シマノの新型デュラエース(R9300シリーズ)は、2026年に発表される可能性が高いと予測されています。最大の注目点は、前後ディレイラーがそれぞれ独立したバッテリーを搭載する「完全ワイヤレスDi2」への進化と、13速化の実現です。現行のR9200シリーズが2021年に登場してから約5年が経過し、シマノの製品サイクルやSRAM・カンパニョーロとの競争環境を考慮すると、2025年後半のティーザー発表、2026年春から夏にかけての市場投入というスケジュールが現実的なラインとして見込まれています。
ロードバイク愛好家やレーサーにとって、コンポーネントの進化は走りの質そのものを左右する重要な要素です。世界最大の自転車部品メーカーであるシマノが送り出すフラッグシップモデル「デュラエース」は、半世紀以上にわたりその最前線に立ち続けてきました。本記事では、シマノが出願した特許資料や海外の専門メディアによる分析をもとに、次期デュラエースR9300シリーズの技術的特徴、発表時期の予測、そして市場への影響について詳しく解説します。

シマノ新型デュラエースR9300とは
シマノ新型デュラエースR9300とは、現行のR9200シリーズの後継として開発が進められている次世代フラッグシップコンポーネントです。海外の主要自転車メディアや技術アナリストの予測によると、完全ワイヤレスDi2システムと13速化を採用し、SRAMやカンパニョーロが先行する技術領域においてシマノが回答を示すモデルとなります。
現行R9200シリーズは2021年8月に発表され、セミワイヤレスDi2システムと12速化により、リア58%、フロント45%という劇的な変速スピードの向上を実現しました。しかし、シフターは無線通信であるものの、ディレイラー間は有線バッテリー接続を採用する「セミワイヤレス」方式であったため、SRAMのeTap AXSシステムが実現した「完全ケーブルレス」という点においては一歩譲る形となっていました。
R9300に課せられた使命は、この「ワイヤレス化のジレンマ」を解消することにあります。シマノの哲学である「ストレスフリー」を、配線の物理的な制約からも完全に解放された形で実現することが求められています。
新型デュラエースの発表時期はいつか
新型デュラエースR9300の発表時期は、2025年後半のティーザー公開、2026年の市場投入が最も有力視されています。この予測は、シマノの歴代モデルの発表周期分析に基づいています。
シマノの製品リリースには、長らく「オリンピックサイクル」と呼ばれる4年の周期性が存在していました。7900シリーズが2008年、9000シリーズが2012年、R9100シリーズが2016年と続いた系譜は、プロ選手への供給タイミングと市場のモデルイヤーを同期させるための精密なリズムでした。
しかし、R9200シリーズの発表は2021年8月となり、前作から約5年の歳月を要しました。この遅延は、世界的なパンデミックによるサプライチェーンの崩壊と、創業100周年記念事業との調整という特殊要因が重なった結果と分析されています。
R9300については、R9200の発表から4年半から5年後となる2025年後半から2026年というスケジュールが予測されています。2024年から2025年にかけて公開された特許群(US Patent Application 18/653358等)の内容が具体的かつ製品に近い形状をしていることから、開発はすでに最終段階に近いプロトタイプテストのフェーズに入っていると推測されています。
完全ワイヤレスDi2の技術的特徴
独立電源方式によるフルワイヤレスへの移行
シマノの次世代コンポーネントにおける最大のトピックは、「完全ワイヤレス化」です。複数の特許資料において、前後ディレイラーがそれぞれ独立したバッテリーを搭載し、有線接続を廃したシステムが詳細に記述されています。
現行のセミワイヤレスシステムでは、シートポストやダウンチューブに内蔵された大容量バッテリー(BT-DN300)から、エレクトリックワイヤー(EW-SD300)を介して前後ディレイラーに給電を行っています。この方式のメリットは、大容量バッテリーによる圧倒的な航続距離(約1000km以上)と、ディレイラー自体の小型軽量化でした。しかし、フレーム内部への配線作業は依然としてメカニックの負担であり、近年のフル内蔵ケーブルルーティングを持つエアロロードにおいては組み立ての難易度を上げる要因となっていました。
特許に示された新型システムでは、リアディレイラーおよびフロントディレイラーの本体に、直接バッテリーパックを装着する構造が採用されています。これにより、フレーム内部を通るケーブルは完全に排除され、フレーム設計の自由度が飛躍的に向上します。特に、シートポスト形状の制約(バッテリーを内蔵するための空間確保)がなくなり、より薄く空力特性に優れたシートポストや、調整幅の広いサドル高設定が可能になる点は、フレームメーカーにとっても大きな恩恵となります。
シマノ独自のバッテリーシステム設計
SRAMのeTap/AXSシステムは、前後ディレイラーで共通のバッテリーを使用し、相互に入れ替えが可能であることがユーザービリティ上の大きな利点となっています。シマノの特許図面からは、SRAMの特許を回避しつつ、シマノ独自の最適化を図ったバッテリーシステムの姿が見て取れます。
特許図面では、リアディレイラーのバッテリーはパンタグラフのリンク構造内、あるいはプーリーケージ上部などのデッドスペースを有効活用する形で配置される案が示されています。フロントディレイラーのバッテリーは、本体のリンクメンバー間に挟み込まれるように配置されるなど、空力性能を損なわないための工夫が凝らされています。
注目すべきは、前後で異なる形状のバッテリーを採用する可能性と、それに伴う「緊急時の互換性」に関するアイデアです。一部の特許分析では、フロントディレイラー用の小型バッテリーを、アダプター等を介してリアディレイラーに装着し、「リンプホームモード(帰宅用モード)」として最低限の変速動作を可能にするシステムの記述も確認されています。これが実用化されれば、SRAMのような「完全互換」ではないものの、緊急時の冗長性を確保しつつ、各ディレイラーに最適化された形状と重量配分を実現するという、シマノらしい「性能優先」の設計思想が具現化されることになります。
圧電素子を用いた自己発電型シフターの可能性
ワイヤレス化において、もう一つの電源問題となるのがシフター(STIレバー)側の電力です。現行モデルではコイン電池(CR1632)を使用しており、約1.5年から2年の寿命を持ちますが、電池切れのリスクはゼロではありません。
シマノは、この課題に対する解決策として、シフター内部に「圧電素子(ピエゾ素子)」を組み込む特許を出願しています。この技術は、ライダーがシフトボタンを押し込む際の圧力や、走行中の微細な振動を電気エネルギーに変換し、無線信号の送信電力として利用するものです。
特許資料には、ブレーキレバーの動きや追加の操作部材の動きを利用して発電する機構が詳細に描かれており、技術的な実現可能性は示されています。しかし、プロレースの現場では「絶対的な信頼性」が何よりも優先されます。低温下や激しい振動下での発電効率の安定性を考慮すると、R9300の初期モデルでは、コイン電池を主電源としつつ、圧電素子を補助的な電力ソースとして搭載する可能性が高いと見られています。
13速化によるドライブトレインの進化
なぜ13速が必要なのか
「12速で十分ではないか」という議論が市場に残る中、シマノの特許資料(US 18/653358)には、明確に13枚のスプロケットを持つカセットが描かれています。この特許はリアディレイラーの構造に関するものですが、その実施例として13速カセットが使用されている事実は、シマノが多段化を既定路線として開発を進めていることを示しています。
13速が必要とされる理由は、近年のレースシーンにおける「高速化」と「ワイドレンジ化」の両立にあります。プロトン内の平均速度は年々上昇しており、フロントチェーンリングは54T、56Tといった巨大なものが標準化しつつあります。一方で、超級山岳を含むステージでは、高いケイデンスを維持するために34Tや36Tといった軽いリアギアも不可欠です。
12速環境下で11-34Tのようなワイドレシオカセットを使用すると、中間のギアの歯数差(ステップ)が大きくなり、選手が好む「スイートスポット」のケイデンスを維持しにくい領域が発生します。13枚目のギアを追加することで、使用頻度の高い中間域(16T、17T、18T周辺など)を1歯刻みで密に埋めつつ、トップ側の10Tやロー側の36T以上のギアを無理なく搭載することが可能になります。
Micro Spline Roadフリーボディの導入
13速化、特にトップギアに10Tを採用する場合、従来のHG(Hyperglide)フリーボディや、R9200で採用されたHG-L2フリーボディでは、物理的な径の制約により装着が不可能です。10T以下のコグを使用するには、MTBコンポーネント「XTR M9100」で導入されたMicro Spline(マイクロスプライン)規格のロード版導入が不可欠となります。
Micro Splineは、フリーボディの全長を短縮し、トップ側の小径ギアをフリーボディの外側にはみ出させる構造をとることで10Tを実現しています。スプライン(溝)の数を従来の13本から23本へと大幅に増やすことで、アルミ製フリーボディへの噛み込み(カジリ)を防ぎ、軽量化と耐久性を両立させています。
シマノが次期デュラエースで10Tスタートのカセット(10-28T、10-30T、10-36T等)を導入する場合、ホイールおよびフリーボディの規格変更は避けられません。これは、ユーザーが所有する既存の11速・12速ホイール資産との互換性が失われることを意味します。しかし、SRAMのXDRドライバーやカンパニョーロのN3W規格が既に市場に浸透し、ホイールメーカー各社も多規格対応のハブシステムを確立している現在、シマノだけが旧来の規格に留まる理由は薄れています。
フロントダブルの堅持とシングルの可能性
特許資料には、13速リアディレイラーと共に、新しいワイヤレスフロントディレイラーも描かれていることから、シマノはロードバイクにおいてフロントダブル(2x)を主軸に据える方針を堅持していることが確認できます。
SRAMや一部のグラベルシーンではフロントシングル(1x)が普及していますが、ロードレース、特にグランツールのような長丁場のステージレースにおいては、微細な勾配の変化に対応するための細かいギアステップと、下り坂での高速巡航性能の両方が求められるため、2xシステムの優位性は依然として揺るがないものがあります。
同時に、グラベル(GRX)やタイムトライアル、クリテリウムといった特定の用途に向けて、13速化を活かした「フロントシングル(1x)」のオプションが、デュラエースグレードで正式にサポートされる可能性も否定できません。リアに10-36Tや10-40Tといったカセットを組み合わせれば、1xでも平坦から激坂までをカバーできるギアレンジを確保できるため、空力性能を極限まで追求するTTバイク等での需要は高まると予想されます。
新ハンガーシステムによるフレーム統合
サンドイッチ型ハンガー特許の衝撃
R9300に関する技術的トピックの中で、フレームメーカーやメカニックに最も大きな影響を与えると予想されるのが、新しいディレイラーハンガーシステムです。SRAMは「UDH(Universal Derailleur Hanger)」を普及させ、さらにそれを前提としたフレーム直付けの「T-Type(Transmission)」ディレイラーを発表し、MTB界において「ハンガー調整不要」という革命を起こしました。
これに対し、シマノは独自の「サンドイッチ型ハンガー(Two-pronged hanger)」の特許(US 18/653358)を出願し、対抗策を準備しています。この特許に描かれた構造は、ディレイラーの取り付け部を、フレームのドロップアウトではなく、ハンガー自体の2本の「アーム(prong)」で挟み込む(サンドイッチする)というものです。
SRAMのT-Typeがフレームのドロップアウトそのものを両側から挟み込んで固定する「フレーム直付け」であるのに対し、シマノの案はあくまで「ハンガー」という介在パーツを使用する点で異なります。しかし、このハンガーは従来の片持ち式とは異なり、ディレイラーの取り付け軸を両側から保持するため、劇的な剛性向上が見込まれます。
変速精度とフレーム保護の両立
この新構造の狙いは、13速化に伴い極めて狭くなるギアピッチに対応するための「変速精度の確保」にあります。ギアの枚数が増えれば増えるほど、隣り合うギアの間隔は狭くなり、ディレイラーのわずかなたわみやハンガーの歪みが変速不良(音鳴りやチェーン飛び)に直結します。シマノの新ハンガーは、ディレイラーとハンガーを強固に一体化させることで、電子制御モーターの強力なトルクによる変速動作を、ロスなくチェーンの移動に変換することを可能にします。
また、シマノは伝統的に「ディレイラーハンガーは、転倒時に曲がることでフレームや高価なディレイラーを守る『犠牲部品(ヒューズ)』であるべき」という哲学を持っています。シマノのサンドイッチハンガーは、剛性を高めつつも、致命的な衝撃に対しては適切に破損あるいは変形するよう設計されていると推測されます。これは「剛性」と「安全性」のバランスを取る、シマノらしいエンジニアリングの回答と言えます。
自動衝撃復帰システムの搭載
MTB用コンポーネントのDi2(XT M8250等)やGRX Di2(RX827)で既に実装されているAutomatic Impact Recovery(自動衝撃復帰)機能は、次期デュラエースにも搭載されると予測されています。
これは、ディレイラーが外部から強い衝撃を受けた際に、モーターとパンタグラフの連結を一時的に解除し、ディレイラー全体を内側にスイングさせることで破損を防ぐ機能です。衝撃が去った後、自動的にモーターが再エンゲージし、元の変速位置に復帰します。ロードレースにおいても集団落車や接触は日常的に発生するため、この機能は機材トラブルによるリタイアを防ぎ、レース継続の可能性を高める重要な要素となります。
ブレーキシステムの進化
ブレーキ・バイ・ワイヤ技術の現状
シマノは2021年に、自転車用の電子制御ブレーキシステム(ブレーキ・バイ・ワイヤ)の特許を取得しています。これは、ブレーキレバーとキャリパーの間の油圧ホースを排除し、電気信号でキャリパー内のモーターを駆動してピストンを押し出すという、自動車や航空機では既に一般的な技術を自転車に応用したものです。
もしこれが実現すれば、ハンドル周りから一切のケーブル類が消滅し、完全なケーブルレスバイクが完成します。しかし、2026年のR9300での採用については、慎重な見方が大勢を占めています。その理由は主に「安全性」と「レギュレーション」にあります。電源喪失時やシステムエラー時にブレーキが効かなくなるリスクをどう担保するか、また国際自転車競技連合(UCI)の機材規定において完全電子化が認められるかどうかも不透明です。
したがって、R9300ではブレーキ・バイ・ワイヤの全面採用は見送られる可能性が高いですが、TTバイクや電動アシスト自転車(E-Bike)向けのハイエンドコンポーネントとして部分的に導入される可能性は残されています。
油圧ディスクブレーキのさらなる熟成
現実的な進化として予測されるのは、油圧ディスクブレーキシステムのさらなる熟成です。ロードディスクブレーキの普及に伴い、ユーザーからの不満点として挙げられるのが「パッドとローターの接触音(シュルシュル音)」と「熱ダレ」です。
シマノの特許資料には、ブレーキキャリパーのピストン制御に関する新たな技術が散見されます。特に注目すべきは、パッドクリアランスを自動調整し、ブレーキ解除後にピストンを素早く確実に定位置まで戻す(リトラクション)機構の改良です。現行のR9200ですでにパッドクリアランスは拡大(R9100比で10%増)されましたが、次期モデルではさらに進化し、ピストンシールやリターンスプリングの設計変更により、ダンシング時や熱膨張時でもローターとパッドが接触しない「サイレント・ブレーキング」が追求されると予想されます。
また、MTBのダウンヒル用コンポーネントであるSaintやXTRで培われたアイステクノロジー(Ice Technologies)の進化版が導入されることも予測されています。冷却フィン付きパッドや、放熱性を高めた新型ローターの採用により、長いダウンヒルでの安定性と制動力がさらに向上する見込みです。
SPD-SLRペダル型パワーメーターの登場
クランク計測からペダル計測への転換
R9300シリーズの発表において、注目されているのがシマノ純正のペダル型パワーメーターです。シマノは「SPD-SLR」という商標を登録しており、その区分には「パワーメーター内蔵ペダル」が含まれていることが判明しています。
現行のクランク一体型パワーメーター(FC-R9200-P)は、シマノ初の自社開発パワーメーターとして登場しましたが、左右バランスの計測精度や温度補正に関して、Favero AssiomaやGarmin Rallyといった専業メーカーの製品と比較して厳しい評価を受けることがありました。また、クランク型はユーザーがクランク長を変更したい場合や、複数のバイクで使い回したい場合に不便であるというデメリットもあります。
シマノが計測機能をクランクから切り離し、ペダルに移行するのは合理的な判断です。ペダル型であれば、ユーザーは好みのクランクを使用しつつ、シマノ純正の高精度なパワー計測機能を利用できます。
レーススペックへのこだわり
「SPD-SLR」という名称における「R」は、RacingやRevolutionを意味すると推測され、既存の「SPD-SL」の上位互換、あるいはプロスペックであることを示唆しています。特許情報によれば、ペダル軸内部にセンサーと通信ユニット、バッテリーを集約する構造が検討されています。
この新システムでは、スタックハイト(足裏からペダル軸中心までの距離)を極限まで低く抑え、ダイレクトなペダリングフィールを実現することが最優先されると予想されます。競合他社のペダル型パワーメーターは、センサーやバッテリーを内蔵するためにスタックハイトが高くなったり、Qファクター(左右の足幅)が広がったりする傾向がありますが、シマノはこれを最小限に抑えるための独自技術を投入してくると見られています。
市場環境と競合他社との比較
SRAM RED AXS E1との重量競争
2024年に発表されたSRAMの新型RED AXS E1は、レバーやキャリパーの徹底的な肉抜きにより大幅な軽量化を実現し、現行デュラエースR9200よりも軽量であることをアピールしています。シマノにとって「重量」は常に重要なスペックであり、カタログ数値で競合に劣ることは許されない状況です。
R9300では、完全ワイヤレス化に伴い、各ディレイラーにバッテリーを搭載する必要があるため、システム単体での重量増は避けられない課題です。しかし、フレーム内部のエレクトリックケーブルやジャンクション、内蔵バッテリーが不要になることによる「車体全体での軽量化」を含めれば、トータルでの重量は現行と同等か、それ以下に抑えられる可能性があります。小型化されたディレイラーユニット、チタンやカーボン複合素材の多用、中空技術の進化により、SRAM REDに対抗しうる軽量化が期待されています。
価格動向の予測
自転車部品市場の予測によれば、2025年から2026年にかけて市場は成長基調にあるものの、インフレや原材料費の高騰、関税の影響により、製品価格の上昇トレンドは続くと見られています。
現行のR9200グループセット(パワーメーターなし)が約45万円前後で推移していることを考慮すると、R9300は完全ワイヤレス化と13速化により、55万円から65万円クラスに達する可能性があります。パワーメーター込みでは70万円を超える価格帯に突入することも予想されています。これは、ハイエンドロードバイクの完成車価格が200万円を超える時代の到来を示唆するものですが、ハイエンド層の購買意欲は依然として高く、「最新技術」と「所有欲」が優先される市場においては許容される範囲内と見られています。
新型デュラエースR9300の予測仕様まとめ
2026年に登場が予想される新型シマノ・デュラエース(R9300シリーズ)の仕様について、これまでの分析をもとに整理します。
ドライブトレインについては、前後ディレイラー独立バッテリーによる完全ワイヤレスDi2と、2×13速(10Tスタート)の採用が予測されています。フレーム内部を通るケーブルが完全に排除されることで、フレーム設計の自由度が飛躍的に向上します。
インターフェースについては、Micro Spline Road(仮称)によるフリーボディ規格の刷新が見込まれています。これにより、10Tスタートのカセットが実現可能となりますが、既存の11速・12速ホイール資産との互換性は失われることになります。
フレーム統合については、UDH互換フレームに対応しつつ、剛性を最大化したサンドイッチ型ダイレクトマウントハンガーの採用が予測されています。13速化に伴う狭いギアピッチにも対応できる高い変速精度が期待されます。
コントロールについては、圧電素子技術を視野に入れた省電力ワイヤレスシフターの採用が検討されていると見られています。将来的には充電も電池交換も不要なシフターが実現する可能性があります。
制動システムについては、ブレーキ・バイ・ワイヤは見送られるものの、自動リトラクション機能を備えた次世代油圧ディスクブレーキの搭載が予測されています。パッドクリアランスの自動調整により、接触音の問題が解消される見込みです。
センシングについては、クランク計測からの脱却を図るSPD-SLRペダル型パワーメーターの投入が期待されています。ペダル型に移行することで、ユーザーは好みのクランクを使用しながら高精度なパワー計測が可能になります。
スケジュールについては、2025年後半に公式ティーザー発表、2026年春から夏にかけてデリバリー開始というタイムラインが予測されています。
シマノは、SRAMやカンパニョーロが先行した「ワイヤレス」「多段化」という要素を、単に後追いするのではなく、シマノ独自の厳格な品質基準と「システムエンジニアリング」という哲学を通して再構築しようとしています。R9300は、シマノが再びロードコンポーネントの「絶対王者」としての地位を盤石なものにするためのモデルとなることが期待されています。それは既存のユーザーに規格変更という変化を求めるかもしれませんが、その対価として、かつてない変速性能と、ケーブルから完全に解放された美しいロードバイクの未来を提供するものとなるでしょう。


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