MONOCHROMEは、東京都稀城市のサイクルショップTRYCLEが2025年10月に発表した新しいロードバイクブランドで、東レT800カーボンを採用しながらフレームセット215,000円という価格を実現した注目のバイクです。T800カーボンはT700とT1000の中間に位置する「中弾性・高強度」素材で、フレーム重量約965g(XSサイズ)という軽量性と、レースでも通用する剛性を両立しています。この記事では、MONOCHROMEの東レT800カーボンがもたらす性能の秘密、メカニック視点で設計されたT47ボトムブラケットの採用理由、そして実際のレースでの検証結果まで、新ブランドの全貌を詳しく解説します。

MONOCHROMEとは?TRYCLEが生み出した新ロードバイクブランド
MONOCHROMEは、東京都稲城市矢野口に拠点を置くサイクルショップTRYCLE(トライクル)が2025年10月に発表したオリジナルロードバイクブランドです。このブランドの誕生は、現代のロードバイク市場が抱える価格高騰や供給不安定という課題に対する、現場からの回答として位置づけられています。
聖地「矢野口」に拠点を置くTRYCLEの歩み
TRYCLEが拠点を構える東京都稲城市矢野口は、多摩川サイクリングロードと南多摩尾根幹線道路(通称:尾根幹)という関東のサイクリストにとって最も重要な二つのルートが交差する場所に位置しています。週末には数千台のロードバイクが行き交うこの地は、まさに自転車文化のるつぼと呼べる場所です。
TRYCLEはもともと立川で営業していましたが、新型コロナウイルスの影響による撤退を経て、2021年4月にこの矢野口へ移転しました。移転に際して実施されたクラウドファンディングでは、目標額の約4倍となる支援を集めるなど、地域コミュニティからの期待の高さがうかがえます。代表の田渕君幸氏は、元実業団レーサーとしての実績を持ちながら、YouTubeチャンネル「タブチン」などを通じて専門的な整備技術や機材情報を一般ユーザーに向けて発信するインフルエンサーとしての側面も持ち合わせています。
「自転車のソフトを創る」という経営理念
TRYCLEの経営方針において特筆すべき点は、「自転車のソフトを創る」という理念と、他店購入車両の持ち込みを歓迎するオープンな姿勢です。従来のプロショップが自店で販売した自転車の整備を主軸としていたのに対し、TRYCLEはEC全盛の時代に合わせてメンテナンスや洗車というサービスの提供に価値を置きました。この現場で日々、多種多様なメーカー、年式、状態のバイクに触れることで蓄積された膨大なデータと知見が、MONOCHROMEの開発の土台となっています。
「走るたび、色がつく。」に込められたブランド哲学
MONOCHROMEというブランド名は、直訳すれば「単色」や「白黒」を意味しますが、そのコンセプトには逆説的な意味が込められています。「走るたび、色がつく。」というタグラインは、バイクそのものが主役となってライダーのスタイルを規定するのではなく、バイクはあくまで無垢なキャンバスであり、乗り手がペダルを踏み、風景の中を走り、経験を重ねることで初めてそのバイクに独自の「色」が宿るという思想を表しています。
現代のロードバイク市場、特に大手メーカーのハイエンドモデルは、チームレプリカカラーや巨大なロゴ、複雑なグラフィックパターンで彩られることが一般的です。これは所有欲を満たす一方で、ウェアの選択やライダーの個性を限定してしまう側面もあります。MONOCHROMEはロゴとヘッドマークのみを配した極めてミニマルなデザインと、パールホワイト(Mono-White)およびカーボンブラック(Mono-Black)の2色展開という潔い構成を採ることで、物質的な装飾を排し、機能美と乗り手の自由度を最優先する姿勢を打ち出しました。
東レT800カーボンとは?MONOCHROMEが採用した素材の優位性
ロードバイクのフレームにおいて、素材の選択は走行性能、重量、快適性、そしてコストを決定づける最も重要なファクターです。MONOCHROMEはフレーム素材として「東レT800カーボン」を採用しています。
カーボングレードの違いを理解する:T700・T800・T1000の比較
世界的な炭素繊維メーカーである東レ株式会社の「トレカ®」シリーズは、スポーツ自転車業界における事実上の標準規格となっています。カーボンファイバーの性能は主に「引張強度」と「引張弾性率」という二つの物理量によって分類されます。
業界で最も広く普及しているT700グレードは「標準弾性・高強度」に分類され、引張強度は約4900MPa、引張弾性率は約230GPaです。柔軟性があり破断しにくいため扱いやすく、コストパフォーマンスに優れています。多くの中級グレード(完成車価格30万〜50万円程度)のロードバイクは、このT700を主材料としています。しかし、剛性を高めようとすると積層数を増やす必要があり、結果としてフレーム重量が増加する傾向にあります。
一方、ハイエンドモデルに使用されるT1000やT1100Gといったグレードは、引張強度が6000MPaを超え、弾性率も極めて高い素材です。圧倒的な軽量化と剛性を実現できますが、素材単価が非常に高く加工も難しいため、完成車価格が100万円を超えるトップモデルに限定されます。また、剛性が高すぎる素材は路面からの衝撃をダイレクトに伝えすぎるため、ホビーライダーにとっては「硬すぎて疲れる」フレームになりがちです。
T800カーボンが実現する「黄金比」のバランス
MONOCHROMEが採用したT800グレードは、T700とT1000の中間に位置する「中弾性・高強度」カーボンです。引張強度は約5490〜5880MPa、弾性率は約294GPaに達します。
工学的な視点から見ると、T800はロードバイクフレームとして理想的なバランスを持っています。T700と比較して、強度は約10〜20%高く、弾性率(剛性)は約30%向上しています。これにより、T700よりも薄い積層で同等の強度と剛性を確保できるため、フレームの大幅な軽量化が可能になります。MONOCHROMEのフレーム重量はXSサイズのブラックカラーで約965gと発表されています。ディスクブレーキ対応、エアロ形状、フル内装という現代的な要件を満たしながら1kgを切る重量を実現しているのは、T800カーボンの特性を最大限に活かした結果です。
また、T800は航空宇宙産業(ボーイング777の尾翼構造材など)でも多用される素材であり、高い信頼性を誇ります。T1000ほど極端に硬質ではないため、適度な衝撃吸収性を残すことができ、ロングライドや荒れた路面での快適性も確保しやすいというメリットがあります。田渕氏自身もインプレッションにおいて「パリッと硬い」と評しつつ、不快な硬さではないことを示唆しています。つまり、T800は「レースで戦える反応性」と「ホビーライダーが扱える快適性」、そして「現実的な価格」の3要素を最も高い次元でバランスさせることができる素材なのです。
素材表記の誠実性:MONOCHROMEが示す透明性
ロードバイク市場、特に新興ブランドやOEM製品の中には、カタログスペックで「東レカーボン使用」と謳いながら、実際には低グレードのT700やそれ以下の素材を主材とし、剛性が必要なごく一部にのみ上位グレードを使用しているケースが散見されます。しかし、MONOCHROMEは「Toray T800」と明記し、その物理的特性(軽量性と剛性)が実際の製品スペック(重量965g〜)に反映されています。215,000円というフレームセット価格で主材にT800を採用していることは、同価格帯の競合製品(多くはT700ベース)と比較して明確なアドバンテージとなります。
メカニック視点の設計思想:T47ボトムブラケットと整備性へのこだわり
TRYCLEが「プロショップとしての知見を注ぎ込んだ」と語る通り、MONOCHROMEのフレーム設計には現代のロードバイクが抱える整備性や規格の乱立に対する現場視点からの解決策が盛り込まれています。
日本人体型を考慮したサイズ展開
MONOCHROMEのサイズ展開にはXSサイズが含まれており、小柄なライダーが多い日本の市場環境を強く意識した設計となっています。海外ブランドのバイク、特に欧米向けのモデルは最小サイズでもトップチューブが長すぎたり、スタンドオーバーハイトが高すぎたりして、日本人が乗るとポジションが出しにくいケースが多々あります。MONOCHROMEは日本のショップが企画・監修することで、日本人の平均的な体格や柔軟性に適合するジオメトリーを採用しています。XSサイズのフレーム重量が詳細に公開されていることからも、軽量なクライミングバイクを求める小柄なライダーを主要ターゲットの一つに据えていることがわかります。
T47ボトムブラケット採用の理由と利点
MONOCHROMEのスペックにおいて最もメカニック視点が反映されているのが、ボトムブラケット(BB)規格にT47を採用した点です。
過去10年以上、ロードバイク業界では「プレスフィット(圧入)BB」が主流でした。BB86やPF30といった規格はフレームのBBシェルを大口径化・広幅化できるため、フレーム剛性の向上と軽量化に寄与しました。しかし、圧入式はフレームとBBカップの嵌合公差(製造上のわずかなズレ)に極めて敏感です。長期間の使用や度重なる高負荷により、わずかな隙間が生じると、ペダリングのたびに「パキパキ」という異音(音鳴り)が発生するという持病がありました。この異音問題は多くのサイクリストを悩ませ、ショップにとっても解決の難しい案件でした。
T47規格はクリス・キングとアルゴノート・サイクルズによって提唱された規格で、従来の信頼性の高い「ねじ切り(スレッド)式」とプレスフィットのメリットである「大口径」を融合させたものです。
T47規格の最大の利点は音鳴りの解消です。金属製のBBカップをフレーム側のねじ山にしっかりとねじ込んで固定するため、構造的に緩みやガタツキが発生しにくく、異音のリスクを劇的に低減します。また、専用工具を使用すれば叩き出す必要のあるプレスフィットとは異なり、容易かつ安全に脱着が可能です。これによりベアリングの交換やクリーニングが頻繁に行えるようになります。さらに47mmという大口径シェル(内径)は、30mmスピンドルの高剛性クランクに対応するだけでなく、油圧ブレーキホースやDi2ケーブルをBB周りに通すスペースを十分に確保できます。これにより現代のフル内装フレームにおいてケーブルがクランク軸に干渉するトラブルを防ぎます。
TRYCLEの日々の業務において、他店購入のプレスフィットBBの音鳴り相談や交換作業がいかに多いかを考えれば、自社ブランドでT47を採用することは必然であり、ユーザーに対する「長く安心して乗ってほしい」というメッセージでもあります。
フル内装とタイヤクリアランスによる拡張性
MONOCHROMEはステアリング周りからフレーム内部へケーブルを完全内装する設計を採用しており、空気抵抗の削減と見た目のクリーンさを実現しています。機械式変速と電動変速の両方に対応しているため、ユーザーの予算や好みに応じてコンポーネントを選択できる柔軟性を残しています。
また、最大タイヤクリアランスは32cに設定されています。これは最新のワールドツアーレース機材のトレンド(28c〜30c標準)に合致するだけでなく、32cのタイヤを装着することで舗装の荒れた林道や軽いグラベル、長距離のブルベなど、レース以外の用途にも幅広く対応できることを意味します。ブランドコンセプトにある「速さを求めることも、知らない道を探すことも」という多様性は、このタイヤクリアランスによってハードウェア的に担保されています。
MONOCHROMEの製品ラインナップと価格戦略
MONOCHROMEは製品そのものの魅力に加え、その販売方法とサポート体制においても独自のエコシステムを構築しています。
3つのパッケージ展開と価格設定
2025年11月のローンチ時点では、3つのパッケージが展開されています。
まずフレームセットは215,000円(税込)で販売されており、フレーム、フォーク、シートポスト、スルーアクスル、ヘッドパーツ等の基本セットが含まれています。大手メーカーのミドルグレードフレーム(30〜40万円)と比較して圧倒的に安価であり、中華ブランドの直販価格(15〜20万円+送料・関税)と比較しても、国内サポート込みでこの価格は競争力が高いです。
次にハンドルセットは239,800円(税込)で、フレームセットに「MISSION」カーボンハンドルが付属します。差額約25,000円で一体型カーボンハンドルが手に入る計算となり、コストパフォーマンスが非常に高い構成です。
そしてコンポーネントセット(BARACAN限定10セット)は389,800円(税込)で、ハンドルセットにSHIMANO 105 Di2(R7170)グループセットが付属します。105 Di2の市場価格(約20万円弱)を考慮すると、実質的にフレームセットが20万円以下、あるいはコンポが大幅な割引価格で手に入ることになり、初期ロットの目玉商品となっています。
BARACANによる品質管理と付加価値
MONOCHROMEの販売は、TRYCLEが運営するECサイト「BARACAN(バラカン)」および実店舗で行われます。「BARACAN」とは「バラ完(フレームからパーツを選んで組み上げる)」を身近にするためにTRYCLEが立ち上げたプラットフォームです。
通常、AliExpressなどで安価なカーボンフレームやホイールを購入する際、ユーザーは「品質のばらつき」「配送事故」「保証の欠如」というリスクを負います。TRYCLEはプロショップとして自社で商品を仕入れ、全数検品を行います。カーボン成形時のバリ取り、BBやヘッド、ブレーキ台座のフェイシング(面出し)、タッピング(ねじ切り直し)といった自転車を正しく組むために不可欠な下処理を、日本の熟練メカニックの手で行ってから出荷します。これによりユーザーは「海外通販並みの価格」で「プロショップ品質の安心」を得ることができます。この「付加価値付き直販モデル」こそがMONOCHROMEの最大の強みです。
MISSIONハンドルの役割
セット販売される「MISSION」ハンドルは、市場に出回っている高品質なOEM製品をTRYCLEが選定・検証し、自社ブランドの基準に適合させたものです。ケーブルフル内装に対応した一体型カーボンハンドルは単体で購入しても高価であり、フィッティング(ステム長やハンドル幅)が難しいパーツですが、TRYCLEが推奨する製品としてパッケージ化することでユーザーの選定ミスを防ぎ、空力性能と軽量化を確実に提供する狙いがあります。
ツール・ド・おきなわでの実戦検証:MONOCHROMEの性能を証明
新興ブランドにとって、カタログスペック以上の説得力を持つのが「レースでの実績」です。TRYCLEはこの点において、創設者自身が過酷なレースに投入するという最も誠実かつリスクのある方法で証明を試みました。
2025年ツール・ド・おきなわへの挑戦
ブランド発表直後の2025年11月9日、田渕氏は日本最大級の市民ロードレース「ツール・ド・おきなわ」の「市民レース140kmオープン」クラスに、MONOCHROMEの実車で参戦しました。このレースはアップダウンの激しい沖縄本島北部の公道を封鎖して行われ、実業団レベルの選手も多数参加するアマチュアレーサーにとっては「甲子園」のような位置づけの大会です。140kmという距離は機材の空力性能、登坂性能、快適性、そして信頼性が極限まで試される環境です。田渕氏は「目標は優勝」と公言し、「ブランドを作ることが目的ではなく、自転車を通じて自由を感じてもらうことが目的」という哲学を自らの走りで体現しようとしました。
レース結果と詳細なインプレッション
結果は3時間47分22秒で完走し、11位という好成績を収めました。優勝こそ逃したものの、トップ集団とほぼ変わらないペースで140kmを走り切った事実は、MONOCHROMEのフレームがレースの第一線で戦えるポテンシャルを持っていることを客観的に証明しました。
田渕氏自身によるレース後のインプレッションでは、剛性と加速について「パリッと硬い」印象でダンシング時の加速が気持ち良いこと、リア三角の剛性が高く踏み込んだ力が即座に推進力に変わることが挙げられています。下りの速さについては、競合するハイエンドバイク(Cannondale SuperSix EVOなど)と比較しても下りでの最高速度の到達が早く安定しているとのことで、これはフォーク剛性と空力性能の高さを示唆しています。
一方で課題点として、SuperSix EVOと比較すると加速後の巡航速度の維持やフレームの「しなり」を活かした進ませ方という点では劣る部分もあると率直に述べています。このように自社製品のメリットだけでなく、他社の超ハイエンドモデルと比較した際の特性の違いや課題点まで隠さずに公開する姿勢は、ユーザーに対して高い信頼感を与えています。
MONOCHROMEのアフターサポート:2年保証と長期サポート体制
海外新興ブランドやOEMフレームを購入する際の最大の障壁は故障時の対応です。MONOCHROMEは国内法人のTRYCLEが販売元となることで、万全のサポート体制を敷いています。
2年間の製品保証
MONOCHROMEには購入日から2年間の製品保証が付帯します。通常使用において発生したクラック(亀裂)や破損に対し、無償での修理や交換が行われます。これはSpecializedやTrekといった大手メーカーの標準的な保証(製造上の欠陥に対する保証)と同等の水準であり、初期不良に対する不安を払拭します。
補修パーツの長期供給体制
専用のディレイラーハンガー、シートポストクランプ、スルーアクスルといったスモールパーツの供給もTRYCLEが責任を持って行います。万が一モデルチェンジなどで製造が終了した場合でも、同等品への交換や対応を行う旨が明記されています。物理的な店舗が存在し、電話やLINEで直接メカニックに相談できる環境があることは、顔の見えない海外通販とは比較にならない安心材料です。
クラッシュリプレイスメントへの期待
TRYCLEが扱う他のブランド(Winspaceなど)では、落車や事故による破損(保証対象外)に対して割引価格で新品を購入できる「クラッシュリプレイスメント」制度が導入されています。MONOCHROMEにおいても同様のユーザー救済措置が期待されます。田渕氏の「走るたび、色がつく」という哲学には傷つくことを恐れずに走ってほしいという願いも込められており、ユーザーがアグレッシブに走るためのサポート体制は今後さらに強化されるでしょう。
ロードバイク市場におけるMONOCHROMEの立ち位置
最後に、現在のロードバイク市場全体におけるMONOCHROMEの立ち位置を分析します。
ハイエンド高騰とミドルグレードの空洞化
現在、欧米メジャーブランドのロードバイク価格は高騰の一途をたどっています。Shimano 105 Di2を搭載したカーボンロードの完成車価格は、SpecializedやTrek、Cannondaleといったブランドでは50万円〜80万円が相場となりつつあります。かつて20万円〜30万円で購入できた「初めてのカーボンバイク」のゾーンは現在ではアルミフレームの領域となっており、カーボンバイクへのステップアップのハードルが極端に高くなっています。
アジアンブランドの台頭と課題
この価格高騰の隙間を縫うように、Winspace(ウィンスペース)、Elves(エルヴス)、YoEleo(ヨエレオ)、Gusto(グスト)といったアジア系ブランドが台頭してきました。これらは高性能なカーボンフレームを20万円前後で提供し人気を博しています。しかし、これらは「直販」が基本であり、組み立てやメンテナンスはユーザーの自己責任か持ち込みに理解のある一部のショップに依存する必要がありました。
「第3の選択肢」としてのMONOCHROME
MONOCHROMEはこれらアジアンブランドと同等の価格帯(フレームセット21.5万円)でありながら、「日本の有名プロショップによる検品とサポート」が付加されている点で、市場に新たな「第3の選択肢」を提示しました。
大手ブランドは高価格で高品質、ブランドステータスがあり手厚いサポートを提供します。海外通販ブランドは低価格ですが品質にばらつきがあり、サポートに不安があり自己責任が前提となります。MONOCHROMEは低価格でありながら高品質(国内検品済み)で、手厚いサポート(国内店舗あり)を提供します。
この立ち位置は、予算は限られているが性能には妥協したくない、そして何より安心して長く乗りたいと考える日本のサイクリストにとって、極めて魅力的な選択肢となります。また、ブランドの主張を抑えたシンプルなデザインは、ウェアやヘルメット、他のパーツとのコーディネートを楽しみたい層や、特定のチームカラーに縛られたくない層の受け皿ともなります。
MONOCHROMEが日本の自転車業界にもたらすインパクト
MONOCHROMEの登場は単なる新製品の発売以上の意味を持っています。それは流通のマージン構造を見直し、必要な性能(T800カーボン、T47 BB)を適正な価格で提供するという自転車業界の「民主化」への挑戦でもあります。
今後TRYCLEが掲げる「ノルマのない販売店網」が拡大すれば、地方の小規模ショップも在庫リスクを負わずにMONOCHROMEを取り扱えるようになり、日本全国でこの新しい選択肢が広まる可能性があります。また、田渕氏自身がレースで走り続け、そのデータを製品開発やインプレッションとしてフィードバックし続ける限り、MONOCHROMEは「机上の空論」ではない「生きたブランド」として進化し続けるでしょう。
「走るたび、色がつく。」この言葉通り、MONOCHROMEはまだ真っ白なキャンバスです。しかし、そこには確かな技術と日本のサイクリング文化をより良くしたいというTRYCLEの熱い意志が下地として塗られています。これから多くの日本のサイクリストたちがそれぞれの色でこのフレームを彩っていく未来は、閉塞感のある市場において鮮やかな希望の光景となることでしょう。


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