レブロン・ジェームズがキャニオン(Canyon Bicycles)の新型バイクを予告し、サイクリング界に大きな衝撃を与えました。2025年12月9日、レブロンは自身のインスタグラムで「They got another one on the way I can’t wait to show ya’ll(もう一台来るぞ、みんなに見せるのが待ちきれない)」というメッセージとともに新型バイクの一部を公開しました。この投稿により、スペックや価格への関心が世界中で高まっています。
NBA史上最高のプレイヤーの一人として知られるレブロン・ジェームズは、バスケットボールコートの外でも自転車への深い情熱を持っています。2022年7月、彼のファミリーオフィス「LRMR Ventures」はプライベートエクイティ企業「SC Holdings」と共同で、ドイツの直販自転車メーカーCanyonに3000万ユーロ規模の戦略的投資を行いました。この投資をきっかけに、両者のパートナーシップは単なるスポンサー契約を超えた「共創」の関係へと発展しています。本記事では、レブロンが予告した新型バイクの正体に迫るとともに、彼が愛用するCanyonのe-MTBモデルの詳細なスペック、そして日本での価格予想までを徹底解説します。

レブロン・ジェームズとキャニオンのパートナーシップとは
レブロン・ジェームズとキャニオン・バイシクルズの関係は、2022年7月に始まった戦略的投資に端を発しています。多くのスポーツ選手がブランドアンバサダーとして契約を結ぶ中、レブロンのアプローチは経営的な視点に基づいた独自のものでした。
LRMR VenturesとSC Holdingsによる3000万ユーロの投資は、Canyonにとって極めて重要な意味を持ちました。ドイツ発のブランドであるCanyonは、欧州では圧倒的なシェアを誇っていたものの、北米市場でのプレゼンス拡大が課題でした。世界で最も影響力のあるアスリートの一人であるレブロンを株主として迎え入れることは、北米市場への強力な「通行手形」を手に入れることを意味したのです。
レブロン側にとっても、Canyonが持つ「Direct-to-Consumer(DTC)」という革新的なビジネスモデルと最先端のエンジニアリング技術は、彼のポートフォリオにおいて魅力的な成長株でした。このパートナーシップは、投資家とブランドの双方にとってウィンウィンの関係を築いています。
「Find Your Freedom」キャンペーンの哲学
投資から2年後の2024年7月、このパートナーシップは「Find Your Freedom(自由を見つけろ)」というグローバルキャンペーンとして具現化しました。このキャンペーンの核心は、自転車を単なるスポーツ機材としてではなく、「自由への扉」として再定義することにあります。
レブロンは、オハイオ州アクロンで過ごした少年時代、自転車が彼に移動の自由を与え、狭いコミュニティから広い世界へと飛び出す手段であったことを繰り返し語っています。「自転車に乗ることで、行けるはずのなかった場所へ行けた。風を顔に受けて走る自由は何物にも代えがたい」という彼の言葉は、Canyonのブランドミッションと深く共鳴しました。
このキャンペーンには、レブロンだけでなく、現役のロードレース世界王者マチュー・ファン・デル・プール、YouTubeで絶大な人気を誇るフリーライダーのファビオ・ビブマー、そして新世代のライダーであるオリビア・シルバらが起用されました。異なるジャンルの頂点に立つアスリートたちが一堂に会することで、Canyonは「ロード」「MTB」「アーバン」といったカテゴリーの壁を超えた、普遍的なサイクリングの喜びを表現することに成功したのです。
2025年12月の新型バイク予告の詳細
2025年12月9日、レブロン・ジェームズは自身のインスタグラムアカウントにおいて、サイクリング界を揺るがす投稿を行いました。彼はCanyonのアカウントをタグ付けし、「They got another one on the way I can’t wait to show ya’ll(もう一台来るぞ、みんなに見せるのが待ちきれない)」というキャプションと共に、新型バイクの一部を写した画像を公開したのです。
この投稿は深夜に行われたにもかかわらず、瞬く間に数千の「いいね」とコメントを集めました。コメント欄は「GOAT(史上最高)」「新しいシグネチャーモデルか?」といったファンの熱狂と、業界関係者による「ホイールサイズは何インチだ?」「フルサスペンションのジオメトリーが通常と異なる」といった技術的な推測で溢れかえりました。
新型バイクの正体に関する技術的分析
公開された画像やこれまでの文脈から、新型バイクの正体について複数の可能性が浮上しています。
32インチまたは36インチホイールの大型バイクという仮説が最も有力です。身長203cm(6フィート8インチ)のレブロンにとって、市場で一般的な最大サイズである「29インチホイール・XLフレーム」のバイクでさえ、相対的に小さく感じられる物理的な現実があります。彼は以前、特注自転車メーカー「DirtySixer(ダーティーシクサー)」による36インチホイールのマウンテンバイクを所有していた経緯があり、36インチホイールは身長2メートル超のライダーに対し、適切な車輪径比率と安定感を提供します。
特に2025年は、自転車業界において「32インチホイール」という新規格が注目を集めている年です。Maxxisなどのタイヤメーカーが32インチタイヤの開発に着手し、UCI(国際自転車競技連合)もレースでの使用を事実上容認する姿勢を見せています。Canyonがレブロンのために、32インチあるいは36インチの専用設計フレームを開発し、それをプロトタイプとして、あるいは「XXL以上のライダー向け量産モデル」の先駆けとして公開した可能性は非常に高いと考えられます。
フルサスペンション構造の最適化という側面も注目されています。ティーザー画像からは、リアショックを備えたフルサスペンション構造が見て取れます。レブロンのような体重(約113kg)とパワーのあるアスリートがトレイルを走行する場合、フレームやサスペンションにかかる負荷は並大抵ではありません。Canyonのエンジニアは、既存の「Spectral」や「Strive」といったモデルのリンク構造をベースにしつつ、レバー比や剛性バランスを根本から見直した専用設計を行っているものと推測されます。特に長いヘッドチューブや強化されたチェーンステーは、高身長ライダー特有の高い重心位置に対応するための必然的な設計思想といえるでしょう。
Canyon Neuron:ONfly(ニューロン・オンフライ)のスペック詳細
レブロン・ジェームズが「Find Your Freedom」キャンペーンのメインビジュアルで跨っているバイクは、Canyonのe-MTBラインナップにおける革命児、「Neuron:ONfly(ニューロン・オンフライ)」です。このバイクは、「電動アシストのパワー」と「人力バイクの軽快さ」という相反する要素を高度に融合させた「ライトウェイトe-MTB」というカテゴリーに属しています。
外観と軽量性の特徴
Neuron:ONflyの最大の特徴は、一見するとe-bikeには見えないそのスリムなシルエットにあります。バッテリーとモーターはカーボンフレームのダウンチューブとボトムブラケット周辺に完全に内蔵されており、重量は最軽量モデルで約19kg台を実現しています。一般的なフルパワーe-MTBが25kg前後であることを考慮すると、この軽さは取り回しの良さに直結します。レブロンがキャンペーン動画で軽やかにジャンプやコーナリングを決めているのは、この軽量性が大きく寄与しているのです。
フレームジオメトリーとサスペンション性能
このバイクは「トレイルバイク」として設計されており、登りと下りの性能バランスが重視されています。
サスペンションストロークはフロント・リア共に140mm(XSサイズのみ130mm)を確保しています。これは激しいダウンヒルにも耐えうる余裕と、登坂時のペダリングロスを抑える絶妙な数値です。Canyon独自の「トリプルフェーズ・サスペンション」機構により、動き出しは繊細に、中間域では安定し、ボトム付近では踏ん張るという理想的な特性を実現しています。
ヘッドアングルは64.5度に設定されています。現代のトレイルバイクらしく寝かせた角度設定により、急斜面の下りでも前転する恐怖感を抱かせない安定感を提供します。
シートチューブアングルは76.5度と立たせ気味に設計されています。この角度設定により、急な登り坂でもライダーの重心をバイクの中央に保ち、フロントタイヤが浮き上がるのを防ぎます。
Neuron:ONfly CF 7のコンポーネント構成
レブロンのキャンペーンに関連して最も注目される、高コストパフォーマンスモデルがNeuron:ONfly CF 7です。
サスペンションにはフロントにRockShox Pike Base、リアにはRockShox Deluxe Select+を採用しています。調整機能はシンプルながら、基本性能の高い信頼性のあるユニットです。
ブレーキにはSRAM Code Rが装備されています。4ピストンキャリパーと200mmの大型ローター(前後)を装備し、重量のあるe-bikeを確実に止めるためのダウンヒルグレードの制動力を確保しています。
ドライブトレインにはShimano Deore(12速)を採用しています。質実剛健なシマノのミドルグレードであり、確実な変速と耐久性を提供します。
ホイールにはRodi TRYP30 EVOが使用されています。30mm幅のアルミリムは、太めのタイヤ(2.4インチ幅)をしっかりと支え、トラクションを稼ぎます。
Neuron:ONfly CF 9 / LTDハイエンドモデルの構成
究極の性能を求めるライダー向けのハイエンドモデルも用意されています。
サスペンションにはRockShox Pike UltimateやFox Factoryシリーズなど、摩擦抵抗を極限まで減らした最高級ユニットを搭載しています。
ドライブトレインにはSRAM GX Eagle AXS Transmissionが採用されています。これは最新の無線電動変速システムであり、変速ハンガーを廃した直付け構造により、驚異的な耐久性と変速精度を誇ります。
ホイールにはDT Swiss製のハイエンドホイール(HX1700など)を採用し、漕ぎ出しの軽さを追求しています。
Bosch Performance Line SXモーターの革新性
Neuron:ONflyの軽快な走りを支えているのは、ドイツの巨人Bosch(ボッシュ)が開発した新型モーター「Performance Line SX」です。このモーターの採用こそが、Canyonがレブロンのような「パワーとスピード」を表現できた理由です。
マグネシウム採用による圧倒的な軽量化
従来のe-MTB用モーター(Performance Line CXなど)は、最大トルク85Nmという強大なパワーを持つ反面、重量が約2.9kgと重く、バイクの重心バランスやハンドリングに影響を与えていました。対して、新型「SX」モーターは、ハウジングにマグネシウム合金を採用するなど徹底的な軽量化を行い、重量を約2.0kgにまで削減しました。バイクの中心部で約1kgの軽量化がなされたことは、ライダーがバイクを振る際の挙動を劇的に軽くします。
高回転で発揮される600Wの最大出力
SXモーターのスペックシートを見ると、最大トルクは「55Nm」となっています。これは数値上、従来のCXモーター(85Nm)より劣るように見えます。しかし、ここにBoschの技術的なトリックがあります。SXモーターは、ライダーが高いケイデンス(ペダル回転数)で漕いだときに真価を発揮するようチューニングされています。
ライダーが毎分70回転以上の高回転でペダリングを行うと、モーターは最大で600Wという、CXモーターと同等のピークパワーを叩き出します。つまり、「モーターに運んでもらう」のではなく、「自ら積極的に漕ぐことで、スーパーヒーローのようなパワーが得られる」という特性を持っています。これは、トップアスリートであるレブロン・ジェームズの「自らの力で道を切り拓く」という哲学とも合致するものです。
バッテリー容量と拡張性
フレームに内蔵された「CompactTube 400」バッテリーは、400Whの容量を持ちます。最新のセル技術(21700セル等)を用いることで、エネルギー密度を高めながら重量を約2kgに抑えています。
さらに、長距離ライドを楽しみたいユーザーのために、「PowerMore 250」というレンジエクステンダー(予備バッテリー)が用意されています。これは専用のボトルケージ台座に装着できる水筒サイズのバッテリーで、250Whの容量を追加できます。合計650Whとなれば、一日がかりの山岳ライドでもバッテリー切れの心配はほとんどありません。
Canyon Grizl:ON(グリズル・オン)のスペック詳細
レブロンとのパートナーシップの文脈で、もう一つ重要なモデルが「Grizl:ON(グリズル・オン)」です。これはCanyonの人気グラベルロード「Grizl」を電動化したモデルであり、通勤からアドベンチャーまでをこなす「多目的e-bike」の決定版です。
実用性と冒険心を両立する設計
Grizl:ONは、単にドロップハンドルの自転車にモーターを付けただけではありません。日常の使用におけるストレスを排除するための工夫が随所に凝らされています。
全モデルのフロントフォークに、グラベル専用のRockShox Rudy(40mmトラベル)を標準装備しています。これにより、アスファルトの継ぎ目から砂利道の段差まで、あらゆる振動を吸収し、手首や肩への疲労を軽減します。
非常にユニークなのがLupine統合ライトシステムです。フロントライトはもちろん、リアライトはフレームのドロップアウト(後輪の車軸付近)左右に埋め込まれています。これらはメインバッテリーから給電されるため、充電の手間がなく、夜間の視認性を劇的に向上させます。
VCLSテクノロジーによる快適性
シートポストには、Canyonのアイコンとも言える「S14 VCLS 2.0」リーフスプリングシートポストが採用されているモデルがあります。これはカーボン製のシートポストを二枚板の板バネ構造にすることで、路面からの突き上げに対して物理的にしなり、サスペンションのような快適性を提供します。
Grizl:ONの主要スペック
ドライブトレインにはShimano GRX(11速または12速)やSRAM Force XPLRなど、グラベル専用コンポーネントが採用されています。チェーン暴れを抑えるスタビライザー機能が標準装備されています。
タイヤクリアランスは最大50mm幅のタイヤまで装着可能です。標準では45mm幅のSchwalbe G-Oneシリーズなどが装着されており、泥道でも確実なグリップを発揮します。
重量は約15kg〜17kgです。フェンダー(泥除け)やキャリアを装備した「Daily」モデルでも、e-bikeとしては非常に軽量な部類に入ります。
DirtySixerと36インチホイールの歴史
レブロン・ジェームズのバイクライフを語る上で欠かせないのが、彼がCanyonと提携する以前に乗っていた「DirtySixer(ダーティーシクサー)」の存在です。これは、今回のCanyonの新型ティーザーを読み解く上で極めて重要な情報となります。
36インチホイールが必要な理由
一般的な自転車の設計は、身長190cm程度のライダーまでを想定していることが多く、203cmのレブロンにとって既製品は「子供用自転車」のように小さく、不安定でした。これに対し、DirtySixerは36インチ(約91cm)という巨大なホイールを使用することで、高身長ライダーに対し、通常の体格のライダーが29インチや700Cの自転車に乗るのと同等のプロポーションと安定感を提供しました。
36インチホイールの物理的特性として、圧倒的な「ロールオーバー(障害物乗り越え)性能」があります。車輪径が大きいため、段差への進入角度が浅くなり、衝撃をいなすように進むことができます。また、強いジャイロ効果により、一度スピードに乗れば矢のように直進する安定性を持ちます。レブロンのカスタムモデルには、Onyx製のハブ、カーボンリム、Archerの電子シフトシステムなど、マニアックかつ高性能なパーツが奢られていました。
Canyonによる新たな挑戦
Canyonとのパートナーシップにおける「新型」は、このDirtySixerのコンセプトを、Canyonの高度なカーボン成形技術とサスペンション設計技術でアップデートしたものと考えられます。もしティーザーのバイクが32インチ規格であれば、36インチほどの特殊性を排しつつ(36インチはタイヤの選択肢が極端に少ない)、29インチを凌駕する走破性を実現する「現実的な最適解」となります。これは、レブロン個人のためだけでなく、世界中の高身長ライダーにとっての福音となるプロダクトの誕生を意味する可能性があります。
「I PROMISE」プログラムと社会貢献
このパートナーシップを単なる商業的な成功物語として完結させることはできません。その根底には、レブロン・ジェームズ・ファミリー財団(LJFF)が運営する「I PROMISE」プログラムを通じた、強固なフィランソロピー(社会貢献)の精神が流れています。
「Earned, Not Given」という教育理念
オハイオ州アクロンのリスクのある子供たちを支援する「I PROMISE」学校では、学業成績や出席率の目標を達成した生徒に対し、その報酬として自転車が贈呈されます。これは「物はただ与えられるのではなく、努力して勝ち取るものだ」という教育理念に基づいています。
レブロンにとって自転車は、かつて危険な地域から安全な場所へ移動し、バスケットボールの練習に通うための「ライフライン」でした。彼は、現代の子供たちにも同じように、自転車を通じて行動範囲を広げ、自立心を養ってほしいと願っています。
Canyonの社会貢献への取り組み
Canyonはこの理念に賛同し、同社の「Grand Canyon Young Heroes」などのジュニア用マウンテンバイクをプログラムへ寄贈しています。これは単なる機材提供ではありません。Canyonにとっては「次世代のライダーを育成する」という長期的な投資であり、レブロンにとっては「故郷への恩返し」を最高品質のプロダクトで実現する手段です。このコラボレーションは、ビジネスとチャリティが理想的な形で融合した稀有な事例といえるでしょう。
日本市場での価格と入手方法
日本のファンやサイクリストにとって最も現実的な関心事である「日本での購入」について解説します。
Canyon Japanを通じた購入プロセス
Canyonは日本市場にも深くコミットしており、京都に拠点を置く「Canyon Japan」がサポート体制を敷いています。ユーザーはドイツ本国のサイトから日本語で注文し、バイクは専用の段ボール(Bike Guard)に梱包され、空輸で自宅まで届けられます。
Neuron:ONflyやGrizl:ONといったe-bikeに関しては、日本の法規制(道路交通法における駆動補助機付自転車の基準:アシスト比率や24km/hでのアシストカット)に適合させる必要があるため、グローバル発表から日本発売までにタイムラグが生じることがあります。しかし、Boschのスマートシステムはソフトウェア制御によるローカライズが容易であるため、日本導入の障壁は以前より低くなっています。
Neuron:ONfly CF 7の予想価格
2025年現在の為替相場(1ユーロ=160円〜170円前後)と、昨今の自転車価格の高騰を考慮した予想価格は以下の通りです。
Neuron:ONfly CF 7のグローバル価格は約4,849ユーロまたは5,500ドルです。日本での予想価格は約850,000円〜950,000円(消費税・送料込み)となります。
この価格帯は決して安価ではありませんが、フルカーボンフレーム、Bosch SXモーター、高品質なサスペンションを搭載したe-MTBとしては、競合他社(SpecializedやTrekなど)の同等モデルが100万円〜120万円を超える中で、依然として高い競争力を持っているといえます。
Grizl:ON CF 7の予想価格
Grizl:ON CF 7のグローバル価格は約4,999ユーロです。日本での予想価格は約800,000円〜900,000円となります。
日常使いから週末の冒険まで一台でこなせる汎用性を考えれば、自動車の代わりとして十分に検討に値する価格設定です。
自転車業界における32インチホイール規格の動向
今回のレブロンの新型バイク予告を理解するために、自転車業界における32インチホイール規格の最新動向についても触れておきます。
32インチ規格が注目される背景
2025年は、自転車業界において32インチホイールという新しい規格が本格的に議論され始めた年です。従来のマウンテンバイクでは26インチから27.5インチ、そして29インチへとホイールサイズが大型化してきました。29インチホイールは現在の標準となっていますが、身長が190cmを超えるライダーにとっては、まだ物足りないサイズ感であることも事実です。
32インチホイールは、29インチと36インチの中間に位置する規格として、実用性と走破性のバランスが取れたサイズとして注目されています。Maxxisなどの大手タイヤメーカーが32インチタイヤの開発に着手しており、UCI(国際自転車競技連合)もレースでの使用を事実上容認する姿勢を見せています。
高身長ライダー向け市場の拡大
世界的に見ると、平均身長が高い北欧やオランダ、そして身長2メートルを超えるバスケットボール選手やバレーボール選手など、既存の自転車サイズでは対応しきれないライダーが一定数存在します。これまでこうしたライダーは、特注フレームを注文するか、窮屈な姿勢で既製品に乗るしかありませんでした。
Canyonがレブロン・ジェームズとのパートナーシップを通じて32インチまたは36インチの量産モデルを開発すれば、こうした高身長ライダー向け市場を開拓する先駆けとなる可能性があります。レブロンという世界的なアイコンが自ら使用することで、「大型サイズの自転車」というニッチな市場に対する認知度が一気に高まることが期待されます。
e-MTBカテゴリーの進化と今後の展望
レブロンが愛用するNeuron:ONflyに代表される「ライトウェイトe-MTB」は、自転車業界において急速に成長しているカテゴリーです。
従来のe-MTBとの違い
従来のフルパワーe-MTBは、最大トルク85Nm以上のモーターと600Wh以上の大容量バッテリーを搭載し、どんな急坂でも楽に登れることを売りにしていました。しかし、その代償として総重量は25kg前後と重く、バイクの取り回しや担ぎ上げが困難でした。また、見た目も「モーターとバッテリーを積んでいます」という主張が強く、従来の自転車愛好家からは敬遠されることもありました。
対して、Neuron:ONflyのようなライトウェイトe-MTBは、モーターの最大トルクを55Nm程度に抑える代わりに、総重量を19kg台にまで軽量化しています。これにより、人力バイクに近い軽快なハンドリングと、必要なときにアシストが得られる利便性を両立しています。
スポーツとしてのe-MTBの可能性
レブロン・ジェームズのようなトップアスリートがe-MTBを愛用していることは、このカテゴリーの可能性を示しています。e-MTBは「怠けるための道具」ではなく、「より長く、より遠くまで走るための道具」として再定義されつつあります。
Bosch Performance Line SXモーターが「高回転で漕ぐほどパワーが出る」という特性を持っていることからもわかるように、現代のライトウェイトe-MTBはライダーの積極的なペダリングを前提として設計されています。これは、スポーツとしてのサイクリングの楽しさを損なわずに、電動アシストの恩恵を受けられることを意味しています。
まとめ:自由への投資としてのレブロン×キャニオン
レブロン・ジェームズとCanyon Bicyclesのパートナーシップは、単なる有名人の名前を冠したコラボレーションではありません。それは、「移動の自由」という自転車の根源的な価値を、最先端のテクノロジーと世界最高のアスリートの影響力を使って再定義する試みです。
Neuron:ONflyに見られる「軽量化とパワーの融合」、Grizl:ONが提案する「全天候型の冒険」、そしてティーザーで示唆された「規格外のサイズへの挑戦」。これら全てのプロダクトには、レブロンが幼少期に感じた「自転車に乗れば、どこへでも行ける」という純粋な感動が、現代のエンジニアリングによって増幅されて詰め込まれています。
日本のサイクリストにとっても、これらのバイクは単なる移動手段以上の意味を持つでしょう。それは、日常の喧騒から離れ、自らの力で(そして少しの電気の魔法で)新しい景色を見に行くための、最高の相棒となるはずです。2025年12月のティーザーがどのような形で正式発表されるのか、そしてそれが自転車界の「常識」をどう覆すのか、今後の展開から目が離せません。


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