ピナレロ DOGMA X 2026年モデルに、新色「STARRY RED SHINY」と「LUXTER SKY SHINY」が登場しました。これらの新色は、イタリア・トレヴィーゾの職人技術が生み出した高光沢仕上げで、微細なメタリック粒子による煌めきが特徴です。DOGMA Xは、レーシングバイクの性能とエンデュランスロードの快適性を両立した「ハイパーエンデュランス」バイクとして、多くのサイクリストから注目を集めています。本記事では、2026年モデルの新色の魅力から、X-Staysに代表される独自技術、T1100カーボンの特性、そして京都での購入方法まで、DOGMA Xの全貌を詳しく解説します。

ピナレロ DOGMA X 2026年モデルの新色とは
ピナレロ DOGMA X 2026年モデルには、3つの新色が追加されました。「STARRY RED SHINY(スターリーレッド・シャイニー)」「LUXTER SKY SHINY(ルクスター・スカイ・シャイニー)」「BLACK GOLD MATT(ブラックゴールド・マット)」の3色で、それぞれ異なる個性と美しさを持っています。
STARRY RED SHINYの特徴と魅力

STARRY RED SHINY(カラーコード:H120)は、ピナレロのアイデンティティである赤を現代的なラグジュアリースポーツの文脈で再解釈したカラーです。「Starry(星の多い、星のような)」という名称が示す通り、この赤は単一の顔料で塗られたフラットな赤ではありません。高光沢のクリアコート層の下には、極めて微細なメタリック粒子やパール顔料が封入されており、直射日光を受けると深紅の中で粒子が煌めく視覚効果を生み出します。
この塗装の真価は、光の角度が変わった瞬間に発揮されます。順光ではピナレロらしい力強く鮮やかなレーシングレッドとして存在感を放ちますが、日陰や夕暮れ時の斜光線下では、粒子が光を拾うことでワインレッドに近い深みのある陰影を生み出します。DOGMA X特有の複雑な曲面、特にトップチューブからヘッドチューブにかけての流麗なラインや、X-Staysの交差部分の立体感が際立つ効果があります。
色彩心理学において赤は心拍数を上げ闘争本能を刺激する色とされていますが、STARRY REDに含まれる煌めきは高級感と余裕を付加しています。ホワイトのデカールとの組み合わせは、往年の名車を彷彿とさせるクラシックな雰囲気を持ちつつも、決して懐古趣味には陥らないモダンさを兼ね備えています。
LUXTER SKY SHINYの革新的な塗装技術
LUXTER SKY SHINY(カラーコード:H121)に採用されている「Luxter(ルクスター)」とは、ピナレロが近年のDOGMA Fなどのハイエンドモデルで導入を開始した特殊な塗装技術の名称です。これは「Luster(光沢)」と「Luxury(贅沢)」を掛け合わせた造語とも推測され、鏡面のような高い反射率と金属的な質感を併せ持つのが特徴です。
「SKY(空)」と名付けられたこのブルーは、単なる水色や空色とは一線を画します。通常のパステル調のスカイブルーではなく、磨き上げられた金属に青空が映り込んだような硬質で透明感のある輝きを放ちます。見る角度によっては青の彩度が変化し、ハイライト部分はシルバーに近い輝きを見せ、影の部分は深い海のような青へとシフトするカラーシフト効果も期待できます。これはDOGMA Fの「Luxter Blue」などで見られる技術の応用であり、DOGMA Xのエアロダイナミクス形状を視覚的に強調する役割を果たしています。
エンデュランスロードであるDOGMA Xは、都市部を離れて海岸線や山岳地帯の開けたルートを走ることが多いバイクです。LUXTER SKYの色彩は頭上に広がる青空や眼下に広がる海と呼応し、風景の一部として溶け込みながらも人工物としての究極の美を主張します。
BLACK GOLD MATTの静寂なる存在感
2026年の新色トリオの中で唯一のマット仕上げとなるのがBLACK GOLD MATT(カラーコード:H122)です。STARRY REDやLUXTER SKYが光の反射をテーマにしているのに対し、このカラーは光の吸収をテーマにしています。艶消しのブラックはカーボンという素材が持つ本来の質感を強調し、DOGMA Xの筋肉質なフレームワークを彫刻作品のように浮かび上がらせます。
漆黒のフレームに配置されたゴールドのロゴは、決して華美になりすぎず抑制の効いたラグジュアリーを表現しています。黒と金の組み合わせはモータースポーツの最高峰であるF1の伝説的なカラーリングを連想させ、DOGMAというモデルが自転車界のF1マシンであることを無言のうちに語ります。派手な色を好まないが所有するバイクの格には妥協したくないという審美眼の高いライダーに向けた究極の選択肢です。
DOGMA Xの独自技術X-STAYSの仕組み
DOGMA Xのリアビューを決定づけるのが、シートステイとシートチューブの接合部に設けられた「X-Stays」システムです。これはDOGMA Fには存在しないXシリーズ専用のアイコンであり、快適性と剛性という本来トレードオフの関係にある要素を高度に融合させるために開発されました。
従来のエンデュランスバイクでは、振動吸収性を高めるためにシートステイを極端に細くしたりドロップドシートステイを採用したりする手法が一般的でした。しかしDOGMA Xでは、左右のシートステイがシートチューブに接続する直前でX字型に交差するような複雑なトラス構造を採用しています。正確には左右のステイ間に補強ブリッジを設けつつシートチューブへの接合点を上下2箇所に分散させる構造となっています。
応力分散のメカニズム
路面からの突き上げである垂直方向の衝撃は、シートステイを通じてフレームに伝わります。X-Staysはこの衝撃をシートチューブの2つの異なるポイントに分散して伝達することで、特定の箇所への応力集中を防ぎフレーム全体で振動を減衰させます。これによりライダーの脊椎への衝撃がマイルドになり、長時間のライドでも身体への負担が軽減されます。
横剛性確保の技術
エンデュランスロードの課題は、快適性を求めるとリア三角の剛性が落ちペダリング時の反応が悪くなることでした。しかしX-Staysのトラス構造は横方向のねじれに対して極めて高い剛性を発揮します。これによりBB(ボトムブラケット)周辺の剛性を犠牲にすることなく、チェーンステー長を伸ばして35mmタイヤに対応し、かつ快適性を確保するという困難な課題を解決しました。ピナレロはこれを横剛性を維持しながら振動を吸収する技術と定義しています。
ピナレロ・アシンメトリック設計の理論
ピナレロのDNAとも言える左右非対称設計は、DOGMA Xにおいても徹底されています。自転車は構造上、右側にチェーン、チェーンリング、ディレイラーといった駆動系パーツが集中しています。ライダーがペダルを踏み込む際、右側にはチェーンを引っ張る強大な力がかかりますが、左側にはそのような張力は発生しません。この左右の力の不均衡がフレームのねじれを生み、パワーロスを引き起こします。
DOGMA Xのフレームはダウンチューブ、シートチューブ、チェーンステー、さらにはフォークに至るまで左右で異なる形状と積層を持っています。右側のチューブはチェーンの張力に対抗するためにボリュームを持たせて強化され、左側はバランスを取るために最適化されています。これによりライダーが左右均等にペダルを踏んでいるつもりでも発生してしまう微細な出力の偏りをフレーム側で補正し、完璧にシンメトリーなライドフィールを実現します。長距離を走るエンデュランスライドにおいて、この無意識下の補正機能はライダーの疲労蓄積を大幅に軽減する役割を果たします。
Torayca T1100 1K Dream Carbonの特性
DOGMA Xが「DOGMA」の名を冠することを許された最大の理由は、その素材にあります。ピナレロは日本の東レ(Toray)と独占的なパートナーシップを結んでおり、世界最高峰のカーボン繊維を使用する権利を持っています。
2026年のDOGMA Fには新たにTorayca M40Xという超高弾性カーボンが採用されましたが、DOGMA Xはあえて「Torayca T1100 1K」を継続採用しています。これはコストダウンではなく、明確な意図に基づいた選択です。
T1100Gはもともと航空宇宙産業向けに開発された素材であり、圧倒的な引張強度を誇ります。「1K」とは1束あたり1000本のカーボン繊維で織り込まれていることを示し、非常に緻密で美しい織り目を持ちます。
M40XがDOGMA Fに採用された理由は、硬さと軽さに特化しスプリントやアタック時の瞬発力を極限まで高めるためです。カミソリのような鋭さを持つ反面、路面からの衝撃もダイレクトに伝えやすい傾向があります。一方T1100 1Kは強さとしなやかさのバランスに優れています。高い剛性を持ちながらも衝撃に対して粘り強く耐える特性があり、この粘りこそが長時間のライドでライダーの脚を温存し荒れた路面でもバイクを安定させる鍵となります。DOGMA Xにとっては、M40XよりもT1100の方がコンセプトに合致した最良の素材なのです。
ナノアロイ・テクノロジーの恩恵
T1100カーボンを支えるのが東レの「ナノアロイ・テクノロジー」です。これはカーボン繊維を固める樹脂(マトリックス)の技術であり、ポリマーをナノメートル単位で制御することで衝撃を受けた際の微細なクラックの発生を防ぎ、振動減衰性を飛躍的に向上させます。金属フレームのようなへたりがなく、長期間にわたって初期性能を維持できるのもこのナノアロイ技術の恩恵です。DOGMA Xが一生モノのバイクと言われる所以は、この目に見えない分子レベルの技術に支えられています。
DOGMA Xのジオメトリーと人間工学
エンデュランスジオメトリーと聞くと、多くのライダーは初心者向けのアップライトな姿勢を想像するかもしれません。しかしDOGMA Xのそれはコンペティション・エンデュランスと呼ぶべき、より実戦的な設計です。
DOGMA Fと比較してDOGMA Xのジオメトリーは明確な差異を持っています。Stack(スタック)はDOGMA Fよりも約15mm〜20mm高く設定されており、Reach(リーチ)はDOGMA Fよりも数mm短く設定されています。
この数値設定が意味するところは、ライダーの上体が完全に起き上がるわけではなく、呼吸がしやすく首や肩への緊張が解ける程度にリラックスできるが空気抵抗を考慮した前傾姿勢は維持できるという絶妙なポイントです。深い前傾姿勢を強いるDOGMA Fのポジションは柔軟性の高いプロ選手には最適ですが、一般的なホビーライダーが長時間維持すると呼吸が浅くなりパフォーマンスが低下する原因となります。DOGMA Xはポジションを緩和することで、結果的にライダーが持てる出力を長時間維持できるように設計されています。
35mmタイヤクリアランスとハンドリング
DOGMA Xは最大35mm幅のタイヤに対応しています。しかし単にチェーンステーを広げただけではありません。太いタイヤを装着するとタイヤの外径が大きくなりトレイル量(ステアリングの安定性に関わる数値)が変化してしまいます。
ピナレロは35mmタイヤを装着した状態でもDOGMA特有の「オン・ザ・レール」と呼ばれるハンドリングが損なわれないよう、フォークのレイク(オフセット)量やヘッドアングルを緻密に調整しています。これにより35mmタイヤのエアボリュームによる極上の乗り心地と、レーシングバイクの切れ味鋭いコーナリング性能が同居しています。
インテグレーテッド・コンポーネントシステム
DOGMA X 2026年モデルは、フレーム単体での性能だけでなく各パーツが統合されたシステムとして機能します。
TiCRによる完全内装化
ハンドル周りのケーブル類はすべてフレーム内部に完全内装されます。これはTiCR(Total Internal Cable Routing)システムと呼ばれ、空気抵抗の削減に寄与するだけでなくハンドル周りの清掃性を高め、何より美しい外観を実現します。2026年の新色であるSTARRY REDやLUXTER SKYの輝きを無粋なケーブルが遮ることはありません。専用のハンドルバー「MOST Talon Ultra」シリーズを使用することで、コックピット周りの剛性と空力は最高レベルに保たれます。
電動コンポーネントの選択肢
DOGMA Xは電動コンポーネント専用設計です。2026年モデルの完成車やフレーム組みにおいては、Shimano Dura-Ace Di2(R9200)、SRAM RED AXS、Campagnolo Super Record Wirelessといったハイエンドグループセットとの組み合わせが推奨されます。Shimano Dura-Ace Di2は信頼性と変速スピードの頂点に立つコンポーネントであり、SRAM RED AXSは完全ワイヤレスによるクリーンな外観と直感的な操作性が特徴です。Campagnolo Super Record Wirelessはイタリアンブランド同士の官能的な組み合わせとなります。特にLUXTER SKYのようなカラーにはシルバーのアクセントが入ったパーツやブラックアウトされたパーツなど、オーナーのセンスに合わせたコーディネートが映えるでしょう。
京都でDOGMA X 2026年モデルを購入する方法
京都は歴史ある街並みと少し走れば現れる峠道(北山、嵐山など)があり、DOGMA Xの性能を試すには最高のロケーションです。ここでは京都における主要な正規販売店について解説します。
ワイズロード京都店のピナレロルーム
ワイズロード京都店(京都市中京区)は、ピナレロジャパンから認定された「ピナレロルーム」を店内に設置しています。これは単なるコーナー展示ではなくピナレロの世界観を表現した専用スペースであり、DOGMAシリーズを含む最新モデルや限定カラーのフレームが常時展示されています。2026年の新色についても国内で最も早く実車が入荷する店舗の一つとなる可能性が高いです。また、ピナレロ専任のスタッフが在籍しているため、DOGMA Xの詳細な技術説明やDOGMA Fとの乗り味の違いについて的確なアドバイスを受けることができます。
同店では定期的にピナレロの試乗会を開催しており、タイミングが合えばDOGMA Xの試乗車で京都の街を走ることも可能です。また高額なバイクを購入する上で不可欠なフィッティングサービス(BioRacerなど)も充実しており、DOGMA Xのエンデュランスジオメトリーを自分の身体に完全に合わせることができます。
イワイサイクルの老舗技術力
イワイサイクル(京都市下京区)は、京都の自転車文化を支えてきた老舗プロショップです。長年の経験に基づくメカニック技術は非常に高く、DOGMA Xのような内装ケーブルの複雑な組み付けや電動コンポーネントのセッティングにおいて絶対的な安心感があります。売って終わりではなく購入後のメンテナンスや走行会などのコミュニティ活動も活発で、DOGMA Xを通じて豊かなサイクルライフを送りたい方には最適なショップです。
コンズサイクルの地域密着サービス
京都市内に展開するコンズサイクルの中でもスポーツバイクに特化した店舗(蛸薬師店など)では、ピナレロの取り扱いがあります。親しみやすい雰囲気と地域に根差したサービスが特徴で、初めてハイエンドバイクを購入する方でも相談しやすい環境が整っています。在庫状況は流動的ですが、取り寄せや予約注文には柔軟に対応してくれるでしょう。
DOGMA X 2026年モデルの購入時に知っておくべきこと
DOGMA Xのようなハイエンドモデルは世界的な需要に対して生産数が限られています。特に2026年の新色は人気が集中することが予想されるため、早期の予約が推奨されます。春のシーズンインに間に合わせるためには、2025年秋から冬の段階での予約が鍵となります。
価格は税込1,100,000円からとなっており、完成車の場合はコンポーネントの選択によってさらに高額になります。フレームセットのみの購入も可能で、自分好みのパーツで組み上げることもできます。
もし既存のカラーラインナップに満足できない場合は、ピナレロのカスタムオーダーシステム「MyWay」を利用して自分だけのDOGMA Xをデザインすることも可能です。このシステムでは豊富なカラーオプションから選択でき、世界に一台だけのオリジナルバイクを手に入れることができます。
まとめ
2026年モデルのDOGMA Xは、ピナレロが到達した美と速さの極致です。新色のSTARRY RED SHINYは情熱的でありながら知的な煌めきを纏い、LUXTER SKY SHINYは空と一体化するような清冽な美しさを提供します。そしてBLACK GOLD MATTは静かなる威厳を放ちます。これらのカラーは所有者の個性を映し出す鏡であり、ガレージに置かれている姿を見るだけで次の週末のライドへの期待感を高めてくれるでしょう。
機能面においてはX-Staysによる魔法のような振動吸収性とT1100カーボンによる爆発的な加速力が共存しています。これは妥協なきエンデュランスであり、長距離を走るすべてのサイクリストに対するピナレロからの回答です。
もしあなたが単なる移動手段としてではなく人生を豊かにするパートナーとしてロードバイクを探しているのなら、DOGMA X 2026は間違いなくその候補の筆頭に挙がるべき一台です。


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