Aerfast.4 Pro Final Edition発売!スペック・価格・購入方法を解説

ロードバイク

Storck Aerfast.4 Pro Final Editionは、2025年12月18日に発表された全世界100台限定のエアロロードバイクです。 価格はShimano Ultegra Di2完成車で€5,499(約90万円)となっており、Proグレードカーボンフレームに専用エアロコクピットを搭載しています。このモデルは、時速45km走行時に必要な出力が199ワットという世界記録を達成したAerfast.4の最終生産版であり、Imperial Blue Chromeという特別塗装が施された希少性の高い一台です。

ドイツのエンジニアリングブランドStorck Bicycleが送り出すこの特別仕様車は、単なる型落ちモデルではありません。後継機Aerfast.5が登場した現在においても、「初の200ワット以下達成モデル」という歴史的価値を持つAerfast.4に敬意を表した、コレクターズアイテムとしての性格を備えています。この記事では、Aerfast.4 Pro Final Editionの詳細なスペック、価格設定の妥当性、購入方法、そして競合モデルとの比較まで、購入を検討している方が知りたい情報を網羅的にお伝えします。

Aerfast.4 Pro Final Editionとは

Aerfast.4 Pro Final Editionとは、Storck Bicycleが2025年12月18日に発表した、Aerfast.4シリーズの最終生産モデルです。このバイクの最大の特徴は、ドイツの自転車専門誌『TOUR』によるGST風洞実験において、時速45km走行時の必要出力が199ワットという世界記録を樹立した点にあります。これは自転車業界において「200ワットの壁」を初めて破った歴史的な達成であり、エアロロードバイク開発におけるマイルストーンとなりました。

Storck Bicycleの創業者であるMarkus Storckは、妥協を許さない完璧主義者として知られており、1995年のブランド設立以来、常に時代の数年先を行くプロダクトを発表してきました。Aerfast.4の開発においては、F1の空力開発でも知られるSwiss Sideと協力し、UCI(国際自転車競技連合)のレギュレーションの範囲内で革新的なフレーム形状を実現しています。

Final Editionは、後継機Aerfast.5への完全移行を前に、この伝説的モデルの最後を飾る特別仕様車として企画されました。通常、型落ちとなるモデルは静かにカタログから消えていくものですが、Aerfast.4は単なる旧型ではなく、エアロロードバイクの歴史に名を刻んだモデルとして、特別な形で送り出されることになったのです。

Aerfast.4 Pro Final Editionの発売日と限定生産について

Aerfast.4 Pro Final Editionは2025年12月18日にStorck Bicycleから正式に発表されました。このタイミングは、後継機であるAerfast.5がすでに市場に投入され、「世界最速」の称号(195ワット)を更新した後であるという点で興味深いものとなっています。

このFinal Editionは全世界でわずか100台のみの限定生産です。大量生産を旨とする大手メーカーとは異なり、Storckのようなブティックブランドにとっての100台は、品質管理が徹底された特別なロットを意味します。各フレームには限定モデルであることを示す証が刻まれ、オーナーには「伝説の最終章」を所有する優越感が提供されます。

デリバリーに関しては、2025年11月から開始された「30th Edition」の流れを汲み、オーダー後、数週間から1ヶ月程度での出荷が見込まれています。限定100台という希少性を考慮すると、購入を検討している方は早めの決断が求められるでしょう。

Aerfast.4 Pro Final Editionの価格

Aerfast.4 Pro Final Editionの価格は、Shimano Ultegra Di2完成車で€5,499です。日本円に換算すると約90万円(1ユーロ=165円換算)となります。昨今のハイエンドロードバイクの価格高騰を考えると、この価格設定は驚異的なバリュープライスと言えます。

この価格の妥当性を検証するために、搭載されるコンポーネントの単価から逆算してみましょう。Shimano Ultegra Di2のグループセット一式だけで約20万円から25万円、カーボンディープリムホイールが約20万円、一体型カーボンハンドルが約8万円、タイヤやサドルなどの小物を合わせると、パーツ代だけで50万円を超える計算になります。残りの40万円で、世界限定100台の特別塗装カーボンフレームが手に入ると考えれば、そのコストパフォーマンスの高さが理解できます。

さらに特筆すべきは、後継機Aerfast.5との価格差です。Aerfast.5はフレーム重量の軽量化とさらなる空力改善(195ワット)を果たしていますが、完成車で1万ユーロ(約160万円)を超えることも珍しくありません。Aerfast.4 Final Editionの€5,499という価格は、わずか4ワットの差に対して、Aerfast.5の半額近いコストで手に入ることを意味します。この「コスト対ワット効率」において、Final Editionは圧倒的な優位性を持っています。

なお、Storckの販売システムでは、オーダー時にSRAM Red AXSやDura-Ace Di2へのアップグレードを選択できる場合もあり、予算と好みに応じたカスタマイズが可能です。

Aerfast.4 Pro Final Editionの詳細スペック

フレームセット

Final Editionには「Pro」グレードのカーボンフレームが採用されています。Storckにはさらに上位の「Platinum」グレードが存在しますが、Proグレードは決して廉価版ではありません。Platinumが極限までの軽量化を追求した「決戦用」であるのに対し、Proグレードは耐久性と剛性、そしてコストパフォーマンスのバランスを最適化した「実戦用」という位置づけです。

フレーム重量は約1000g前後(サイズM)で、エアロロードとしては標準的な数値となっています。むしろ、Proグレード特有の肉厚なカーボン積層は、高出力でのスプリントや荒れた路面での走行において、ライダーに安心感を与える剛性感を生み出しています。素材には最高品質の日本製カーボンファイバーが使用されており、UD(単一方向)レイアップによって、必要な方向への剛性を確保しつつ、振動吸収性も持たせています。

グループセット

ベースモデルに搭載されるのは、Shimanoの12速電動コンポーネント「Ultegra Di2(R8100シリーズ)」です。変速性能はDura-Aceと遜色なく、セミワイヤレス化されたシステムはエアロフレームへの組み込みに最適となっています。

ギア比については、フロントは52/36Tのセミコンパクト、リアは11-30Tまたは11-34Tが選択されることが多く、平坦での高速巡航から激坂まで対応可能なワイドレシオです。油圧ディスクブレーキは、サーボウェーブ・テクノロジーにより、少ない握力で強大な制動力を発揮します。特に内装ルーティングによるホースの屈曲があっても、引きの軽さが変わらない点はShimanoの強みです。

ホイール

足回りを支えるのは、Storck自社ブランドのカーボンホイール「Zeitjaeger(ツァイトイェーガー)」です。Final Editionには、リムハイト65mmを誇る「Comp 65 R」が標準装備される傾向にあります(構成により55mmの場合もあります)。

65mmというディープリムは、時速40kmを超えてからの「伸び」に違いを生み出します。ホイールが回転することでジャイロ効果が生まれ、一度スピードに乗ると減速しにくい特性があります。Zeitjaegerのリムシェイプは、最新のトレンドであるワイドリム設計を取り入れており、25mmから28mmのタイヤと組み合わせた際に、タイヤ側面とリム面がフラットになるよう設計されています。これにより、タイヤとリムの段差で発生する空気抵抗を排除しています。ハブ内部機構にはDT Swiss製のものを採用しているモデルもあり、回転性能と耐久性は折り紙付きです。

タイヤ

タイヤには、現在のロードバイクタイヤのベンチマークであるContinental GP5000 S TRが採用されています。このタイヤは転がり抵抗が極めて低く、Aerfast.4の持つ空力性能を路面に伝えるラストワンマイルの役割を果たします。サイドウォールのグリップ力も高く、高速コーナリングでの安心感は絶大です。25mm幅が標準ですが、フレームクリアランスは最大30mm程度まで許容しており、28mmを選択するユーザーも増えています。

エアロコクピット

ハンドルバー周りには専用設計の「RBSU Aerfast.4」コクピットが搭載されています。この一体型ハンドルバー・ステムは、ケーブル類を完全に内蔵するだけでなく、ハンドルバー自体の断面形状が翼断面(エアフォイル)となっており、空気の剥離を最小限に抑えています。また、ステム部分からヘッドチューブへのつながりも段差がないようデザインされており、ライダーが受ける風の一部をスムーズにフレーム後方へと受け流す役割を果たしています。

Aerfast.4 Pro Final Editionの空力性能

199ワットの意味

Aerfast.4を語る上で避けて通れないのが、「199ワット」という数値です。この記録は、ドイツのインメンシュタードにあるGST風洞実験施設で計測されました。ここは、自転車業界で最も厳格な基準を持つとされる雑誌『TOUR』がテストを行う聖地として知られています。

テストプロトコルは極めて実践的なものです。単にバイク単体に風を当てるのではなく、脚が回転するダミー人形を乗せた状態で計測されます。時速45kmという高速域での空気抵抗をワット数で計測することで、機材の純粋な空力性能を数値化しています。Aerfast.4以前の最速バイクたちは202ワットから205ワットの壁に阻まれていましたが、Storckがこれを199ワットにまで引き下げたことは、空力設計のパラダイムシフトを意味しました。

ワイドフォーク・テクノロジー

199ワット達成の最大の立役者は、異様とも言えるほど幅広に設計されたフロントフォークです。従来、フォークは前面投影面積を減らすために薄く、ホイールに沿うように設計するのが常識でした。しかし、StorckとSwiss Sideの解析により、回転するホイールとフォークブレードの間が狭いと、空気が圧縮され激しい乱流が発生し、かえってドラッグが増大することが判明しました。

Aerfast.4のフォークは、ハブ軸から上方に向かって大きく湾曲し、ホイールとの間に拳が入るほどのクリアランスを確保しています。これにより、フロントホイールが切り裂いた空気が、フォークに干渉することなくスムーズに後方へ流れる「エア・チャネル」が形成されます。この形状は、真正面からの風だけでなく、横風においても優れた整流効果を発揮し、ハンドリングの安定性にも寄与しています。

Aerfast.4 Pro Final Editionのデザイン

Imperial Blue Chromeカラー

Final Editionの最大の特徴の一つが、その外観にあります。Storckはこれまで、マットブラックに控えめなロゴを配した「ステルス・ルック」を好んできました。これは塗装重量すら削ぎ落とすという軽量化への執念の表れでもありました。しかし、今回のFinal Editionでは、その禁欲的な姿勢を解き放ち、見る者を圧倒する豪華なフィニッシュを採用しています。

採用されたカラーは「Imperial Blue Chrome(インペリアル・ブルー・クローム)」です。これは単なるメタリックブルーではありません。クロームベースの上に深みのあるクリアブルーを積層したようなキャンディカラーに近い仕上げで、光の入射角によって、深海のようなダークブルーから、鋭い輝きを放つエレクトリックブルーへと劇的に表情を変化させます。

この塗装は、エアロダイナミクスを阻害しないよう極めて平滑に仕上げられており、鏡面のような光沢を持っています。フレームの造形が持つ曲面とエッジを強調し、Aerfast.4の特徴的な極太ダウンチューブや、薄いシートステイの造形美を際立たせています。

シルバーレーシングストライプ

フレームには、シルバーのレーシングストライプが配されています。これはクラシックなレーシングカーへのオマージュを感じさせるデザインであり、最新鋭のカーボンフレームに伝統的な速さの象徴を融合させています。トップチューブやフォークブレードに走るシルバーのラインは、視覚的なスピード感を演出するだけでなく、限定モデルとしての特別感を強調する役割を果たしています。

Aerfast.4 Pro Final Editionのジオメトリ

Aerfast.4のジオメトリは、一切の妥協がない「レーシング」仕様です。週末のサイクリングロードをのんびり流すための設計ではなく、速さを追求するライダーのために最適化されています。

スタックとリーチ

Aerfast.4のスタック(BB中心からヘッドチューブ上端までの垂直距離)は、同サイズのエンデュランスバイクと比較して20mmから30mm低く設定されています。例えば、Mサイズのスタックは522mmしかありません。一方でリーチ(BB中心からヘッドチューブ上端までの水平距離)は390mmと長めです。

これにより、ライダーは深く前傾し、腕を前に伸ばすポジションを強制されます。これはライダー自身の空気抵抗(バイク全体のドラッグの約70%を占める)を減らすためには必須の要素ですが、柔軟性の低いライダーや、背筋力が不足しているライダーには厳しい姿勢となる可能性があります。しかし、このポジションこそが「199ワット」を実現するための最後のピースなのです。

直進安定性とハンドリング

ヘッドアングルはサイズによりますが、72度から73度前後と比較的立っており、ハンドリングはクイックです。しかし、BBドロップやチェーンステー長(410mm)のバランスにより、高速域ではレールの上を走るような直進安定性を発揮します。横風を受けた際も、ワイドフォークが整流板のような役割を果たし、ハンドルを取られにくい特性を持っています。

Aerfast.4 Pro Final Editionの購入方法

日本国内のサイクリストにとって気になるのは入手性です。現在のStorckは、ドイツ本国からのD2C(Direct to Consumer:直販)モデルを強化しています。Final Editionは、Storckの公式オンラインストア(storck-bikes.com)および、ドイツ国内のフラッグシップストアでのみオーダーが可能です。

ドイツ国内のフラッグシップストアはデュッセルドルフ、ハンブルク、イドシュタイン、ミュンヘン、ヴェルトハイムの5都市に展開されています。日本からオーダーする場合は、公式オンラインストアを通じての購入となり、輸入消費税や送料が別途発生します。それでもなお、この歴史的モデルを手に入れる価値は十分にあると言えるでしょう。

Aerfast.4 Pro Final Editionと競合モデルの比較

Canyon Aeroad CFRとの比較

同じドイツブランドの宿命のライバルがCanyon Aeroad CFRです。Aeroadはプロレースでの実績が圧倒的で、「可変ハンドル」や「整備性の良さ」などのユーザーフレンドリーなギミックが強みとなっています。対してStorck Aerfast.4は、ギミックを排して「純粋な空力形状」を追求しています。Aeroadが優等生的なオールラウンダーであるなら、Aerfast.4は空力特化のスペシャリストと言えるでしょう。

Cervélo S5との比較

エアロロードの元祖であるCervélo S5は、V字型ステムなどの独創的な設計が特徴です。空力性能ではAerfast.4と双璧をなす存在ですが、S5は専用設計パーツの塊であり、ポジション調整やメンテナンスの難易度が高いことで知られています。Aerfast.4は、ステム一体型ハンドルこそ専用品ですが、シートポストやその他の規格において比較的オーソドックスな構造を維持しており、長期的な運用における安心感があります。

Storck Aerfast.5との比較

最大のライバルは、皮肉にも自社の最新モデルAerfast.5です。Aerfast.5はフレーム重量の軽量化と、さらなる空力改善(195ワット)を果たしています。しかし、前述の通り、Aerfast.4 Final Editionの€5,499という価格は、わずか4ワットの差に対してAerfast.5の半額近いコストで手に入ることを意味します。この「コスト対ワット効率」を重視するなら、Final Editionは極めて魅力的な選択肢となります。

Aerfast.4 Pro Final Editionの投資価値

限定モデル、特に「Final Edition」と銘打たれたモデルは、中古市場でも値崩れしにくい傾向があります。Storckというブランド自体がコアなファンを持っており、特に生産終了後のエアロロード名機は、数年後にも高値で取引される可能性があります。単なる消費ではなく、資産としての側面も持ち合わせているのがこのバイクの魅力です。

初の199ワット達成モデルという歴史的価値、全世界100台限定という希少性、そしてImperial Blue Chromeという特別塗装。これらの要素が組み合わさることで、Aerfast.4 Pro Final Editionは単なるスポーツ用品を超えた、コレクターズアイテムとしての価値を持っています。

Aerfast.4 Pro Final Editionはどんなライダーに向いているか

Storck Aerfast.4 Pro Final Editionは、万人向けのバイクではありません。週末にカフェライドを楽しむためのバイクでも、通勤用のバイクでもありません。これは「速さ」という目標に真剣に取り組むサイクリストのための、純粋なスピードマシーンです。

平坦路での高速走行に快感を覚えるライダー、ドラフティング禁止のトライアスロンレースで単独での空気抵抗低減を追求したいアスリート、ドイツの質実剛健な設計思想と数値に裏付けられた性能にロマンを感じるエンジニアリング好きな方、そしてメジャーブランドのバイクが溢れるサイクリングロードで誰とも被らない圧倒的な存在感を放ちたい方。このような特性を持つライダーにとって、Aerfast.4 Pro Final Editionは最適な選択肢となるでしょう。

Aerfast.5という後継機が出た今でも、Aerfast.4が達成した「199ワット」の衝撃が色褪せることはありません。その伝説の最終章を、特別なインペリアル・ブルーの輝きと共に手に入れるチャンスは、世界でたった100人にしか与えられていません。このバイクを手に入れることは、単に速い自転車を買うことではなく、自転車のエアロダイナミクス史における重要な「証人」となる権利を得ることなのです。

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