ロードバイクに乗り始めて間もない方や、さらなるパフォーマンス向上を目指している方にとって、ケイデンスの管理と向上は避けて通れない重要なテーマです。特にケイデンス100rpmという高回転域を安定して維持できるようになることは、効率的なライディングスキルを身につけたことの証明となり、長時間走行における疲労軽減や関節への負担軽減に直結します。しかし、初心者がいきなり100rpmという高回転を目指すのは現実的ではなく、段階的なアプローチが必要不可欠です。適切なトレーニング方法を理解し、自分の現在のレベルに合った練習を継続することで、約1年程度で100rpm到達という目標を実現することが可能になります。本記事では、初心者から中級者、そして上級者へとステップアップするための具体的な練習方法、必要な機材、トレーニング管理の方法について詳しく解説していきます。

- ケイデンスの基礎知識と重要性
- 初心者が目指すべきケイデンスの段階的目標
- 第1段階:70〜80rpmでの基礎構築期
- 第2段階:80〜90rpmへの移行期
- 第3段階:90〜100rpmへの挑戦期
- ペダリング技術の向上とビンディングペダルの効果
- サイクルコンピューターによる正確なケイデンス測定
- ケイデンストレーニングの生理学的効果
- 個人に最適なケイデンスの見つけ方
- トレーニング時の注意点と避けるべき間違い
- 継続的な練習計画と記録管理
- 体幹トレーニングと補強運動の必要性
- 柔軟性向上とストレッチの重要性
- 高ケイデンス走法と高トルク走法の使い分け
- トレーニング効果を高める栄養戦略
- 実践的な12週間トレーニングプラン
- よくある質問への回答
- 安全にトレーニングを行うための注意事項
ケイデンスの基礎知識と重要性
ケイデンスとは、自転車のペダルが1分間に回転する回数を示す指標であり、単位はrpm(Revolutions Per Minute)で表されます。この数値は、ロードバイクにおいてパワーや心拍数とならんで極めて重要なトレーニング指標として位置づけられています。
一定のリズムでペダルを回転させることにより、筋肉への負荷を複数の筋繊維に分散させることができ、特定の筋肉だけに疲労が集中することを防ぐことができます。また、膝関節や股関節への負担を軽減する効果も確認されており、怪我の予防という観点からも適切なケイデンスの維持は重要です。
ロードバイクにおける一般的なケイデンスの目安は、平地での巡航時で90〜100rpm、登坂時で70〜90rpm程度とされています。一方、クロスバイクでは60〜80rpmが標準的な範囲とされており、車種によっても最適なケイデンスは異なります。
ケイデンスが低すぎる場合、重いギアを踏み込むことになるため筋肉への負担が大きくなり、乳酸の蓄積が早まります。逆にケイデンスが高すぎる場合は、心拍数が上昇しやすく心肺機能への負荷が増大します。このバランスを理解し、状況に応じて適切なケイデンスを選択できるようになることが、効率的なライディングの第一歩となります。
初心者が目指すべきケイデンスの段階的目標
ロードバイクを始めたばかりの初心者が、いきなり100rpmを目指すことは推奨されません。筋力、心肺機能、ペダリングスキルのいずれも十分に発達していない状態で高ケイデンスに挑戦すると、フォームが崩れたり怪我のリスクが高まったりする可能性があります。
初級者レベル(0〜6ヶ月)では、まず70〜80rpmを安定して維持できることを目標とします。この段階では、正しいペダリングフォームの習得と、一定のリズムでペダルを回し続ける基礎的な能力の構築に集中します。
中級者レベル(6ヶ月〜1年)に移行したら、80〜90rpmを目標とします。この段階では、インターバルトレーニングを導入し、高ケイデンスと低ケイデンスを意図的に切り替える能力を養います。また、ビンディングペダルの導入もこの時期に検討すると効果的です。
上級者レベル(1年以上)では、90〜100rpmを安定して維持することを目指します。長時間のライドでも高ケイデンスを保てるようになり、地形や風向きなどの状況に応じて最適なケイデンスを自在に選択できるスキルを磨きます。
競技レベルのライダーであっても、平均的なケイデンスは90rpm前後とされています。100rpmは決して全てのライダーにとっての絶対的な目標ではなく、あくまで自分の体格や筋力特性、心肺機能に合ったケイデンスを見つけることが最も重要です。
第1段階:70〜80rpmでの基礎構築期
初心者にとって最も重要なのは、正しいペダリングフォームの習得と、一定のリズムでペダルを回し続ける基礎能力の構築です。この段階では、スピードや距離よりも、フォームとリズムの安定性を最優先します。
まず軽めのギアを選択し、筋肉への負荷を抑えた状態でペダリングを行います。重いギアで無理に踏み込むのではなく、軽いギアで「回す」感覚を身につけることが重要です。この時、ペダルを踏み込む動作だけでなく、引き上げる動作も意識することで、より円滑なペダリングが実現できます。
多くの初心者は、引き足のテクニックが不足しています。ペダルを下に踏み込むことばかりに意識が向きがちですが、下死点から上死点にかけてペダルを引き上げる動作も推進力に貢献します。この引き足の技術は、ケイデンスが上がるほど重要性が増します。
練習方法としては、平坦な道で30分程度、70〜80rpmを維持しながら走行することから始めます。週に2〜3回、この練習を繰り返すことで、徐々に安定したペダリングが身についていきます。この時期は、サイクルコンピューターでケイデンスを確認しながら走ることで、自分の感覚と実際の数値のギャップを理解することができます。
また、上半身の無駄な動きを抑えることも重要なポイントです。高ケイデンスになるほど、上半身が左右に揺れたり、サドルの上で跳ねたりしやすくなります。体幹の安定性を保ちながらペダリングできるよう、自宅での体幹トレーニングも並行して行うことをおすすめします。
第2段階:80〜90rpmへの移行期
70〜80rpmで安定して走行できるようになったら、次の段階として80〜90rpmへとケイデンスを引き上げていきます。この段階では、ウォーミングアップの時間を有効活用することが効果的な練習方法となります。
ロードバイクで走り出す際の最初の10〜15分間は、体がまだ十分に温まっていない状態です。この時間帯は高負荷のトレーニングには適していませんが、軽いギアで高回転の練習をするには絶好のタイミングです。目標とする80〜90rpmでペダルを回しながら、徐々に体を温めていくことで、無理なく高ケイデンスに慣れることができます。
この段階では、インターバルトレーニングの導入も検討します。例えば、5分間90rpmで走行した後、3分間70rpmでリカバリーするというサイクルを4〜6セット繰り返す方法があります。高ケイデンスと低ケイデンスを交互に繰り返すことで、心肺機能と筋持久力の両方を効率的に鍛えることができます。
また、この時期になると、フラットペダルの限界を感じ始める方も多いでしょう。80rpm以上の高ケイデンスを常に維持するためには、ビンディングペダルの導入が強く推奨されます。ビンディングペダルを使用することで、踏み込む力だけでなく引き上げる力も推進力として活用でき、足のばたつきを抑えることができます。
ビンディングペダルへの移行には慣れが必要ですが、固定式のローラー台を使用すれば安全に練習することができます。着脱の感覚を身につけるまでは、停止する際に事前に片足を外しておくなどの対策を取ることで、転倒のリスクを軽減できます。
第3段階:90〜100rpmへの挑戦期
90rpmで安定して走行できるようになったら、いよいよ100rpm到達への最終段階です。この段階では、より高強度のインターバルトレーニングが中心となります。
具体的な練習方法としては、3分間100rpmで走行し、2分間80rpmでリカバリーするというセットを6〜8回繰り返します。この時、心拍数は最大心拍数の75〜80%程度を目安とし、心肺機能への適度な負荷を確保します。筋持久力を高めたい場合は、心拍可動域の75〜80%値で1時間以上を目標に、ケイデンス100回転前後で走行することが効果的です。
100rpmという高回転域では、ペダリングの技術的な側面がより重要になります。プロサイクリストが実践する「スプレス(souplesse)」と呼ばれるテクニックは、美しくスムーズで、なおかつ高速なペダリングを楽に実現する技術です。このテクニックを習得するためには、ローラー台での練習が非常に効果的です。
室内のローラー台練習では、鏡を使って自分のフォームをチェックしたり、動画を撮影して後から分析したりすることができます。上半身の揺れ、サドル上での跳ね、ペダルストロークの円滑さなど、細かな点を確認しながら修正していくことで、効率的なペダリングが身につきます。
また、SFR(Slow Frequency Repetitions)トレーニングも並行して行うと効果的です。これは低ケイデンスでの筋力強化トレーニングで、斜度10%程度の登り坂でケイデンス40〜45rpmを目安に2分間登坂し、2分間のインターバルを挟んで6セット行います。低ケイデンスでの筋力が強化されることで、高ケイデンス時にもより大きなパワーを発揮できるようになります。
ペダリング技術の向上とビンディングペダルの効果
ケイデンス向上のためには、単に回転数を上げるだけでなく、ペダリング技術そのものを向上させることが不可欠です。効率的なペダリングとは、360度の円運動全体で推進力を生み出す技術であり、習得には時間と意識的な練習が必要です。
ビンディングペダルは、フラットペダルと比較して高ケイデンス維持において圧倒的に有利です。ビンディングペダルを使用することで、踏み込んだ際に足がズレることがなく、パワーをロスなく伝達できます。また、ペダルとシューズが固定されているため、常に同じ位置が保たれ、高い出力を安定して発揮することが可能です。
「踏む力」に加えて「引き上げる力」も推進力として活用できる点が、ビンディングペダル最大のメリットです。特に高ケイデンス域では、引き足の貢献度が大きくなります。90rpmでの練習を通じて、自然と引き足を使う能力が身につき、ペダリング効率が向上していきます。
ビンディングペダルの脱着には慣れが必要ですが、基本的な動作は単純です。クリートの先端でペダルを引っかけて足を踏み下ろすと固定が完了し、解除するには足を外側にひねるような動作をするだけです。ヒールを外側に倒すような動きを意識すると、スムーズに脱着できます。
適切なポジション設定も重要な要素です。サドルの高さ、前後位置、クリートの取り付け位置などが適切でないと、どれだけ練習しても効率的なペダリングは実現できません。専門店でのフィッティングサービスを利用することで、自分に最適なポジションを見つけることができます。
サイクルコンピューターによる正確なケイデンス測定
ケイデンストレーニングを効果的に行うためには、正確なケイデンス測定が不可欠です。感覚だけに頼った練習では、実際のケイデンスと自分の感覚にズレが生じやすく、効率的なトレーニングができません。
ケイデンスの測定には、車体に取り付けるセンサーと、センサーからの情報を表示するサイクルコンピューターが必要です。従来は磁石を使ったセンサーが主流でしたが、最近では地磁気センサーを使った製品も登場しており、磁石を必要とせずよりシンプルな取り付けが可能になっています。
サイクルコンピューターには様々なモデルがあり、予算や必要な機能に応じて選択できます。キャットアイのCC-PA400Bはケイデンス測定に加えて心拍数測定も可能なモデルとして人気があります。より高機能なモデルを求める場合は、GARMIN Edge 130 PlusやBontrager RIDEtime Elite Cycling Computerなど、GPS機能やトレーニング分析機能を搭載したモデルも選択肢となります。
ケイデンスだけでなく、心拍数やパワーなどの指標を同時に記録することで、より詳細なトレーニング分析が可能になります。トレーニング管理において重要な指標の優先順位は、1位がパワー、2位が心拍数、3位がケイデンスとされています。
パワーメーターは高価ですが、心拍計は比較的手頃な価格で入手できます。パワーメーターがない場合でも、心拍計を用意することで、現在の運動強度にどれくらい余裕があるか(ないか)を把握でき、効果的なトレーニングが可能です。
ケイデンストレーニングの生理学的効果
ケイデンストレーニングには、様々な生理学的効果とメリットがあります。これらの効果を理解することで、モチベーションを維持しながらトレーニングを継続できます。
心肺機能の強化は、高ケイデンストレーニングの最も顕著な効果の一つです。高いケイデンスでのトレーニングは心拍数を上昇させ、心臓のポンプ機能を向上させます。運動中に活用される赤血球中のヘモグロビンに含まれる酸素の運搬能力が高まり、結果として持久力が向上します。
筋持久力の向上も重要な効果です。一定の時間、高いケイデンスでペダルを回す練習を行うと、筋力や筋持久力が向上します。特に持久筋(タイプ1筋繊維)の割合が増え、サテライト筋細胞を遅筋に増殖させる効果や、余分な速筋を遅筋的な性質に変える効果が確認されています。
高ケイデンストレーニングのもう一つの重要なメリットは、疲労の分散です。一定のリズムでペダルを回すことで、特定の筋肉だけに負荷が集中することを避け、長時間のライドでも疲労を軽減できます。特に膝関節においては、適切なケイデンスを保つことで怪我のリスクを大幅に低減することができます。
また、坂道トレーニングと組み合わせることで、平坦な道を走るよりも体に負荷がかかり、心肺機能の強化につながります。登坂時の適切なケイデンス(70〜90rpm)を維持する練習を重ねることで、持久力をさらに鍛えることができます。
個人に最適なケイデンスの見つけ方
「90rpmが理想的なケイデンス」とよく言われますが、実際には体格、筋力、心肺機能などの個人差により、最適なケイデンスは人それぞれ異なります。各速度帯で自分がいちばん長く大きな力を出せるケイデンスを少しずつ見つけていくことが現実的なアプローチです。
最適なケイデンスを見つけるためには、様々なケイデンスでの走行テストが有効です。同じコースを異なるケイデンス(例:70rpm、80rpm、90rpm、100rpm)で走行し、それぞれの感覚や疲労度を記録します。心拍数、平均速度、主観的な疲労度などを比較することで、自分に最適なケイデンスが見えてきます。
短時間では快適に感じるケイデンスでも、長時間走行すると疲労が蓄積する場合があります。2時間以上のライドで、どのケイデンスが最も持続可能かを確認することが重要です。実際のロングライドでは、様々な要因が絡み合うため、短時間のテストだけでは把握できない情報が得られます。
また、平地、登り坂、下り坂など、地形に応じて最適なケイデンスは変化します。平地では90〜100rpm、登坂では70〜90rpm、下り坂ではケイデンスを下げてパワーを温存するなど、状況に応じた使い分けができるようになることが、真の意味でケイデンスをマスターしたことになります。
風向きや路面状況、疲労度などによっても最適なケイデンスは変わります。様々な条件下で自分の体の反応を観察し、データを蓄積していくことで、経験則に基づいた的確なケイデンス選択ができるようになります。
トレーニング時の注意点と避けるべき間違い
ケイデンストレーニングを効果的かつ安全に行うためには、いくつかの重要な注意点があります。これらを理解し、適切に対処することで、怪我のリスクを最小限に抑えながら着実に上達できます。
急激なケイデンス向上は絶対に避けるべきです。いきなり100rpmでの走行を試みると、筋肉や関節に過度な負担がかかり、怪我のリスクが大幅に高まります。段階的に、時間をかけてケイデンスを上げていくことが、遠回りに見えて実は最も確実な方法です。
ギア選択の重要性も見過ごせません。高いケイデンスを維持するためには、適切なギア選択が不可欠です。重すぎるギアでは高回転を維持できず筋肉に過度な負担がかかり、軽すぎるギアでは推進力が得られません。状況に応じて、こまめにギアを調整する習慣を身につけましょう。
高いケイデンスを維持しようとするあまり、フォームが崩れるのは本末転倒です。上半身が揺れたり、サドルの上で跳ねたりするのは、ペダリング効率が悪化している証拠です。スムーズで安定したフォームを保つことを最優先にし、フォームが崩れない範囲でケイデンスを上げることを心がけましょう。
また、高いケイデンスで走行すると必ずしも速度が上がるわけではないことを理解しておく必要があります。状況によっては、やや低めのケイデンスで大きなパワーを出した方が、速く走れる場合もあります。ケイデンスは手段であり目的ではないことを常に意識し、最終的な目標である効率的な走行を見失わないようにしましょう。
継続的な練習計画と記録管理
ケイデンス100rpmを維持できるようになるには、継続的な練習が絶対不可欠です。一般的には、1年程度の継続的なトレーニングを経て、100rpmが維持できるようになるといわれています。
理想的な練習頻度は、週に2〜3回、ケイデンスを意識したトレーニングを行うことです。毎日高強度のトレーニングを行うのは逆効果で、筋肉の回復が追いつかず、オーバートレーニング症候群に陥る可能性があります。適度な休息を挟みながら、継続的に練習を重ねることで、着実に能力が向上していきます。
トレーニング記録をつけることは、進歩を可視化し、モチベーションを維持する上で非常に有効です。ケイデンス、心拍数、走行距離、平均速度、主観的な疲労度などを記録することで、自分の進歩を客観的に把握できます。サイクルコンピューターのデータをスマートフォンアプリと同期させることで、簡単にデータを蓄積できます。
記録を定期的に見返すことで、どのような練習が効果的だったか、どのような条件で調子が良いかなど、貴重な知見が得られます。また、停滞期を迎えた際にも、過去のデータを分析することで打開策が見つかることがあります。
しかし、トレーニングに没頭するあまり、ロードバイクの楽しさを忘れてしまっては本末転倒です。時には目標を忘れて、景色を楽しみながら走ることも大切です。楽しみながら継続することで、自然と技術も向上していきます。ストイックなトレーニングと楽しいサイクリングのバランスを取ることが、長期的な上達の鍵となります。
体幹トレーニングと補強運動の必要性
高ケイデンスを安定して維持するためには、ロードバイクに乗るだけでなく、自宅での体幹トレーニングが非常に重要です。ケイデンスを上げる際に腰が跳ねたり体が上下に飛び跳ねたりする現象は、主に体幹の筋力不足によって下半身を支えきれていないことが原因です。
ロードバイクの乗車姿勢は前傾姿勢であり、腰や背骨に負担がかかります。強い体幹がなければ、この姿勢を長時間維持することができず、ペダリング効率も低下します。体幹トレーニングを行うことで、怪我のリスクを減らし、疲れにくく長時間のライドが可能になります。
効果的な体幹トレーニングメニューとしては、まずプランクがあります。30秒から1分間を3セット行うことで、体幹全体を強化し、ペダリング時の上半身の安定性を高めます。初心者は膝をついた状態から始め、徐々に時間を延ばしていきましょう。
サイドプランクは、左右各30秒から1分間を2セット行います。横方向の安定性を向上させ、高ケイデンス時の体の揺れを抑える効果があります。左右のバランスを均等に鍛えることで、ペダリングの左右差も改善されます。
バードドッグは、左右各10回×3セット行うバランス系のトレーニングです。四つん這いの姿勢から対角の手足を同時に伸ばす動作を繰り返すことで、バランス感覚と体幹の連動性を養います。ペダリング中の微妙なバランス調整能力が向上します。
下半身の補強トレーニングも重要です。スクワットは自重で15〜20回×3セット行い、大腿四頭筋やハムストリングスを強化します。ペダリングパワーの源となる筋肉を直接鍛えることができます。
ランジは左右各10回×3セット行うことで、片足ずつの筋力バランスを整え、均等なペダリングを実現します。ロードバイクのペダリングは基本的に片足ずつ交互に力を発揮する動作なので、ランジは非常に効果的なトレーニングです。
これらの体幹トレーニングと補強運動は、週3〜4回、各20〜30分程度行うことが理想的です。ロードバイクのトレーニングと別日に行うか、ライド後のクールダウンの一環として取り入れることで、総合的なパフォーマンス向上につながります。
柔軟性向上とストレッチの重要性
高ケイデンスを維持するためには、筋力だけでなく筋肉の柔軟性も極めて重要です。特に股関節周りの柔軟性が不足していると、ペダリングの可動域が制限され、スムーズな円運動ができなくなります。
股関節ストレッチは、開脚や前屈など、股関節の可動域を広げるストレッチを毎日行います。股関節が硬いと、ペダルの上死点から下死点までのストロークで力が抜けてしまい、効率的なペダリングができません。柔軟性を高めることで、360度全体で推進力を生み出せるようになります。
ハムストリングスストレッチは、座位での前屈や仰向けでの足上げストレッチが効果的です。ハムストリングスが硬いと、ペダルの引き上げ動作が制限され、大腿四頭筋だけに頼ったペダリングになってしまいます。
大腿四頭筋ストレッチは、立位で片足を後ろに引き、太もも前面を伸ばします。大腿四頭筋の柔軟性は、膝の故障予防にも直結する重要な要素です。
ストレッチは、筋肉が温まった状態で行うとより効果的です。ライド後やお風呂上がりなど、体が温まっているタイミングで10〜15分程度のストレッチを習慣化しましょう。無理に伸ばすのではなく、気持ち良いと感じる範囲で、深呼吸をしながらゆっくりと伸ばすことがポイントです。
高ケイデンス走法と高トルク走法の使い分け
ケイデンストレーニングを深く理解するためには、高ケイデンス走法と高トルク走法の違いを知り、状況に応じて使い分けられるようになることが重要です。
高ケイデンス走法は、軽いギアで高回転(90〜100rpm以上)を維持する走法です。心肺機能への負荷が高く、筋肉への負担は比較的軽いという特徴があります。長時間のライドや平地での巡航に適しており、筋肉疲労が少なく関節への負担も軽減されます。持久力が向上し、長距離を快適に走ることができます。
一方、デメリットとしては心拍数が上がりやすく心肺への負担が大きいこと、急な加速やパワーが必要な場面では不利であることが挙げられます。心肺機能が未発達な初心者には、長時間の高ケイデンス維持は困難です。
高トルク走法は、重いギアで低回転(60〜80rpm程度)を維持する走法です。筋肉への負荷が高く、心肺機能への負担は比較的軽いという、高ケイデンス走法とは逆の特性を持ちます。登坂や短時間の高出力が必要な場面に適しており、大きなパワーを出せます。
しかし、デメリットとして筋肉疲労が蓄積しやすく、膝などの関節に負担がかかりやすい点があります。長時間の維持は困難で、疲労の回復にも時間がかかります。
最も効率的なのは、状況に応じて両方の走法を使い分けることです。平地での巡航では高ケイデンス走法、登坂では中程度のケイデンス、スプリントなどの短時間高出力では高トルク走法を使います。風向きや疲労度、残り距離なども考慮して、最適な走法を選択する判断力を養いましょう。
トレーニング効果を高める栄養戦略
高ケイデンストレーニングを効果的に行い、最大限の効果を引き出すためには、適切な栄養摂取が不可欠です。どれだけ質の高いトレーニングを行っても、栄養が不足していては体は適応できず、パフォーマンス向上は望めません。
トレーニング前の栄養補給では、トレーニングの2〜3時間前に炭水化物を中心とした食事を摂ります。バナナやおにぎり、パスタなど、消化の良い炭水化物がおすすめです。胃に負担をかけない量と内容を心がけ、トレーニング開始時にエネルギーが満ちている状態を作ります。
トレーニング開始30分前には、エネルギーゲルやスポーツドリンクで追加のエネルギーを補給することで、トレーニング開始直後からパフォーマンスを発揮できます。
トレーニング中の補給は、1時間以上のトレーニングでは特に重要です。30分ごとに20〜30gの炭水化物を補給することで、血糖値を安定させ、パフォーマンスの低下を防ぎます。スポーツドリンク、エネルギージェル、バナナなどを活用しましょう。
水分補給は15〜20分ごとに、一口ずつこまめに行います。のどの渇きを感じる前に補給することが重要で、渇きを感じた時点ですでに脱水が始まっています。
トレーニング後の回復栄養は、筋肉の修復と成長に直結します。トレーニング終了後30分以内に、炭水化物とタンパク質を3対1の割合で摂取することで、効率的に回復できます。プロテインシェイク、チョコレートミルク、おにぎりと鶏肉など、すぐに摂取できるものを用意しておきましょう。
日常的な栄養バランスでは、炭水化物を全体のエネルギー摂取量の50〜60%、タンパク質を体重1kgあたり1.2〜1.6g、脂質を全体のエネルギー摂取量の20〜30%を目安とします。ビタミンやミネラルも、緑黄色野菜や果物をバランスよく摂取することで補います。
実践的な12週間トレーニングプラン
ケイデンス100rpm到達を目指す具体的な12週間のトレーニングプランを紹介します。このプランは、現在70〜80rpmで走行している中級者を想定していますが、自分のレベルに合わせて調整可能です。
第1週〜第4週:基礎固め期(70〜80rpm)では、週3回、各30分のトレーニングを行います。軽いギアを選び、70〜80rpmを安定して維持することに集中します。心拍数は最大心拍数の60〜70%程度を目安にし、無理のない強度で基礎を固めます。
この時期は、フォームが崩れないよう鏡やローラー台で確認しながら練習し、正しいペダリング動作を体に覚え込ませます。週1回は1時間程度のロングライドを入れ、実走での感覚も養います。
第5週〜第8週:発展期(80〜90rpm)では、週3回、各40分のトレーニングに延長します。80〜90rpmを目標とし、インターバルトレーニングを導入します。5分間90rpmで走り、3分間70rpmで回復を繰り返すことで、心肺機能と筋持久力を同時に鍛えます。
心拍数は最大心拍数の70〜75%程度を目安にし、徐々に負荷を高めていきます。この時期にビンディングペダルを導入すると、次の段階への移行がスムーズになります。
第9週〜第12週:完成期(90〜100rpm)では、週3〜4回、各45〜60分のトレーニングを行います。90〜100rpmを目標とし、より高強度のインターバルトレーニングを実施します。3分間100rpmで走り、2分間80rpmで回復を繰り返すことで、目標ケイデンスでの持久力を養います。
心拍数は最大心拍数の75〜80%程度を目安にし、質の高い負荷をかけます。週1回は2時間以上の長時間ライドを取り入れ、85〜90rpmを維持する持久力を養います。この時期には、実際のライドで様々な地形を経験し、状況に応じたケイデンス調整の技術も磨きます。
よくある質問への回答
Q1. ケイデンス100rpmは本当に必要ですか?
必ずしも全ての人に100rpmが最適というわけではありません。90rpmが一番エネルギー効率がいい値だと言われており、個人の体格や筋力、心肺機能によって最適なケイデンスは異なります。100rpmはあくまで目標の一つであり、自分に合ったケイデンスを見つけることが重要です。
Q2. ビンディングペダルは必須ですか?
80rpm以上の高ケイデンスを常に維持するためには、ビンディングペダルが強く推奨されます。フラットペダルでも練習は可能ですが、高ケイデンスでの足のばたつきを抑え、引き足を効果的に使うためには、ビンディングペダルの導入が効果的です。
Q3. 毎日トレーニングした方がいいですか?
毎日高強度のトレーニングを行うのは逆効果です。週に2〜3回、ケイデンスを意識したトレーニングを行い、適度な休息を挟むことが理想的です。休息日には軽いサイクリングやストレッチなど、積極的な回復活動を取り入れましょう。
Q4. 高ケイデンスで走ると速度が遅くなるのはなぜ?
高いケイデンスで走行すると、必ずしも速度が上がるわけではありません。ギアが軽すぎると、いくら回転数を上げても推進力が不足します。適切なギア選択と組み合わせることで、高ケイデンスと高速度の両立が可能になります。
Q5. ヒルクライムでも100rpmを維持すべきですか?
登り坂では、一般的に70〜90rpmが適切とされています。斜度が急になるほど、ケイデンスは自然と低くなります。無理に高いケイデンスを維持しようとすると、パワー不足で失速する可能性があります。地形に応じてケイデンスを調整することが重要です。
安全にトレーニングを行うための注意事項
ケイデンストレーニングを安全に行うために、いくつかの重要な注意事項があります。
ウォーミングアップとクールダウンは必ず実施しましょう。トレーニング前には10〜15分のウォーミングアップを行い、心拍数を徐々に上げていきます。トレーニング後も10分程度のクールダウンを行い、急激な運動終了を避けます。
水分補給と栄養補給をこまめに行います。高ケイデンストレーニングは心拍数が上がりやすく、発汗量も多くなります。脱水症状を防ぐため、こまめな水分補給を心がけ、1時間以上のトレーニングでは糖質補給も行いましょう。
身体の声を聞くことが何より重要です。膝や腰に痛みを感じたら、すぐにトレーニングを中止してください。無理な高ケイデンスは関節に負担をかけます。痛みが続く場合は、医療機関を受診しましょう。
公道でのトレーニングでは交通安全を最優先にします。高ケイデンストレーニング中は、ケイデンスの維持に意識が集中し、周囲への注意が散漫になりがちです。交通ルールを遵守し、安全を確保しましょう。ローラー台での室内トレーニングなら、より安全に集中してトレーニングできます。
適切な機材のメンテナンスも忘れてはいけません。高回転でのペダリングは、チェーンやスプロケット、ペダルなどの駆動系に負担をかけます。定期的なメンテナンスを行い、異音や違和感があればすぐに点検しましょう。
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