シマノ GRX RX717 Di2 1×12完全ガイド|完全ワイヤレス化の全貌を解説

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シマノ GRX RX717 Di2 1×12は、2025年12月16日に発表された完全ワイヤレス電子変速システムを搭載したグラベルバイク向けコンポーネントです。従来の有線Di2システムとは異なり、リアディレイラー内にバッテリーを搭載することで配線を一切不要とし、105 Di2グレード相当の価格帯で提供されます。10-51Tという超ワイドレンジカセットに対応しながら、MTB譲りの堅牢な設計と高い変速性能を両立しており、グラベルライドの可能性を大きく広げる革新的な製品として注目を集めています。

シマノはこれまでDura-Ace 7970の登場以来、Di2システムにおいて有線接続による信頼性を重視してきました。しかし近年のグラベルバイク設計の変化に伴い、複雑なケーブルルーティングがユーザーとメカニックの負担となっていた現実があります。競合であるSRAMがAXSエコシステムで完全ワイヤレスの簡便さを武器にシェアを拡大する中、シマノもついにグラベル分野で完全ワイヤレス化に踏み切りました。本記事では、RX717の技術仕様から実際のライディング体験まで、このコンポーネントの魅力を詳しく解説していきます。

Shimano releases 'affordable' 1x 12-speed GRX Di2 components
The new RX717 range includes a right-side dual control lever, two left-side brake-only lever options and a rear deraille...

シマノ GRX RX717 Di2 1×12とは

シマノ GRX RX717 Di2 1×12は、グラベルバイク専用に開発された完全ワイヤレス電子変速コンポーネントシリーズのことです。従来のDi2システムがシートポスト内のバッテリーから各ディレイラーへケーブルで電力を供給していたのに対し、RX717ではリアディレイラー自体にバッテリーを内蔵し、シフターとの通信を完全に無線化しています。

このアーキテクチャの採用により、フレームのジオメトリやケーブルルーティングの制約を受けることなくインストールが可能となりました。特に昨今のグラベルバイクで標準化しつつあるフル内装ケーブルシステムや、サスペンションフォーク、ドロッパーシートポストを採用したフレームであっても、一切の加工なしに取り付けできる点が大きな特徴です。シマノがマウンテンバイクコンポーネントで培った堅牢性と、ロードコンポーネントの洗練された操作性を融合させた、まさにグラベルライドに最適化された製品と言えます。

完全ワイヤレスシステムの仕組み

RX717システムの核心は、分散型電源管理と完全ワイヤレスプロトコルにあります。右側のシフトレバーであるST-RX715-Rは独立した電源としてCR1632コイン電池を2枚使用し、操作信号を暗号化された無線プロトコルで送信します。リアディレイラーのRD-RX717は受信機、モータードライバー、および充電式バッテリーパックを一体化しており、外部からの物理的な接続は一切ありません。

この設計思想は「United in Gravel」という理念のもと、多様なライダーとバイクビルダーの利便性を最優先に考えられています。ボトムブラケットを外してジャンクションボックスを設置したり、細いケーブルをフレーム内に通すための専用工具と格闘したりする必要は一切なくなりました。ディレイラーとレバーをボルトで固定し、ブレーキホースを通すだけで基本的な組み付けが完了するため、ホームメカニックでも容易に作業を進められます。

E-Tube Projectアプリとの連携機能

ハードウェアのワイヤレス化に伴い、ソフトウェアの役割も重要性を増しています。RX717はシマノの「E-Tube Project Cyclist」アプリとネイティブに連携し、Bluetooth LEおよびANT+プロトコルを介してスマートフォンやサイクルコンピューターとシームレスに接続されます。

変速スピードの調整機能では、ユーザーがアプリを介してディレイラーの動作速度を「Very Slow」から「Very Fast」まで段階的に調整できます。グラベルレースのような瞬時の変速が求められるシーンでは最速設定を、バッテリー消費を抑えたいロングツーリングでは標準設定を選ぶといった運用が可能です。

ボタン機能のカスタマイズ機能も注目すべきポイントです。ST-RX715レバーにはブレーキレバー背面の変速スイッチに加え、ブラケット上部に「第3のボタン(フードボタン)」が存在します。このボタンには変速操作だけでなく、ANT+対応ライトのオンオフやサイクルコンピューターのページ送り機能を割り当てることができます。荒れた路面でハンドルから手を離さずにサイクルコンピューターを操作できる機能は、安全性の観点からも極めて有効です。

ファームウェアアップデートも大きく進化しました。従来の有線接続ユニットを必要とせず、スマートフォン経由でリアディレイラーやレバーのファームウェアを更新できるため、将来的な機能追加やバグ修正が容易に行えるようになっています。

リアディレイラー RD-RX717-SGSの技術仕様

RD-RX717-SGS(ロングケージ)の設計思想は、ロードバイクというよりもマウンテンバイクコンポーネントであるDEOREやXTの系譜にあります。外観上の特徴として採用されているのが、シマノ独自の「Shadow RD+」デザインです。これはディレイラー本体をカセットスプロケットの下方かつ内側に配置する薄型設計であり、岩や木の根、あるいは落車時の地面との接触リスクを物理的に低減させています。

さらにディレイラーの外面には交換可能な「スキッドプレート」が装備されています。これは高価なディレイラー本体やモーターユニットを保護するためのバンパーの役割を果たし、激しいグラベルライドにおいて避けられない擦過傷や衝撃からコンポーネントを守ります。

重量は約494gと発表されており、上位モデルやSRAM Rival XPLR(約327g)と比較すると明らかに重量増が見られます。約170gの差は、軽量化よりも耐久性と保護機能を優先した結果であると分析できます。週末のグラベルライドやアドベンチャーツーリングにおいて、多少の重量増よりも壊れにくさを重視するライダーにとっては、むしろ安心材料となるでしょう。

バッテリーシステムと航続距離の実力

RX717のリアディレイラーには専用の小型着脱式バッテリーが搭載されます。このバッテリーはRX827やMTB用Di2ディレイラーと共通の規格を採用しており、エコシステム内での互換性が確保されています。

航続距離についてシマノの公称値では、1回の充電で700kmから1,000kmの走行が可能とされています。これは従来のシートポストバッテリー型の約2,000km以上と比較すると短く感じられますが、実用上は十分な距離です。バッテリーがリアディレイラーに直接配置されているため、予備バッテリーをサドルバッグに携帯しライド中に交換することが極めて容易という利点もあります。

充電プロセスも柔軟に設計されています。充電ポートはディレイラー本体に備わっており、バッテリーを取り外さずに充電することも可能ですが、バッテリー単体を取り外して室内で充電することもできます。電源のない駐輪場にバイクを保管するユーザーにとっては大きなメリットとなるでしょう。

オートマティック・インパクト・リカバリー機能

RX717における最も注目すべきテクノロジーの一つが「オートマティック・インパクト・リカバリー」機能です。これはディレイラーが外部から強い衝撃を受けた際、モーターとケージの接続を電気的に一時解除する革新的な仕組みです。

衝撃を受けた瞬間にモーターは「フリー」の状態となり、ディレイラー全体が内側に動くことで衝撃を逃がします。これにより繊細なモーターギアやディレイラーハンガーの破損を防ぐことができます。衝撃が去った後はシステムが自動的にリセット動作を行い、正確なインデックス位置へと復帰します。

ライダーは自転車を降りてディレイラーを確認したり、ハンガーを曲げ直したりする必要なく、そのまま走りを継続できるのです。この機能はトラブルが命取りとなる長距離のグラベルレースや、補給の限られるアドベンチャーライドにおいて計り知れない安心感を提供します。

チェーンスタビライザーと1x専用設計

RD-RX717はフロントシングル(1x)専用設計であり、最大スプロケット51Tに対応します。10-51Tカセットという広大なギアレンジを制御するために、強力なチェーンスタビライザー(クラッチ機構)が搭載されています。

シマノのShadow RD+スタビライザーは、チェーンの暴れを抑制し荒れた路面でのチェーン脱落を防止するだけでなく、チェーンがステーを叩く音を低減して静粛なライドを実現します。RX717にはこのスタビライザーのオンオフスイッチが備わっており、ホイール着脱時にはオフにすることでテンションを解除し作業性を向上させることができます。

電子制御モーターのトルクと物理的なクラッチ機構の融合により、泥詰まりや激しい振動の中でも確実な変速動作を保証しています。フロントシングル特有の「ギアが足りない」という問題を、10-51Tの超ワイドレンジで根本的に解決している点も高く評価できます。

デュアルコントロールレバー ST-RX715-Rの特徴

右側のシフトレバーであるST-RX715-Rは、GRXシリーズで好評を博しているエルゴノミクスを踏襲しています。ブラケット形状はグラベルライド特有のニーズに応えるため、ブラケットヘッド(先端部分)が高く設計されています。これにより激しいブレーキング時や急な下り坂において、手が前方に滑り落ちるのを物理的に防ぎます。ブラケット表面にはリブ加工が施されたゴムカバーが採用され、泥や汗で濡れたグローブでも確実なグリップ力を発揮します。

ブレーキレバー軸の最適化も特筆すべきポイントです。ロード用レバーと比較してブレーキレバーのピボット(支点)位置が高めに設定されており、ブラケットポジション(上ハン)からブレーキを握り込んだ際にてこの原理がより効率的に働きます。少ない力で強力な制動力を得ることができるため、長時間のグラベルライドでも手の疲労を軽減できます。

電源システムには入手性の高いコイン型リチウム電池「CR1632」を2枚使用します。シマノはこのデュアルバッテリー構成により、約3.5年から4年という極めて長いバッテリー寿命を実現しています。SRAMのシフターが約2年であることを考慮すると、ユーザーは電池交換の煩わしさからほぼ解放されると言えるでしょう。

リーチアジャスト機能も備わっており、レバー基部のボルトを調整することでハンドルバーからレバーまでの距離を約16mmの範囲で無段階に調整可能です。手の小さいライダーでも指が確実にレバーにかかる位置にセッティングできます。

ブレーキ専用レバー BL-RS717-Lについて

RX717はフロントシングル専用コンポーネントであるため、左側のレバーには変速機構が必要ありません。シマノはここにコストダウンと軽量化の工夫を凝らしました。左レバーとして用意される「BL-RS717-L」は、変速スイッチや電子部品を一切排除した純粋な油圧ブレーキレバーです。

電子部品がないため重量は約188gと非常に軽量に仕上がっており、右レバーの約212gと比較しても軽量です。ブレーキレバーのロゴには「GRX」と記されたモデルと汎用的な「Shimano」ロゴのモデルの2種類が用意されており、Dura-AceやUltegraの右レバーと組み合わせて1x仕様のロードバイクを組む際など、GRX以外のコンポと混ぜても違和感がないように配慮されています。

注意点として、この左ブレーキレバーにはDi2ポートが存在しないため、左側でのサテライトスイッチ(スプリンタースイッチ等)の増設はできません。拡張性を求める場合は上位グレードのシフト機能付き左レバーを導入する必要がありますが、RX717のコンセプトはあくまで「シンプルかつ手頃」である点を理解しておく必要があります。

特徴ST-RX715-R(右)BL-RS717-L(左)
機能油圧ブレーキ+12速ワイヤレスシフト油圧ブレーキのみ
電源CR1632×2不要
重量約212g約188g
Di2ボタン数3(メイン×2、フード×1)0
推奨用途1×12 リア変速操作フロントブレーキ操作

サーボウェーブ・アクションによるブレーキ性能

RX717のブレーキシステムには、シマノが誇る「サーボウェーブ」テクノロジーが搭載されています。これはブレーキレバーを引く初期段階ではパッドが素早くローターに接触し、接触後はレバー比が変化して強力な制動力と繊細なコントロール性を発揮する機構です。

グラベルロードでは舗装路と未舗装路が入り混じり、タイヤのグリップ限界も常に変化します。サーボウェーブ機構はロック寸前の微妙なブレーキコントロール(モジュレーション)を容易にし、ライダーに自信を与えます。急な下りや滑りやすい路面でも、思い通りのスピードコントロールが可能となるのです。

キャリパーはフラットマウント規格を採用しており、RX717シリーズとして推奨されるのはBR-RX410やBR-RX820ですが、既存のロード用キャリパーとの互換性もあります。ローターには放熱性に優れた「アイステクノロジー」を採用したRT-CLシリーズの使用が推奨されており、ステンレスとアルミの積層構造により長い下り坂でのブレーキ熱だれ(フェード現象)を抑制し安定した制動力を維持します。

マイクロスプラインフリーボディへの移行

RX717の導入に際して最も注意が必要な点がカセットスプロケットの規格です。RD-RX717は10-51Tという超ワイドレシオに対応するために最小ギアに10Tを採用しています。従来のシマノHGフリーボディでは11Tが最小限界であったため、RX717を使用するにはホイール(フリーボディ)を「マイクロスプライン」規格に変更する必要があります。

これはRX717が実質的にMTBコンポーネントのエコシステムに統合されたことを意味します。ユーザーは以下のMTB用12速カセットを使用することになります。XTグレードのCS-M8100は軽量なアルミ製スパイダーアームを採用し、重量と耐久性のバランスに優れています。SLXグレードのCS-M7100はコストパフォーマンスに優れる中級グレードとして人気があります。DeoreグレードのCS-M6100は全てスチール製の歯で構成され、重量はあるものの圧倒的な耐久性と低価格を実現しています。

すでにマイクロスプライン対応ホイールを持っているMTBライダーにとっては、ホイールを共用できるというメリットもあります。一方で既存のロードホイールを使い続けたいユーザーにとってはフリーボディの交換または新規ホイールの購入が必要となる点は、導入時のコストとして考慮すべきでしょう。

ハイパーグライドプラスチェーンの採用

チェーンには12速専用の「ハイパーグライドプラス」チェーンが採用されます。このチェーンはインナープレートの先端が延長された特殊形状をしており、スプロケットの歯とチェーンの噛み合いを強固に保持します。

これによりトルクがかかった状態、つまり登坂中などでもペダリングを緩めることなくスムーズかつショックの少ない変速が可能となります。この「踏みながら変速できる」性能は、急激な勾配変化が現れるグラベルライドにおいて失速を防ぐための強力な武器となります。急な登りでペダルを踏み込んだままシフトダウンを行っても、チェーンが暴れることなく吸い込まれるように次のギアへと移動するのです。

SRAM Rival XPLR AXSとの比較

RX717の直接的なライバルはSRAMのRival XPLR AXSです。両者は共に「エントリーグレードのワイヤレス1×12」という同じ土俵で競合しています。

ギアレンジにおいてはシマノに明確な優位性があります。RX717は純正状態で10-51T(ギア比範囲510%)に対応するのに対し、SRAM Rival XPLRの12速版は純正状態では最大10-44T(440%)となっています。50T以上のコグを使いたい場合はMTB用のEagleディレイラーを組み合わせる「マレット仕様」にする必要があり、コストと複雑さが増します。シマノはグラベル専用コンポーネントとしてパッケージングされた製品の中で、追加の工夫なしにMTB並みのギア比を提供できる点で優位に立っています。

重量面ではSRAMに分があります。リアディレイラー単体で見るとSRAM Rival XPLRの約327gに対しシマノRD-RX717は約494gと大幅に重くなっています。この差はシマノが採用した金属多用の堅牢構造とスキッドプレート等の保護機構によるものです。

価格については海外市場価格においてRD-RX717は約435ドル(約380ユーロ)とされており、SRAM Rival XPLRの実勢価格(約330ドル前後)よりも高価な設定となっています。しかしシマノのレバーやブレーキキャリパーを含めたトータルコスト、および消耗品(ブレーキパッド、チェーン等)の入手性と価格を考慮すると、長期的なランニングコストはシマノに分がある可能性があります。

比較項目シマノ GRX RX717 Di2SRAM Rival XPLR AXS
通信方式完全ワイヤレス(独自プロトコル)完全ワイヤレス(AXS)
最大スプロケット51T(10-51T)44T(10-44T)
フリーボディマイクロスプラインXDR
RD重量約494g約327g
バッテリー寿命(RD)約1,000km約60時間(約1,200km相当)
シフター電池寿命3.5〜4年(CR1632×2)約2年(CR2032×1)
衝撃保護機能オートマティック・インパクト・リカバリー過負荷時にクラッチが滑る機構あり

操作ロジックの違いについて

SRAMのeTapロジック(右レバーでシフトアップ、左レバーでシフトダウン)は直感的で評価が高いですが、シマノのRX717は右レバーのみでシフトアップ・ダウンの双方を行います。これにより左手はブレーキングやドロッパーポスト操作、あるいは補給食を食べるために完全にフリーにできるというメリットがあります。

E-Tubeアプリを使えばボタンの機能を自由に入れ替えることも可能であり、自分の好みに合わせた操作体系を構築できます。どちらが優れているかは個人の好みによりますが、選択肢があることはユーザーにとってプラスです。

ペアリングと調整の容易さ

システム間のペアリングはリアディレイラーのファンクションボタンとシフターのボタン操作のみで完了します。変速調整も物理的なリミットネジの調整に加え、アプリ上またはレバー操作によるマイクロアジャスト機能を使って電子的に追い込むことができます。

SRAMのAXSシステムが評価されてきた「セットアップの容易さ」に、シマノもようやく追いついたと言えます。これまでシマノDi2のセットアップには専用の知識と工具が必要でしたが、RX717ではホームメカニックでも直感的に作業を進められるようになりました。

実際のライディング体験

RX717の変速フィーリングは、機械式のような「ガチャン」という重厚感ではなく、電子制御特有の「スッ、スッ」という正確無比な動作です。特にトルクがかかった状態での変速においてハイパーグライドプラスの恩恵は顕著です。

急な登りでペダルを踏み込んだままシフトダウンを行っても、チェーンが暴れることなく吸い込まれるように次のギアへと移動します。この信頼性は疲労が蓄積したライド後半において、ミスシフトによるストレスや脚へのダメージを大幅に軽減します。

Shadow RD+によるロープロファイル設計は、狭いシングルトラックを走る際にその真価を発揮します。岩や切り株の横をすり抜ける際にディレイラーが障害物にヒットするリスクが低く、万が一ヒットしてもスキッドプレートが本体を守ってくれます。

メンテナンスフリー性能

CR1632電池による4年間のシフター寿命は、実質的に「メンテナンスフリー」と呼べるレベルです。週末のライド前に充電を気にする必要はリアディレイラーのバッテリーのみとなり、電池残量の心配から解放されます。

リアディレイラーのバッテリーも1回の充電で1,000km走行可能であり、週末に100kmのグラベルライドを楽しむユーザーであれば、月に1回程度の充電で十分です。バッテリー残量はアプリで簡単に確認できるため、ライド前にチェックする習慣をつければ充電切れの心配はほぼありません。

RX717が向いているライダー

シマノ GRX RX717 Di2 1×12は、これからグラベルバイクを組むユーザーや機械式コンポからのアップグレードを検討しているライダーにとって最も手堅く、かつ将来性のある選択肢となります。

特に以下のようなライダーにおすすめです。まず、シンプルな1xシステムで幅広いギアレンジを求める方です。10-51Tのレンジがあれば、激坂の登坂(ギア比1未満)から高速ダウンヒルまで、フロントシングル特有の「ギアが足りない」問題をほぼ解決できます。次に、電子変速の快適さを手頃な価格で体験したい方です。105 Di2グレード相当の価格帯でありながら、上位モデルと同等の変速性能を享受できます。そして、メンテナンスの手間を最小限にしたい方にも最適です。完全ワイヤレス化によりケーブルトラブルから解放され、長寿命バッテリーにより電池交換の頻度も極めて低くなっています。

導入時の注意点

RX717の導入にあたっては、いくつかの点に注意が必要です。最も重要なのはホイールのフリーボディ規格です。マイクロスプライン対応のフリーボディが必要となるため、現在使用しているホイールがこの規格に対応しているか、または交換可能かを事前に確認しておく必要があります。

また重量面では競合のSRAM Rival XPLRよりも重くなっています。軽量性を最重視するレースシーンでは不利になる可能性がありますが、堅牢性と信頼性を重視するアドベンチャーライドでは重量増は大きなデメリットとはならないでしょう。

価格面でもSRAMより高価な設定となっていますが、シマノパーツの入手性の高さと、消耗品の価格を考慮した長期的なランニングコストでは有利になる可能性があります。

グラベルコンポーネントの未来

シマノ GRX RX717 Di2 1×12の登場は、単なる新製品の発表にとどまらず、シマノがグラベル市場における完全ワイヤレス化という大きなトレンドに本格参入したことを意味します。これまで有線接続による信頼性を絶対的な哲学として掲げてきたシマノが、ユーザーの利便性と現代のバイク設計の現実に寄り添った判断を下したことは、今後の製品展開にも大きな影響を与えるでしょう。

上位モデルのRX827と合わせて、グラベルバイクユーザーは自分の予算と用途に合わせて最適なコンポーネントを選択できるようになりました。MTBエコシステムとの互換性により、一台のバイクでロードからグラベル、さらにはMTBまでカバーする柔軟な運用も可能となっています。

シマノの変速のスムーズさと圧倒的な耐久性という強みを活かしたワイヤレスコンポの登場により、グラベルライドはよりシンプルに、よりタフに、そしてより多くの人々が楽しめるものへと進化していくでしょう。RX717はその進化を象徴する製品として、今後のグラベルシーンを牽引していくことが期待されます。

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