電動アシスト自転車の24km/h制限を超えると違法?改造の罰則と見分け方

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電動アシスト自転車の違法改造とは、24km/hでアシストが停止する速度リミッターを解除するなど、道路交通法の基準に適合しない状態に改変することを指します。違法改造された電動アシスト自転車は法的に「原動機付自転車」として扱われるため、無免許運転として3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性があります。2024年10月には大阪府警が全国初となる改造部品販売の摘発を行い、社会問題としての深刻さが浮き彫りになりました。

電動アシスト自転車は通勤や通学、日常の買い物など幅広い用途で利用される便利な移動手段として普及が進んでいます。坂道でも楽に走行できることから、高齢者や子育て世代を中心に利用者が急増しています。しかし、その一方でリミッターを解除する違法改造や、そもそも法的基準を満たさない海外製品の販売が問題となっています。この記事では、電動アシスト自転車に関する法的基準の詳細から、なぜ24km/hという速度制限が設けられているのか、違法改造の実態と危険性、そして違反した場合に科される罰則まで、知っておくべき情報を網羅的に解説していきます。

電動アシスト自転車とは何か

電動アシスト自転車とは、走行中にペダルを漕ぐ力を電動モーターが補助する仕組みの自転車のことです。法律上は「駆動補助機付自転車」と呼ばれ、道路交通法施行規則で詳細な基準が定められています。電動アシスト自転車の最も重要な特徴は、搭乗者がペダルを漕がないと走行できない構造になっている点です。モーターはペダルを漕ぐ力を補助するだけであり、ペダルを漕がずにモーターだけで走行することはできません。

電動アシスト自転車は法的に「自転車(軽車両)」に分類されるため、運転免許は不要です。ナンバープレートの取得も必要なく、標識で許可されている場合は歩道の走行も可能となっています。ヘルメットの着用については、2023年4月から全年齢で努力義務化されました。一方、原動機付自転車は排気量50cc以下、電動機の場合は定格出力0.6kW以下のエンジンまたはモーターを搭載した車両であり、運転するには原付免許以上の免許が必要です。ナンバープレートの取得と自賠責保険への加入が義務付けられ、ヘルメットの着用も必須となります。歩道の走行は禁止されており、車道を走行しなければなりません。

電動アシスト自転車の法的基準とアシスト比率

電動アシスト自転車の技術基準は、道路交通法施行規則第1条の3で詳細に規定されています。この規則では、人の力を補うために用いる原動機が特定の基準を満たすこと、そして原動機を用いて人の力を補う機能が円滑に働き、安全な運転の確保に支障が生じるおそれがないことが求められています。

電動アシスト自転車において最も重要な技術基準が「アシスト比率」です。アシスト比率とは、人がペダルを踏む力とモーターによる補助力の比率のことを指します。10km/h未満の速度では、アシスト比率は最大で1対2となっています。つまり、人が1の力でペダルを漕ぐと、モーターが最大で2の力を補助する仕組みです。10km/h以上24km/h未満の速度になると、走行速度が上がるほどアシスト比率が徐々に減少し、1対2から0までの線形逓減となります。そして24km/h以上の速度では、アシスト比率は0となり、モーターによる補助は完全に停止します。

このアシスト比率の規定は2008年12月1日に改正されたもので、それ以前は最大1対1(15km/h以下)でした。改正により低速度での坂道走行がより楽になりました。また、アシスト比率以外にも、搭乗者がペダルを漕がないと走行しない構造であること、24km/hを超えるとアシスト機能が停止すること、改造することが容易でない構造であることといった基準が設けられています。

なぜ24km/hの速度制限が設けられているのか

電動アシスト自転車のアシスト機能が24km/hで停止する理由は、安全性の確保と法的な整合性にあります。一般的な自転車の平均走行速度は15km/h程度とされており、24km/hはそれよりもやや速い速度です。この速度を超えると、電動アシスト自転車は通常の自転車よりも明らかに速く走行することになり、歩行者や他の自転車との速度差が大きくなって事故のリスクが高まります。

24km/hという基準は、原動機付自転車の法定最高速度である30km/hよりも低く設定されています。これにより、電動アシスト自転車が原動機付自転車と同等以上の速度で走行することを防ぎ、免許不要の軽車両としての位置づけを維持しています。日本の電動アシスト自転車の速度規制は世界的に見ても厳しい部類に入ります。日本では24km/hでアシストが停止しますが、欧州連合(EU)では25km/h、アメリカでは連邦法で20mph(約32km/h)、中国では25km/hが基準となっています。日本の規制が比較的厳しい理由としては、歩道と車道が混在する道路環境や狭い道路が多いこと、自転車と歩行者が接触する事故が多い現状などが挙げられます。

電動アシスト自転車の違法改造の種類と実態

電動アシスト自転車の違法改造には複数の種類があります。最も一般的なものがリミッター解除で、24km/hを超えてもアシスト機能が停止しないように改造するものです。インターネット上では改造キットや改造方法が出回っており、比較的容易に改造できてしまう状況があります。速度センサーの改造は、速度を計測するセンサーを改造品に交換することで、実際よりも低い速度と誤認させ、制限速度を超えてもアシストが継続するようにするものです。その他にも、より強力なモーターに交換する高出力モーターへの交換や、10km/h未満で1対2という上限を超えてより強いアシスト力を得られるようにするアシスト比率の変更といった改造が行われています。

2024年10月には、大阪府警が電動自転車の改造部品を販売したとして、商標法違反容疑で会社員の男ら3人を逮捕し、60代男性2人を書類送検しました。電動自転車の改造部品販売を巡る摘発は全国初となりました。摘発された改造部品は、速度を計測しアシスト比率を制御するセンサーでした。正規品は時速24キロを超えるとアシスト機能が停止しますが、改造部品は実際よりも低い速度と誤認するため、制限速度を超えるスピードが出せる仕組みでした。5人はセンサー計約4500個と改造車112台を販売しており、中には時速50キロで走行できる改造自転車もありました。

また、2023年1月には京都府警察本部が自転車販売会社を摘発しています。この会社はリミッターを解除した電動自転車を、時速45kmほどまで出ることもあり基準を大幅に超えていたにもかかわらず、海外から仕入れた製品を「電動アシスト自転車」としてインターネットで広告表示をし、販売を続けていました。

違法改造された電動アシスト自転車の危険性

違法改造された電動アシスト自転車には重大な危険性があります。まず制御不能のリスクとして、アシスト比率が法定基準を超えていると、基準を超えたアシスト力が不意に加わることにより、バランスを崩すなどの危険が生じます。特に低速走行時や発進時に急激な加速が起こり、事故につながる可能性があります。

制動距離の延長も深刻な問題です。高速で走行できるようになると、ブレーキをかけてから停止するまでの距離が長くなります。通常の自転車用ブレーキは24km/h程度までの走行を想定して設計されているため、それ以上の速度では十分な制動力が得られない可能性があります。

事故との関連についても注目すべきデータがあります。大阪府内では2019年から2023年の5年間で、自転車事故のうち電動自転車を巡る事故の割合が約5倍に高まっています。警察はスピードを出すための改造部品が事故増加の一因とみています。

保険適用外となるリスクも見逃せません。リミッター解除された車両は保険適用外となる場合がほとんどです。たとえ自転車保険に加入していても、改造による基準外使用では保険金が支払われない可能性があり、事故を起こした場合には膨大な賠償金を自己負担しなければならなくなります。

ペダル付き電動バイク(モペット)とは何か

ペダル付き電動バイクは、原動機のみを用いて走行させることができ、ペダルを用いて走行させることもできる車両です。「モペット」「フル電動自転車」などの名称で販売されていますが、法的には原動機付自転車以上の車両に該当します。電動アシスト自転車との最大の違いは、モペットはペダルを漕がなくてもモーターだけで走行できる点です。見た目は自転車に似ていても、法的には原動機付自転車として扱われます。

モペットを公道で走行させるためには、原付免許以上の運転免許の取得、市区町村での原動機付自転車としてのナンバープレートの取得、自動車損害賠償責任保険への加入が必要です。また、道路運送車両法に定められている保安基準に適合した装備として、制動装置(前後輪)、前照灯、制動灯、尾灯、番号灯、後写鏡、方向指示器、警音器などが求められます。ヘルメットの着用も義務付けられています。

2024年3月5日に閣議決定された道路交通法改正案では、ペダル付き原動機付き自転車「モペット」が原付きバイクの運転に当たることが明記されました。重要なのは、エンジンやモーターを止めてペダルのみで走行した場合も原付きバイクの運転に該当するという点です。モペットを電源オフの状態でペダルだけで漕いでいても、無免許運転となる可能性があります。

違法改造・基準不適合車両を運転した場合の罰則

道路交通法の基準に適合しない電動アシスト自転車は、法的には「原動機付自転車」に該当します。そのため、運転免許を持たずにこれらの車両を運転すると、無免許運転として処罰されます。無免許運転の罰則は3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。これは非常に重い罰則であり、前科がつく可能性もあります。

原動機付自転車に該当する車両を運転する場合、自動車損害賠償責任保険への加入が義務付けられています。自賠責保険に加入せずに運転した場合の罰則は1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。また、自賠責保険未加入は違反点数6点となり、免許停止処分の対象にもなります。

原動機付自転車として公道を走行するためには、道路運送車両法に定められた保安基準を満たす必要があります。保安基準に適合しない車両を運転した場合の罰則は3月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金です。

実際の有罪判決例として、2022年には違法な電動アシスト自転車であることを認識した上で歩道を走行し、別の自転車に衝突して相手に怪我を負わせ、さらに逃走したケースで、運転者に懲役2年6月(執行猶予4年)の判決が下されています。

2024年の道路交通法改正による自転車への罰則強化

2024年の道路交通法改正により、自転車に対する罰則が強化されました。16歳以上の自転車運転者に対して交通反則通告制度(青切符)が導入され、危険な運転行為に対する取り締まりが厳格化されています。スマートフォンを使用したながら運転は6か月以下の懲役または10万円以下の罰金、酒気帯び運転は3年以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。

これらの罰則は通常の電動アシスト自転車にも適用されますが、違法改造車両の場合は上記に加えて無免許運転などの罰則も適用される可能性があります。

電動アシスト自転車による事故の統計と現状

電動アシスト自転車が絡む事故は年々増加しており、深刻な社会問題となっています。警察庁の統計によると、電動アシスト自転車が絡んだ2023年の事故件数は5712件で、記録が残る2004年以降で過去最多を記録しました。この数字は2014年から10年連続で最多を更新し続けています。2024年についても、10月末までの時点で4951件に達しており、2023年を上回るペースで推移しています。電動アシスト自転車による事故件数は2014年には1319件でしたが、2020年には2642件に倍増しました。自転車全体の事故が減少傾向にある中、電動アシスト自転車の事故だけが増え続けている状況です。

2023年の事故件数5712件を都道府県別で見ると、大阪府が最多の1813件となっています。これは2019年の326件と比較すると約5.6倍に急増しており、深刻な状況です。次いで東京都が847件、神奈川県が822件、千葉県が526件、兵庫県が438件と続いています。

事故の特徴として、死傷者の属性では高齢者(65歳以上)と女性が多くを占めています。電動アシスト自転車は坂道でも楽に走行できるため、高齢者や体力に自信のない方にも利用が広がっていますが、その分事故のリスクも高まっています。事故の場所としては「交差点」での事故が多くを占めていますが、電動アシスト自転車では「歩道」での事故が2割を超えているという特徴があります。また、原動機付自転車と比較すると、「信号無視」や「一時不停止」など基本的な交通ルールが守られていないケースが多いとされています。

2023年に自転車に乗って事故で死亡した利用者は346人で、前年より7人増加しました。死亡者のうち約半数の174人が頭部を損傷しており、そのうち9割超がヘルメットを着用していませんでした。

型式認定制度と安全な電動アシスト自転車の選び方

電動アシスト自転車を購入する際に最も重要なのは、「型式認定TSマーク」が表示されているかどうかを確認することです。型式認定TSマークは、道路交通法等に規定されている基準に適合した電動アシスト自転車として国家公安委員会から認定を受けたものに貼付できるマークです。このマークがある製品を選べば、法的基準を満たしていることが保証されます。

型式認定制度は、駆動補助機付自転車が道路交通法令の規定に定められた基準に適合していることを明らかにすることによって、利用者の便宜を図るとともに、交通安全対策の推進が図られるようにするための制度です。型式認定を受けることは任意であり法律で義務付けられているわけではありませんが、警察では型式認定を受けた製品の利用を推奨しています。型式認定の審査では、アシスト比率等の原動機の基準を満たしていること、アシスト機能が円滑に働くこと、安全な運転の確保に支障が生じるおそれがないこと、円滑に停止させる機能を有することなどが確認されます。

型式認定TSマーク以外にも、BAAマーク(自転車協会認証)やSGマーク(製品安全協会)といった安全基準マークがあります。BAAマークは一般社団法人自転車協会が定めた安全基準に適合していることを示し、SGマークは一般財団法人製品安全協会が定めた安全基準に適合していることを示します。

ECサイトや個人売買での購入時は特に注意が必要です。インターネット上では、法的基準を満たさない海外製品が「電動アシスト自転車」として販売されているケースがあります。国民生活センターの調査では、「電動アシスト自転車」として販売されていた製品のうち、道路交通法の基準に適合しないものが複数確認されています。購入時には、型式認定番号が明記されているか、日本の正規代理店が販売しているか、製品仕様にアシスト比率や速度制限が明記されているか、改造を促すような広告文や付属品がないかを確認することが大切です。

中古の電動アシスト自転車を購入する場合は、前の所有者が改造を施している可能性があるためさらに注意が必要です。型式認定TSマークが貼付されているか、改造された形跡がないか、バッテリーやモーターが純正品か、購入先が信頼できる販売店かを確認してください。

消費者庁・国民生活センター・警察庁からの注意喚起

消費者庁は、「電動アシスト自転車と称し販売された製品でも、道路交通法の基準に適合しない場合は道路の通行をやめましょう」という注意喚起を行っています。道路交通法の基準に適合しない電動アシスト自転車で道路を通行すると法令違反となり、運転者が罰則の対象となることが示されています。

国民生活センターは2023年10月に、道路交通法の基準に適合しない電動アシスト自転車に関する報告書を公表しました。インターネット通販で「電動アシスト自転車」として販売されていた製品を購入してテストした結果、アシスト比率が基準を超えている、24km/h以上でもアシストが継続する、ペダルを漕がなくてもモーターだけで走行できるといった問題が複数の製品で確認されました。これらの製品は法的には電動アシスト自転車ではなく原動機付自転車に該当するため、道路を走行すると無免許運転などの法令違反になります。

警察庁は、道路交通法の基準に適合しない「電動アシスト自転車」について、「道交法上の自転車ではなく原動機付自転車等に該当する」と明言しています。これらの製品で公道を走行した場合は無免許運転などの法令違反となり、取締りの対象になると注意喚起しています。

違法改造車両を見分けるポイント

違法改造された電動アシスト自転車を外観で見分けることは難しい場合がありますが、いくつかの特徴に注意することで見分けられる場合があります。外観では、通常よりも大型のモーターが搭載されている、バッテリーの容量が異常に大きい、速度計やディスプレイが改造されている、純正品以外の部品が使用されている形跡があるといった特徴がある場合は注意が必要です。

走行時には、24km/h以上でもアシストが効いている感覚がある、発進時に非常に強いアシスト力を感じる、ペダルを軽く漕ぐだけで高速に達する、通常の自転車では考えられないような加速をするといった特徴があれば違法改造の可能性があります。

正規品かどうかを確認するためには、取扱説明書(日本語で記載されているか、アシスト比率等の記載があるか)、保証書(正規メーカーや販売店のものか)、型式認定証(型式認定番号が記載されているか)を確認することが重要です。

電動アシスト自転車を安全に利用するために

電動アシスト自転車を安全に利用するためには、いくつかの点に注意する必要があります。購入時は型式認定TSマークが表示されている製品を選ぶことが最も確実です。インターネット通販や個人売買では仕様を詳細に確認し、改造を促すような製品や業者には近づかないようにしましょう。中古品購入時は改造されていないかよく確認し、すでに所有している製品についても基準適合の有無を確認することが大切です。

交通ルールの遵守も重要です。電動アシスト自転車は免許不要で乗れるため、自動車やバイクのような交通教育を受ける機会がありません。信号無視や一時不停止など基本的なルールを確実に守り、歩道を走行する際は歩行者に十分配慮することが求められます。ヘルメットの着用は努力義務ですが、万が一の事故に備えて着用することを強くお勧めします。

電動アシスト自転車は正しく使用すれば非常に便利で環境にやさしい移動手段です。しかし、違法改造や基準不適合の製品を使用することは、自分自身だけでなく周囲の人々にも危険を及ぼす行為です。法律を守り、安全な製品を選んで、正しく利用することが大切です。

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