ロードバイクで高速走行を実現するためには、機材の性能向上だけでなく、空気抵抗の削減が極めて重要な要素となります。特に時速30kmを超える速度域では、ライダーが感じる抵抗の約80%が空気抵抗によるものであり、時速40kmに達すると実に90%もの抵抗が空気によって生み出されています。この数値が示すように、速度が上がれば上がるほど、空気抵抗はペダリングの重さに直結し、パフォーマンスを大きく左右する要因となるのです。興味深いことに、高価なエアロフレームやホイールに数十万円を投資するよりも、2〜3万円程度のエアロウェアを選ぶことで、同等かそれ以上の空気抵抗削減効果が得られるというデータが存在します。つまり、ウェア選びは最も費用対効果の高い速度向上策の一つであり、初心者から上級者まで、すべてのロードバイク愛用者が注目すべきポイントなのです。本記事では、空気抵抗を効果的に削減するウェアの選び方から、その効果、さらには最新のエアロ技術まで、包括的に解説していきます。

空気抵抗がロードバイクに与える決定的な影響
ロードバイクにおける空気抵抗は、単なる物理現象にとどまらず、ライダーのパフォーマンスを根本から左右する要因です。走行速度が上昇するにつれて、空気抵抗は指数関数的に増加していきます。この現象は、速度が2倍になると空気抵抗は約4倍になるという物理法則に基づいています。
時速30kmで走行する場合、ライダーが対峙する抵抗のうち約80%が空気抵抗であり、残りの20%がタイヤの転がり抵抗やチェーンの摩擦などの機械的抵抗となります。さらに時速40kmに達すると、空気抵抗の割合は約90%にまで上昇し、ほぼすべての抵抗が空気によるものとなるのです。
この空気抵抗は、ライダーが感じるペダルの重さとして直接的に現れます。同じパワーでペダリングを続けても、空気抵抗が大きければ速度は上がらず、逆に空気抵抗を削減できれば、同じ労力でより速く走行することが可能になります。実際の風洞実験データによれば、適切なエアロ装備を整えることで、時速30kmの走行時に2〜3km/hの速度向上が実現できることが確認されています。
40kmのライドを想定した場合、この2〜3km/hの速度差は約6〜8分の時間短縮につながります。レースやイベントにおいては、この数分の差が順位を大きく左右することも少なくありません。また、長距離ライドにおいては、空気抵抗の削減により体力の消耗を抑えられるため、より快適に目的地まで到達できるという利点もあります。
ウェア選びで押さえるべき根本原則
ロードバイク用のウェアを選ぶ際、空気抵抗削減の観点から最も重要なポイントは、身体へのフィット感と生地の特性です。これらの要素を理解し、適切に選択することで、大幅な空気抵抗削減が実現できます。
タイトフィットが生み出す空力効果は、エアロウェアの基本中の基本です。ゆったりとした服装で走行すると、生地が風になびいてバタつき、これが非常に大きな空気抵抗を生み出します。風洞実験では、ゆったりしたTシャツとハーフパンツで走行した場合と、身体に密着したサイクルジャージで走行した場合では、約15〜20%もの空気抵抗の差が生じることが確認されています。
身体に密着したウェアは、空気の流れを滑らかにし、乱流の発生を最小限に抑えます。特に肩から背中、腰にかけてのラインは空気の流れに大きな影響を与えるため、この部分のフィット感が極めて重要です。ただし、締め付けすぎると血行を妨げたり、動きにくくなったりするため、適度な圧迫感がありながらも快適に動ける範囲でのフィット感を選ぶことが大切です。
生地表面の平滑度も、空気抵抗に直接影響する要素です。完全に平滑な表面は、空気の流れを妨げず、抵抗を減少させます。最新のサイクルウェアは、風洞実験とCFD解析(数値流体力学解析)を経て開発されており、生地の質感、織り方、さらには縫い目の位置に至るまで、すべてが空気抵抗削減のために最適化されています。
2025年の最新技術では、ディンプル加工やリブレット構造といった特殊な表面処理が施されたウェアも登場しています。これらは、ゴルフボールの表面と同様の原理で、あえて微細な凹凸を設けることで境界層の剥離を遅らせ、結果として空気抵抗を削減するという、一見矛盾した技術です。
カジュアルな服装でサイクリングを楽しむ場合でも、工夫次第で空気抵抗を削減できます。スキニーパンツやテーパードタイプのジョガーパンツなど、身体にフィットし平滑な生地のものを選ぶことで、完全な専用ウェアには及ばないものの、ある程度の空気抵抗削減効果が期待できます。
専用ウェアがもたらす圧倒的な性能差
サイクル専用ウェアは、一般的なスポーツウェアとは根本的に設計思想が異なります。ロードバイクの走行姿勢と空気力学を徹底的に考慮して作られており、その性能差は数値として明確に現れます。
サイクルジャージの特殊設計は、単なるフィット感にとどまりません。ロードバイクの前傾姿勢を取った状態で、生地にシワが寄らないよう立体裁断が施されています。背中側の着丈は長めに、前面は短めに設計されており、前傾姿勢時に背中が露出せず、かつ前面が余らないようになっています。
縫い目の配置も綿密に計算されています。空気の流れを乱さない位置に縫い目を配置し、さらにフラットシーム技術により縫い目の段差を最小限に抑えています。また、背面ポケットは小物を収納しながらも空気抵抗を増やさないよう、適切な位置とサイズで設計されています。
一般的なスポーツウェアと比較すると、サイクルジャージは約10〜15%の空気抵抗削減効果があります。これは200Wのパワーで走行した場合、約1〜1.5km/hの速度向上に相当します。
エアロワンピース(スキンスーツ)の究極性能は、さらに際立っています。上下が一体化したデザインにより、ウェスト部分のバタつきを完全に排除し、究極の空気抵抗削減を実現します。風洞実験データによれば、エアロワンピースは通常のサイクルジャージと比較して、さらに5〜10%の空気抵抗削減が可能です。
興味深いのは、エアロワンピースの投資額が2〜3万円程度であるにもかかわらず、その効果が数十万円するエアロフレームに匹敵、あるいは上回ることです。ある風洞試験では、エアロワンピースの採用により15Wのパワーセーブ効果が確認されました。これは高価なエアロホイールセットに匹敵する数値です。
競技志向のサイクリストにとって、エアロワンピースはタイムを縮めるための最も効率的な投資の一つといえます。タイムトライアルやトライアスロンでは、エアロワンピースが標準装備となっており、トップ選手の多くが風洞試験でカスタマイズされた専用ウェアを使用しています。
ビブショーツの機能性も見逃せません。ウエストにゴムがなく、肩紐で支える構造のビブショーツは、腹部への圧迫を軽減し、呼吸を妨げません。さらに、背中部分のメッシュ素材が通気性を確保し、長時間のライドでも快適性を維持します。パッド(シャモア)は座骨の位置や体重のかかり方を考慮して設計されており、サドルとの摩擦を減らし、快適なペダリングをサポートします。
ライディングポジションとウェアの相乗効果
どんなに優れたエアロウェアを着用していても、ライディングポジションが適切でなければ、その効果は半減してしまいます。ウェアとポジションは車の両輪のような関係にあり、両方を最適化することで初めて最大の効果が得られます。
上体の前傾姿勢は、空気抵抗削減の基本です。上体をできるだけ低く保つことで、正面から受ける空気の面積を減らすことができます。ただし、背中を過度に丸めると逆に空気抵抗が増加するため、背中はフラットに保ちながら前傾することが重要です。理想的なエアロポジションでは、背中が地面とほぼ平行になります。
風洞実験では、アップライトな姿勢と深い前傾姿勢では、約30〜40%もの空気抵抗の差が生じることが確認されています。つまり、同じウェアを着ていても、ポジション次第で効果が大きく変わるのです。
肘の位置と角度も重要な要素です。肘を外側に張り出すと、空気抵抗が増加します。ハンドルを握る際は、肘を軽く曲げて内側に絞るようにすることで、身体全体の投影面積を小さくできます。下ハンドルを握り、肘を曲げて内側に入れるポジションは、最も空気抵抗の少ない姿勢の一つです。
プロ選手のタイムトライアル映像を見ると、多くの選手が肘を極端に内側に絞り、上半身をできるだけコンパクトにまとめています。これにより、約5〜10%の追加的な空気抵抗削減が可能になります。
頭の位置も見落とされがちなポイントです。頭を少し下げ、視線を前方やや下に向けることで、頭部が受ける空気抵抗を減らせます。ただし、安全性の観点から、定期的に前方を確認することは不可欠です。頭を下げすぎて視野が狭くなると、危険を察知できなくなります。
エアロヘルメットを着用する場合、頭の角度によって空力性能が大きく変わることがあります。多くのエアロヘルメットは、特定の頭の角度で最適な性能を発揮するよう設計されているため、自分のライディングポジションに合ったモデルを選ぶことが大切です。
体幹の固定と安定性は、エアロポジションを長時間維持するために不可欠です。体幹が弱いと、前傾姿勢を保つことができず、すぐに疲労してしまいます。コアマッスルを鍛えることで、低い姿勢を長時間維持でき、空気抵抗削減の恩恵を最大限に受けられます。
実際のトレーニングとしては、プランクやサイドプランク、バックエクステンションなどの体幹トレーニングが効果的です。週に3〜4回、各30秒〜1分を3セット行うだけでも、数週間で明確な効果が現れます。
柔軟性の向上も忘れてはなりません。深い前傾姿勢を取るためには、ハムストリングや股関節の柔軟性が必要です。日常的にストレッチを行うことで、より深いエアロポジションが可能になり、さらなる空気抵抗削減につながります。
小物類が生み出す隠れた空力効果
ウェア本体以外にも、空気抵抗削減に貢献するアイテムは数多く存在します。これらの小物類は個別の効果は小さくても、総合すると無視できない差を生み出します。
エアロヘルメットは、通常のヘルメットと比較して約5〜10Wの空気抵抗削減効果があります。特に後頭部が流線型に伸びたデザインのものは、頭部から肩にかけての空気の流れを整え、抵抗を大幅に減らします。2025年の最新モデルでは、CFD解析により最適化されたシェイプが採用され、従来モデルよりさらに2〜3%の性能向上が実現されています。
タイムトライアル専用のエアロヘルメットは、通常のロードヘルメットと比較して15〜20Wもの空気抵抗削減が可能です。ただし、通気性が犠牲になっているため、暑い日の長時間使用には注意が必要です。
シューズカバーは、意外と見落とされがちですが、確実な効果があります。シューズの凹凸、通気孔、ベルクロストラップなどは、すべて空気抵抗の原因となります。これらを滑らかなシューズカバーで覆うことで、約3〜5Wの空気抵抗削減が可能です。
プロのタイムトライアルレースでは、シューズカバーは必須アイテムとなっています。わずか数ワットの差でも、40kmのタイムトライアルでは数十秒の差になるためです。市販のシューズカバーは2000〜5000円程度で入手でき、費用対効果は非常に高いといえます。
エアログローブの効果も無視できません。手は常に前方、つまり空気の流れの最前線に位置しています。通常のグローブは指先が丸く、パッド部分に凹凸があるため、空気抵抗を生み出します。エアログローブは指先を流線型にし、表面を平滑にすることで、約2〜3Wの抵抗削減効果があります。
さらに、エアロソックスという製品も存在します。ふくらはぎの筋肉の形状は空気抵抗に影響するため、これを滑らかにカバーするエアロソックスにより、わずかながら空気抵抗が削減されます。その効果は1〜2W程度と小さいですが、競技レベルでは重要な差となります。
これらの小物をすべて組み合わせると、合計で15〜25W程度の空気抵抗削減が可能です。これは時速30〜40kmの速度域で、約1〜2km/hの速度向上に相当します。
実践的なウェア選択のステップバイステップガイド
初めてエアロ効果を意識したウェアを選ぶ際、どこから始めればよいか迷う方も多いでしょう。以下のステップに従うことで、効率的に最適なウェアを見つけることができます。
ステップ1:現状の評価から始めましょう。まず、普段の服装がどれだけ空気抵抗を生んでいるかを認識することが重要です。ゆったりとしたTシャツやハーフパンツは、想像以上に大きな抵抗を生み出しています。可能であれば、風の強い日に意識的に走ってみると、服のバタつきによる抵抗を実感できます。
ステップ2:予算の設定では、現実的な投資額を決めます。エアロ効果のあるウェアは、入門モデルで1万円程度から、高性能モデルでは10万円を超えるものまで幅広い価格帯があります。初心者であれば3〜5万円程度の予算で、十分な効果を得られるウェアが揃います。
ステップ3:目的の明確化が次に重要です。レースに出場するのか、趣味のロングライドを楽しむのか、日常的なトレーニングに使うのかによって、適切なウェアは変わります。レース志向であればレースフィットやエアロワンピース、趣味のライドであればレギュラーフィットのサイクルジャージが適しています。
ステップ4:フィッティングの確認では、必ず試着してサイズを確認します。オンラインショッピングが便利ですが、初めてのブランドの場合は実店舗での試着をおすすめします。身体にぴったりフィットするか、締め付けすぎず緩すぎない適切なフィット感が重要です。腕を前に伸ばしたり、前傾姿勢を取ったりして、実際の走行姿勢で違和感がないか確認しましょう。
サイズ選びでは、ブランドによってサイズ感が異なることに注意が必要です。ヨーロッパブランドは細身の作り、アジアブランドは日本人体型に合わせた作りになっていることが多いです。
ステップ5:素材と機能性のチェックでは、快適性に関わる要素も確認します。速乾性、通気性、伸縮性、UVカット機能など、長時間のライドでは空気抵抗削減と同じくらい重要な要素です。特に夏場の使用を考えている場合は、通気性とUVカット機能を重視すべきです。
ステップ6:段階的なアップグレードを計画します。いきなり高価なエアロワンピースを購入するのではなく、まずはレギュラーフィットのサイクルジャージとビブショーツから始め、効果を実感してから徐々にアップグレードしていく方法もおすすめです。この方法なら、自分の好みや必要性を理解しながら、無駄のない投資ができます。
費用対効果で見るウェア投資の価値
ロードバイクの速度向上のために投資できる項目は多岐にわたりますが、その中でもウェアは最も費用対効果が高い選択肢の一つです。具体的な数値で比較してみましょう。
高性能エアロフレームの価格は、完成車で50〜100万円、フレームセットだけでも30〜60万円程度です。これにより得られる空気抵抗削減効果は、標準的なロードフレームと比較して約10〜15W程度です。一方、エアロワンピースは2〜3万円程度の投資で、約10〜15Wの空気抵抗削減が可能です。つまり、価格が10分の1以下でありながら、同等の効果が得られるのです。
エアロホイールセットも人気の投資先ですが、高性能モデルは20〜40万円程度します。その効果は約5〜10Wの空気抵抗削減です。対して、サイクルジャージとビブショーツのセットは2〜4万円程度で、約8〜12Wの削減効果があります。ここでも、ウェアの費用対効果の高さが際立ちます。
パワーメーターは、トレーニングの質を向上させる重要な機器ですが、価格は5〜15万円程度です。パワーメーター自体は空気抵抗を削減しませんが、効率的なトレーニングにより長期的にパワーが向上します。しかし、即座に速度を向上させたいのであれば、まずはウェアへの投資が合理的です。
初心者から中級者の方であれば、まずウェアとポジションの改善に注力することで、大きな速度向上を実感できるでしょう。機材のアップグレードは、それらを最適化した後でも遅くありません。
実際の投資戦略としては、以下の順序がおすすめです。
- サイクルジャージとビブショーツ(2〜4万円)→ 約8〜12Wの削減
- エアロヘルメット(1〜3万円)→ 約5〜10Wの削減
- ポジション調整とフィッティング(1〜3万円)→ 約10〜20Wの削減
- エアロワンピース(2〜5万円)→ 追加で5〜10Wの削減
- シューズカバーやエアログローブ(0.5〜1万円)→ 約3〜5Wの削減
ここまでで約10〜15万円の投資で、合計30〜50W以上の空気抵抗削減が可能です。これは時速30〜40kmの速度域で、約3〜5km/hの速度向上に相当します。
サイクルウェアの素材技術と機能性の進化
2025年現在、サイクルウェアの素材技術は著しく進化しており、空気抵抗削減だけでなく、快適性や耐久性も飛躍的に向上しています。
ポリエステル系素材の最新技術は、従来のポリエステルを大幅に改良したものです。マイクロファイバー技術により、繊維を極細化することで、軽量性と速乾性が向上しています。汗をかいてもわずか数分で乾くため、長時間のライドでも快適な着心地を維持できます。
また、特殊なコーティング技術により、撥水性も向上しています。突然の雨でも水を弾き、ウェアが重くなることを防ぎます。同時に、内側からの湿気は外に逃がす透湿性も確保されており、蒸れを防ぎます。
UVカット機能は、現代のサイクルウェアには標準装備といえます。UPF50+という最高レベルの紫外線カット性能を持つウェアも珍しくありません。これは紫外線を98%以上カットする性能で、長時間の屋外サイクリングでも日焼けによる体力消耗を防ぎ、肌へのダメージも軽減します。
特に夏場の長距離ライドでは、日焼けによる疲労は想像以上に大きいため、高いUVカット機能は快適性とパフォーマンス維持に直結します。また、長袖タイプのサマージャージは、半袖よりも涼しく感じることがあります。これは直射日光を防ぐことで、体感温度が下がるためです。
抗菌・防臭機能も重要な進化点です。銀イオンや亜鉛化合物などの抗菌剤が繊維に練り込まれており、細菌の繁殖を抑制します。これにより、汗をかいても不快な臭いの発生を防ぎ、連日のライドでも快適に使用できます。
最新技術では、温度調節機能を持つ素材も登場しています。体温が上昇すると冷却効果を発揮し、気温が低いときは保温性を高めるという、環境に適応する素材です。これにより、気温の変化が大きい春秋のライドでも、一着で対応できるようになっています。
圧縮機能を持つコンプレッションウェアも、サイクリストの間で注目されています。適度な圧力により血流を促進し、筋肉の疲労を軽減する効果があります。また、筋肉の無駄な振動を抑えることで、エネルギー効率も向上します。ただし、過度な圧迫は逆効果となるため、適切なサイズ選びが重要です。
フィット感の種類と最適な選択方法
サイクルジャージには主に3つのフィットタイプがあり、それぞれ異なる用途とメリットがあります。自分の目的と好みに合わせて選ぶことが、快適性とパフォーマンスの両立につながります。
カジュアルフィットは、最もゆったりとしたフィット感で、普段着に近い感覚で着用できます。初めてサイクルウェアを購入する方や、窮屈な服装が苦手な方に適しています。ただし、空気抵抗削減効果は他のフィットタイプに比べて控えめで、通常のウェアと比較して約5〜10%程度の削減にとどまります。
このフィットタイプが適しているのは、ゆったりとした街乗りやサイクリング、初心者の方の入門用、カジュアルなロングライドなどです。快適性を最優先したい場面では、カジュアルフィットが最適な選択となります。
レギュラーフィットは、程よい密着感で、快適性とエアロ効果のバランスが取れたフィットタイプです。多くのサイクリストにとって、最も使いやすいオールラウンドなフィット感となります。空気抵抗削減効果は約10〜15%程度で、日常的な使用に十分な性能を持っています。
適している用途は、日常的なトレーニング、中距離から長距離のライド、ツーリングやロングライドなどです。週末のライドから本格的なトレーニングまで、幅広い場面で活躍します。
レースフィットは、身体に最も密着するフィットタイプで、空気抵抗を最小限に抑えることを優先しています。約15〜20%の空気抵抗削減効果があり、競技志向のライダーやタイムを重視する方に適しています。ただし、慣れるまでは窮屈に感じることがあり、長時間着用すると疲労を感じる場合もあります。
このフィットタイプは、レースや競技、高速トレーニング、タイムトライアル、ヒルクライム競技などに最適です。パフォーマンスを最優先する場面で、その真価を発揮します。
フィット感選びの実践的なポイントとしては、まず目的を明確にすることが重要です。レースに出場するのか、趣味で楽しむのかによって、適切なフィット感は大きく変わります。
次に、可能な限り試着して、動きやすさと圧迫感のバランスを確認しましょう。特に肩周りと腕の動かしやすさは重要で、前傾姿勢を取ったときに窮屈さを感じないかチェックします。
体型によっても適切なフィット感は異なります。筋肉質な体型の方は、通常よりワンサイズ上を選ぶことで、適切なフィット感が得られることがあります。メーカーごとにサイズ感が異なるため、複数のブランドを試してみることをおすすめします。
季節に応じた最適なウェア選択戦略
日本には四季があり、それぞれの季節で気温や湿度が大きく変化します。季節に応じた適切なウェア選択は、快適性とパフォーマンスの両立に不可欠です。
春・秋シーズンは、気温の変化が大きく、一日の中でも寒暖差が激しい時期です。この季節では、レイヤリング(重ね着)が重要な戦略となります。基本となる半袖ジャージに、アームウォーマー、ベスト、ウィンドブレーカーなどを組み合わせることで、気温の変化に柔軟に対応できます。
アームウォーマーは、腕部分の保温と日焼け防止に効果的です。気温が上がれば簡単に脱いでポケットに収納でき、携帯性にも優れています。ベストは体幹部分を保温し、風よけとしても機能します。前面は防風性が高く、背面はメッシュ素材で通気性を確保したモデルが理想的です。
朝は10度台前半でも、昼には20度を超えることもある春秋では、このようなアイテムを組み合わせることで、快適な体温調節が可能になります。
夏シーズンは、高温多湿との戦いです。この時期に求められるのは、最大限の通気性、優れた速乾性、高いUVカット機能、そして明るい色による熱吸収の抑制です。
メッシュ素材を多用したウェアは、風通しが良く、体温の上昇を防ぎます。背中全体がメッシュになったモデルや、脇部分に大きなメッシュパネルを配置したモデルが効果的です。
また、特殊な冷感素材を使用したウェアも登場しています。キシリトール加工やチタン配合など、着用時に冷たく感じる素材により、暑さを軽減できます。ただし、熱中症対策として、こまめな水分補給と休憩が不可欠です。
色の選択も重要で、白やライトグレー、パステルカラーなど明るい色は、黒などの濃い色と比較して、熱の吸収を20〜30%抑えることができます。
冬シーズンは、保温性を重視したウェアが必要です。長袖の厚手サーマルジャージ、ウィンタージャケット(防風・撥水機能付き)、起毛素材のビブタイツ、ネックウォーマーやイヤーウォーマーなどが基本装備となります。
内側が起毛した素材は、暖かい空気を保持し、優れた保温性を発揮します。外側は防風性の高い素材で、冷たい風の侵入を防ぎます。ただし、着込みすぎると汗をかいて逆に体を冷やしてしまうため、適度なバランスが重要です。
冬のウェア選びでは、走り始めは少し寒いくらいが適切とされています。ウォーミングアップで体温が上がると、ちょうど良い温度感になります。あまりに暖かすぎる服装だと、走行中に汗をかき、休憩時に急激に体が冷えてしまいます。
インナーウェアが生み出す隠れた性能差
サイクルウェアの下に着用するインナーウェア(ベースレイヤー)は、見えない部分でありながら、快適性とパフォーマンスに大きく影響します。適切なインナーウェアの選択は、総合的なウェアシステムの性能を最大化します。
インナーウェアの主要な役割は、まず汗の吸収と拡散です。肌に密着したインナーウェアが汗を素早く吸収し、外側のジャージへと拡散させることで、肌表面を常にドライな状態に保つことができます。これにより、汗冷えを防ぎ、体温調節がスムーズに行われます。
次に、体温調節のサポート機能があります。適切なインナーウェアは、余分な熱を逃がしつつ、必要な保温性を維持します。季節に応じた素材選びにより、一年を通じて快適な体温を保つことができます。
また、肌への刺激軽減も重要な役割です。縫い目の少ないシームレス構造のインナーウェアは、長時間のライドでも肌への刺激を最小限に抑えます。特に脇や首周りなど、動きの多い部分での擦れを防ぐことで、不快感を軽減します。
夏用インナーウェアは、メッシュ素材で通気性を重視し、薄手で速乾性の高いものが適しています。ノースリーブタイプは、肩の動きを妨げず、最大限の通気性を確保します。汗をかいてもすぐに乾き、べたつきを感じさせません。
中には、汗を吸収すると冷却効果を発揮する素材を使用したインナーウェアもあります。気化熱を利用して体温を下げる仕組みで、炎天下のライドでも体温上昇を抑えられます。
冬用インナーウェアは、保温性の高い起毛素材が基本です。内側の起毛が暖かい空気を保持し、外側の平滑な面が重ね着をスムーズにします。長袖で体幹部分をしっかりカバーし、冷気の侵入を防ぎます。
吸湿発熱素材を使用したインナーウェアは、汗を吸収すると発熱する特性を持ち、さらなる保温性を提供します。ただし、過度に汗をかくと逆に冷えることがあるため、運動強度に応じた選択が必要です。
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