収し、安定した走行を可能にするため、路面状況が予測できない場面で特にその真価を発揮します。
現代では「速度」の定義が、純粋な転がり抵抗や最小限の重量といったラボの測定値から、実世界の走行条件を考慮したより包括的なものへと再定義されています。快適性や安定性が持続的なパフォーマンスに貢献する文脈で評価されるべきであるという理解が深まっており、多くのサイクリストにとって28Cが総合的に優れた選択肢となっています。
25Cと28Cの適正空気圧は?パフォーマンスを最大化する設定方法
タイヤの性能を最大限に引き出すためには、適切な空気圧設定が不可欠です。空気圧はタイヤの快適性、転がり抵抗、パンク耐性、そしてグリップ力に直接影響するため、最適な設定を見つけることがパフォーマンス向上の鍵となります。
基本的な原則として、空気圧が高すぎると乗り心地が悪くなり、路面からの衝撃を拾いやすくなります。一方で、低すぎるとタイヤが潰れて転がり抵抗が大きくなり、パンクしやすくなるという特性があります。重要なのは、この両極端の間で最適なバランスポイントを見つけることです。
25Cと28Cの空気圧の違いは明確です。一般的な目安として、28Cでは25Cよりも低い空気圧で運用できることが多く、例えば25Cが5Bar(約73psi)で運用されるのに対し、28Cは4Bar(約58psi)で運用可能です。この低空気圧運用が、28Cの優れた快適性と路面追従性をもたらします。
ライダーの体重に応じた調整が極めて重要です。体重が軽いライダーは比較的低い空気圧で最適なパフォーマンスを得られる一方、体重が重いライダーはより高い空気圧が必要となります。これは、タイヤにかかる荷重が異なるためで、適切な支持力を確保するために空気圧を調整する必要があります。
具体的な設定方法として、まずメーカーが推奨する空気圧範囲を確認し、その範囲内で調整することが基本です。初期設定として中間値から始め、以下の要素を考慮して微調整を行います:
- 体重:重いほど高圧、軽いほど低圧
- 路面状況:滑らかな路面では高圧、荒れた路面では低圧
- 天候:ドライコンディションでは高圧、ウェットでは低圧
- 走行距離:短距離では高圧、長距離では快適性重視で低圧
実測データに基づく推奨値として、Continental Grand Prix 5000 All Season TR 25Cは100psi(6.9 bar)で最適な転がり抵抗を示す一方、Schwalbe Pro One Aero TLE 28Cは90psi(6.2 bar)で優れた性能を発揮します。ただし、これらは実験室環境での数値であり、実走では路面状況と快適性を考慮してより低い空気圧が推奨される場合があります。
空気圧調整の実践的アプローチとして、推奨範囲内で少しずつ試していく安全な方法が推奨されます。空気圧を下げすぎるとタイヤがしなやかになりすぎて走行安定性が損なわれる可能性があるため、段階的な調整が重要です。
チューブレスタイヤの場合、より低い空気圧での運用が可能になり、パンク耐性と快適性がさらに向上します。現代の23mm内幅リムは28mmタイヤに最適で、より低いチューブレスタイヤ圧に適しているという特性があります。
季節や用途に応じた調整も効果的です。夏場の長距離ライドでは快適性重視で低めに、冬場のトレーニングでは効率重視で高めに設定するなど、状況に応じた柔軟な調整がパフォーマンス向上につながります。
最終的に、最適な空気圧は個人の感覚と走行データの両方を考慮して決定すべきです。定期的な空気圧チェックと微調整を行うことで、タイヤの性能を常に最良の状態で引き出すことができます。
コメント