ロードバイクを楽しむ上で、身体の中でも特に重要な筋肉のひとつが大腿四頭筋です。太ももの前面に位置するこの強力な筋肉群は、ペダリングパワーの源泉となるだけでなく、長時間のライドを快適に過ごすための鍵を握っています。しかし、この筋肉を正しく理解し、効果的に活用できているサイクリストはどれくらいいるでしょうか?
大腿四頭筋は全身の筋肉の中で最も強く大きな筋肉で、ペダリング時のパワー発揮に欠かせないコンポーネントです。上手に使えば爽快なライドが楽しめる一方、使い方を誤れば膝の痛みやパフォーマンス低下を招くこともあります。本記事では、ロードバイクにおける大腿四頭筋の役割や鍛え方、効率的な使い方について、Q&A形式で詳しく解説していきます。
初心者からベテランライダーまで、より良いサイクリングライフを送るための参考にしてください。

ロードバイクで大腿四頭筋を効果的に鍛えるにはどうすればいい?
大腿四頭筋はサイクリストにとって最も重要な筋肉のひとつで、特にロードバイクでの「踏み込み」の力を生み出します。しかし、ただ漫然と乗るだけでは効果的に鍛えることはできません。以下に、ロードバイクで大腿四頭筋を効率よく鍛える方法をご紹介します。
ヒルクライムトレーニング
坂道走行は大腿四頭筋を鍛えるのに最適なトレーニングです。坂道を上るときは、平地走行よりも大きな力でペダルを踏み込む必要があり、自然と大腿四頭筋に負荷がかかります。
ポイント:
- 短く急な坂を強度高く登るインターバルトレーニング
- 長い緩やかな坂をじっくり登る持久力トレーニング
- 座ったままペダリングする「シッティング」と立ち上がってペダリングする「ダンシング」を組み合わせる
ギア比を意識したトレーニング
適切なギア選択も大腿四頭筋トレーニングのカギです。
低ケイデンス・高負荷トレーニング: 重いギア(大きなギア比)で低回転(60-70rpm)のペダリングを行うと、一回一回のペダルストロークに大きな力が必要となり、大腿四頭筋に高い負荷をかけることができます。これは筋力向上に効果的ですが、関節への負担も大きいため、適度な時間(5-10分間隔)で行うようにしましょう。
高ケイデンス・低負荷トレーニング: 軽いギアで高回転(90-110rpm)のペダリングを行うことも、持久力を高める観点から重要です。このトレーニングは心肺機能の向上と共に、大腿四頭筋の持久力も向上させます。
インターバルトレーニング
短時間の高強度トレーニングと回復期間を交互に繰り返すインターバルトレーニングは、大腿四頭筋の発達に非常に効果的です。
タボタ式インターバル: 20秒間の全力ペダリングと10秒間の軽いペダリングを8セット繰り返します。合計4分間の短いトレーニングですが、大腿四頭筋に大きな刺激を与えられます。
30-30インターバル: 30秒間の高強度ペダリングと30秒間の回復ペダリングを10セット程度繰り返します。大腿四頭筋の持久力と無酸素能力の両方を向上させることができます。
オフバイクトレーニング
自転車に乗る以外の方法でも、大腿四頭筋を効果的に鍛えることができます。
スクワット: 最も基本的かつ効果的な大腿四頭筋トレーニングです。体重を使った自重スクワットから始め、慣れてきたらウェイトを使ったスクワットに挑戦してみましょう。
レッグプレス: ジムにある機器を使ったトレーニングで、大腿四頭筋に直接的な負荷をかけることができます。
ランジ: 前後に足を開き、膝を曲げる動作で大腿四頭筋だけでなく、バランス感覚も養えます。
注意点
大腿四頭筋を鍛える際の注意点もいくつかあります。
- バランスを考える: 大腿四頭筋だけを過度に鍛えると、筋力のバランスが崩れ、膝や腰に負担がかかります。ハムストリングスなど、拮抗筋も同時に鍛えるよう心がけましょう。
- 過度な負荷を避ける: 特に高負荷のトレーニングでは、膝関節に過度な負担がかかる可能性があります。徐々に強度を上げていきましょう。
- 適切な休息: 筋肉の成長は休息中に起こります。トレーニング後には十分な休息と栄養摂取を心がけましょう。
これらの方法を組み合わせて継続的に行うことで、ロードバイクのパフォーマンス向上に直結する強力な大腿四頭筋を鍛えることができます。
大腿四頭筋の疲労がペダリングに与える影響とは?
大腿四頭筋はペダリングの主要な動力源となる筋肉ですが、長時間のライドや高強度トレーニングによって疲労すると、ペダリングの効率や体全体のパフォーマンスに様々な影響を及ぼします。ここでは、大腿四頭筋の疲労が具体的にどのような影響をもたらすのかを解説します。
パワー出力の低下
大腿四頭筋が疲労すると、最も顕著に現れるのがパワー出力の低下です。筋肉が疲労するとATP(アデノシン三リン酸)の生産が追いつかなくなり、筋繊維の収縮力が弱まります。結果として:
- スプリント時の瞬発力が出せなくなる
- 坂道での踏み込みパワーが低下する
- 平地でも速度維持が困難になる
特に大腿四頭筋は全身の中でも最大の筋肉群であるため、この筋肉の疲労は全体的なパフォーマンスに大きく影響します。
ペダリングフォームの崩れ
大腿四頭筋が疲労すると、無意識のうちに他の筋肉を過剰に使おうとするため、ペダリングフォームが崩れる傾向があります。主な変化には:
- 足首の過度な使用: 大腿四頭筋の力が出せなくなると、足首を使って「つま先押し」のペダリングになりやすい
- 骨盤の左右の揺れ: 踏み込みの力が弱まると、体全体を使って補おうとして骨盤が左右に揺れる
- 上半身の過度な動き: 筋力不足を補うために上半身を使いすぎ、ハンドルを強く引くようになる
これらのフォームの崩れは、さらなるエネルギー消費につながり、悪循環を生み出します。
他の筋肉への負担増加
大腿四頭筋が十分に機能しなくなると、その役割を補うために他の筋肉に過度な負担がかかるようになります:
- ハムストリングスへの負荷増大: 大腿四頭筋とハムストリングスはペダリングサイクルの異なる局面で働きますが、大腿四頭筋の疲労によりハムストリングスが過剰に使われることになります。
- 腰部の筋肉への負担: 正しいフォームが維持できなくなると、腰部の筋肉に過度な負担がかかり、腰痛の原因となることも。
- 上半身の筋肉の過剰使用: 下半身のパワー不足を上半身の力で補おうとするため、肩や腕の筋肉にも負担がかかります。
怪我のリスク増加
大腿四頭筋の疲労は、怪我のリスクを高める要因にもなります:
- 膝関節への過度な負担: 疲労した状態でのペダリングは膝関節に不自然な力がかかり、膝痛や関節の問題につながる可能性があります。
- 筋肉のバランス崩れ: 大腿四頭筋とハムストリングスのバランスが崩れると、肉離れなどの筋肉の怪我のリスクが高まります。
- 転倒リスクの増加: 疲労による反応速度の低下やバランス感覚の鈍化で、不測の事態に対応できず転倒する可能性も高まります。
回復戦略
大腿四頭筋の疲労からいち早く回復するための戦略を取り入れることで、次のライドへの影響を最小限に抑えることができます:
- ライド中の栄養補給: 炭水化物と電解質の適切な補給
- クールダウン: ライド後の軽いスピンで乳酸の除去を促進
- ストレッチ: 特に大腿四頭筋を中心としたストレッチで筋肉の柔軟性を維持
- アイシング: 炎症がある場合は冷却処置
- マッサージ: 筋肉の緊張を和らげ、血流を促進
- 十分な休息: 筋肉の回復に必要な時間の確保
- プロテイン摂取: 筋肉の修復と成長を促進する栄養素の補給
大腿四頭筋の疲労はサイクリングにおいて避けられない問題ですが、その影響を理解し、適切な対策を取ることでパフォーマンスの低下を最小限に抑え、継続的に楽しくサイクリングを続けることができます。
ロードバイクで大腿四頭筋の痛みが出る原因と対処法は?
ロードバイクを楽しむ中で、多くのサイクリストが経験する大腿四頭筋の痛み。特に初心者やトレーニング強度を上げたときに発生しやすい症状ですが、適切な対処を行わないと長期的な問題に発展する可能性もあります。ここでは、その主な原因と効果的な対処法について解説します。
主な原因
1. オーバートレーニング
最も一般的な原因は単純に大腿四頭筋に過度な負荷をかけ過ぎていることです。特に:
- 急激なトレーニング量の増加
- 休息日を取らない連続ライド
- 体力以上の高強度トレーニング
これらは筋肉に十分な回復時間を与えず、微細な損傷が蓄積されて痛みを引き起こします。
2. 不適切なポジション
バイクフィットが不適切な場合、大腿四頭筋に過度な負担がかかります:
- サドルが低すぎる: 膝の屈曲角度が過度に小さくなり、大腿四頭筋に負担がかかります
- サドルが前すぎる: 前方に座りすぎることで、大腿四頭筋中心のペダリングになりがちです
- クランク長が不適切: 体格に合わないクランク長も不自然な力のかかり方の原因になります
3. ペダリングテクニックの問題
効率的なペダリングができていないと、特定の筋肉に負担が集中します:
- 大腿四頭筋だけに頼った「踏み込み」主体のペダリング
- ペダリングサイクル全体を通じた筋肉の使い分けができていない
- 過度に重いギアでの低ケイデンスペダリング
4. 筋力不足・筋力バランスの問題
サイクリングに必要な筋力が不足していたり、筋力バランスが悪いと痛みの原因になります:
- 大腿四頭筋自体の筋力不足
- 大腿四頭筋とハムストリングスのバランスの悪さ
- コアの筋力不足によるペダリング効率の低下
5. 水分・栄養不足
長時間のライド中に適切な水分と栄養補給を怠ると、筋肉の疲労が早まり、痛みを引き起こします:
- 脱水による筋肉の機能低下
- グリコーゲン枯渇による筋肉の過剰疲労
- 電解質バランスの乱れによる筋肉の機能障害
効果的な対処法
即時的な対処
痛みが発生した場合の応急処置:
- RICE処置: Rest(休息)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の原則に従う
- 軽いスピニング: 非常に軽いギアで負荷をかけずに回す「アクティブリカバリー」
- ストレッチ: 痛みが強くない場合は、大腿四頭筋の軽いストレッチを行う
- 消炎鎮痛剤: 必要に応じて医師に相談の上、消炎鎮痛剤を使用
- マッサージ: 筋肉の緊張を和らげるための軽いマッサージ
長期的な対策
再発を防ぐための対策:
バイクフィットの最適化
- サドル高の調整: 適切なサドル高は、ペダルが最下点にあるとき、膝がわずかに曲がった状態(約25-35度)になるよう設定
- サドル前後位置の調整: ペダルが水平位置にあるとき、膝蓋骨がペダル軸の真上に来るよう調整
- クランク長の見直し: 身長や脚長に合わせた適切なクランク長の選択
トレーニング方法の見直し
- 適切な休息日の設定: ハードトレーニングの後には必ず回復日を設ける
- トレーニング強度の漸進的増加: 10%ルール(週間トレーニング量は前週の10%以上増やさない)を遵守
- ケイデンスの向上: 低ケイデンス・高負荷から高ケイデンス・適度な負荷へのシフト
筋力バランスの改善
- ハムストリングス強化: デッドリフト、レッグカール等のトレーニング
- コア筋群の強化: プランク、サイドプランク等の体幹トレーニング
- バランストレーニング: 総合的な下半身の筋力バランスを整える運動
栄養・水分管理の改善
- 適切な水分補給: 1時間に500-750mlの目安で水分補給
- ライド中の栄養摂取: 長時間ライドでは1時間あたり30-60gの炭水化物を摂取
- リカバリー栄養: ライド後30分以内に炭水化物とタンパク質を摂取
ペダリングテクニックの改善
- 円滑なペダリングの練習: 片足ペダリングドリルなどで「押す・引く・掻く・上げる」の一連の動きを習得
- 適切なギア選択: 状況に応じた適切なギア比とケイデンスの選択
- ペダリングモニター活用: 可能であればパワーメーターやペダリングモニターで効率を確認
大腿四頭筋の痛みは、早期発見と適切な対処によって比較的短期間で改善することが多いですが、痛みが持続する場合や、休息しても改善しない場合は専門医の診察を受けることをお勧めします。適切なケアと予防策を講じることで、ロードバイクの楽しさを長く続けることができます。
大腿四頭筋とハムストリングスのバランスがペダリング効率に与える影響は?
サイクリングのパフォーマンスを最大化するためには、脚の前面にある大腿四頭筋と後面にあるハムストリングスのバランスが非常に重要です。この二つの筋肉群は拮抗筋(一方が収縮するともう一方が伸展する関係)であり、ペダリングサイクルの異なる局面で協調して働きます。この筋力バランスがペダリング効率にどのように影響するのか、詳しく見ていきましょう。
理想的な筋力バランスとは
一般的に、大腿四頭筋とハムストリングスの理想的な筋力比率は約3:2と言われています。つまり、大腿四頭筋の方がハムストリングスよりもやや強いのが自然な状態です。しかし、多くのサイクリスト、特に初心者やロードバイク愛好家は、大腿四頭筋に比べてハムストリングスが相対的に弱い傾向があります。
これは、日常生活や一般的なサイクリングでは、大腿四頭筋を使う「踏み込み」動作が中心となり、ハムストリングスを使う「引き上げ」や「掻き上げ」の動作があまり意識されないためです。
バランスの崩れがもたらす問題
1. 大腿四頭筋優位の場合(最も一般的)
大腿四頭筋が過度に発達し、ハムストリングスが相対的に弱い場合:
- ペダリングの偏り: ダウンストローク(踏み込み)に力が集中し、アップストロークやバックストロークが弱くなる
- 膝への過度な負担: 大腿四頭筋の強い収縮により、膝蓋骨に過度な圧力がかかり、膝痛の原因となる
- 早期疲労: 特定の筋肉だけに負荷が集中するため、全体的な持久力が低下する
- パワーロス: ペダリングサイクル全体を通して効率的に力を伝達できず、エネルギーのロスが生じる
2. ハムストリングス優位の場合(稀なケース)
ハムストリングスが過度に発達し、大腿四頭筋が相対的に弱い場合:
- キックスルー不足: ペダルの前方への押し出し(キックスルー)が弱くなり、パワー伝達が非効率になる
- 坂道での苦戦: 大腿四頭筋はヒルクライムで特に重要なため、坂道でのパフォーマンスが低下する
- 筋肉バランスの不自然さ: サイクリングの自然な動きと合わないため、フォームが崩れやすくなる
バランス改善のメリット
大腿四頭筋とハムストリングスのバランスを整えることで得られる主なメリットは以下の通りです:
1. 効率的なパワー伝達
ペダリングサイクル全体を通じて均等にパワーを伝達できるようになります:
- ダウンストローク(踏み込み): 大腿四頭筋が主に活躍
- ボトムデッドセンター(最下点): 前脛骨筋とふくらはぎの筋肉が活躍
- アップストローク(引き上げ): ハムストリングスと腸腰筋が活躍
- トップデッドセンター(最上点): 大臀筋とハムストリングスが活躍
これらの筋肉がバランス良く働くことで、一定のパワー出力を維持しやすくなります。
2. 持久力の向上
特定の筋肉だけに負荷が集中せず、複数の筋肉グループが交代で働くことで、全体的な疲労が軽減されます。その結果:
- 長距離ライドでの持久力が向上する
- 高強度インターバルでの回復が早くなる
- 連日のライドでも疲労が蓄積しにくくなる
3. 怪我のリスク低減
筋力バランスが整うことで、関節や靭帯への不自然な負担が減少し:
- 膝痛の予防につながる
- 腰痛などの二次的な問題が起こりにくくなる
- 肉離れなどの急性の筋肉障害のリスクが低下する
4. パワー向上
全ての筋肉を効率的に使うことで、同じエネルギー消費でより大きなパワーを生み出せるようになります:
- スプリント力の向上
- ヒルクライムパフォーマンスの改善
- 長時間の高強度維持能力の向上
バランス改善のためのトレーニング
1. ハムストリングス強化エクササイズ(大腿四頭筋優位の場合)
- デッドリフト: 最も効果的なハムストリング強化エクササイズの一つ
- レッグカール: ハムストリングスを集中的に鍛えられる
- グッドモーニング: ハムストリングスと背中下部を同時に鍛える
- シングルレッグデッドリフト: バランス感覚も同時に養える
- ブリッジエクササイズ: 股関節伸展筋群全体を強化
2. 大腿四頭筋強化エクササイズ(稀なハムストリングス優位の場合)
- スクワット: 大腿四頭筋全体を鍛える基本的なエクササイズ
- ランジ: 様々なバリエーションで大腿四頭筋を鍛えられる
- レッグエクステンション: 大腿四頭筋を集中的に鍛える
- ヒルクライム: 実際のサイクリングで大腿四頭筋を強化
3. バランス改善のためのペダリングドリル
- 片足ペダリング: クリップレスペダルを使用し、片足だけでペダリングすることで、円滑なペダリングを習得
- 高ケイデンスドリル: 軽いギアで100rpm以上の高回転を維持し、スムーズなペダリングを習得
- ペダリングモニターを使った練習: パワーメーターやペダリングアナライザーを使い、力の入れ方を可視化して改善
4. 柔軟性の向上
筋力だけでなく、柔軟性のバランスも重要です:
- 大腿四頭筋ストレッチ: 特に硬くなりやすい大腿四頭筋の柔軟性を維持
- ハムストリングスストレッチ: ハムストリングスの柔軟性を向上させ、ペダリングの円滑さを改善
- 股関節の可動域向上: 股関節の柔軟性が向上することで、全体的なペダリングの効率が上がる
大腿四頭筋とハムストリングスのバランスを整えることは、サイクリングのパフォーマンス向上や怪我予防において非常に重要です。特に長期的なサイクリングキャリアを考える上では、すぐに結果が出なくても、バランスのとれた筋力開発に取り組む価値があります。自分の体の特性を理解し、弱点を補強するトレーニングを取り入れることで、より効率的で楽しいサイクリングライフを送ることができるでしょう。
大腿四頭筋を意識したペダリングと理想的なフォームとは?
ロードバイクにおける効率的なペダリングは、単に強く踏み込むだけではなく、筋肉をいかに効果的に使い、エネルギーロスを最小限に抑えるかがカギとなります。大腿四頭筋は強力な筋肉ですが、その力を過剰に、あるいは間違った方法で使うと、疲労や怪我のリスクが高まります。ここでは、大腿四頭筋を効果的に使った理想的なペダリングフォームについて解説します。
大腿四頭筋を効果的に使うペダリングの基本
適切なペダリングサイクルでの大腿四頭筋の役割
効率的なペダリングでは、360度のペダル回転を通じて様々な筋肉が協調して働きます。大腿四頭筋が最も効果的に力を発揮するのは次の局面です:
- ダウンストローク(12時から5時の位置): ペダルを押し下げる局面で、大腿四頭筋が主要な駆動力となります
- キックスルー(4時から6時の位置): ペダルを前方に押し出す動きでも大腿四頭筋が活躍します
ここで重要なのは、ダウンストロークで大腿四頭筋を効果的に使いながらも、ペダリングサイクルの他の局面では適切に力を抜き、他の筋肉グループ(ハムストリングスや大臀筋など)に役割を譲ることです。
大腿四頭筋の過度な使用を避ける
多くの初心者サイクリストに見られる傾向として、大腿四頭筋のみに頼った「踏み込み」主体のペダリングがあります。これは短期的にはパワーを生み出せますが、以下の問題があります:
- 早期の筋肉疲労
- 膝への過度な負担
- ペダリングの不均一性
- エネルギー効率の低下
理想的なペダリングでは、大腿四頭筋は主役であっても唯一の役者ではないことを理解し、全身の筋肉を調和させることが重要です。
理想的なペダリングフォーム
1. 適切なポジション設定
理想的なペダリングの前提として、適切なバイクフィットが不可欠です:
- サドル高: 膝への負担を減らし、大腿四頭筋の効率的な活用のために、ペダルが最下点にあるとき、膝がわずかに曲がった状態(約25-35度)になるよう設定
- サドル前後位置: ペダルが水平位置(3時)にあるとき、膝蓋骨がペダル軸の真上か、わずかに後ろになるよう調整
- クランク長: 体格に合った適切なクランク長の選択
2. 円滑なペダリング動作
効率的なペダリングでは、力の入れ方に「角」がなく、円滑な力の伝達が行われます:
- 力の均一分散: ペダリングサイクル全体を通じて、力をできるだけ均一に分散させる
- 「押す・掻く・引く・上げる」の連続動作: 12時から始まり、押し(ダウンストローク)、掻き(ボトムデッドセンター)、引き(アップストローク)、上げ(トップデッドセンター)と続く流れるような動作
- スムーズな力の移行: ある筋肉群から次の筋肉群へと、力の入れ方を段階的に移行させる
3. 適切なケイデンスの選択
大腿四頭筋を適切に使うためには、状況に応じた理想的なケイデンスがあります:
- 平地巡航時: 85-95rpmが一般的な理想ケイデンス。このレンジでは大腿四頭筋への負担と有酸素効率のバランスが取れています
- ヒルクライム時: 70-85rpm程度。急勾配では若干低めのケイデンスでも許容される
- スプリント時: 100-120rpm。瞬発力を発揮するためには高ケイデンスが有効
過度に低いケイデンス(60rpm以下)で長時間ペダリングすると、大腿四頭筋に過剰な負担がかかり、膝への負担も増加します。
4. 筋肉の使い分け
ペダリングサイクルの各局面での主要な筋肉の使い分けを意識します:
- ダウンストローク(12-5時): 大腿四頭筋と大臀筋
- キックスルー(4-6時): 大腿四頭筋と下腿三頭筋
- アップストローク(6-9時): ハムストリングスと腸腰筋
- オーバートップ(9-12時): ハムストリングスと腸腰筋
大腿四頭筋は主にダウンストロークとキックスルーで使われますが、力の入れ方は徐々に変化していきます。
ペダリング改善のためのエクササイズとドリル
1. シングルレッグペダリング
片足だけでペダリングする練習は、ペダリングの円滑さを向上させる最も効果的な方法の一つです:
- 軽いギアで片足のみでペダリング(30秒〜1分)
- 反対の足も同様に練習
- 両足で円滑さを確認
このドリルを行うことで、大腿四頭筋だけに頼らない、全周期を通じたスムーズなペダリングが身につきます。
2. ケイデンスドリル
異なるケイデンスでのペダリングを意識的に練習することで、筋肉の使い方を改善できます:
- 高ケイデンスドリル(100-120rpm): 軽いギアで高ケイデンスを維持し、スムーズなペダリングと素早い筋肉の切り替えを習得
- ケイデンスラダー: 80→90→100→110→100→90→80rpmと段階的にケイデンスを変化させるドリル
- ケイデンス維持ドリル: 特定のケイデンス(例:90rpm)を様々な地形や状況で一定に保つ練習
3. ペダリングモニターの活用
パワーメーターやペダリングアナライザーを使うと、力の入れ方の偏りを可視化できます:
- 左右バランスの確認
- トルク効率の分析
- ペダリングスムーズネスの向上
4. フォーカストレーニング
ペダリングの特定の側面に焦点を当てたトレーニングも効果的です:
- ドラッグバック(引き上げ)フォーカス: アップストローク(6-9時)を意識したペダリング練習
- キックスルーフォーカス: ペダルを前方に押し出す動作(4-6時)を意識した練習
- 円を描くイメージ: 足で完全な円を描くようなイメージでペダリング
大腿四頭筋の「過労」と「最適活用」の違い
大腿四頭筋を最大限に活用することと、過度に使いすぎることには明確な違いがあります:
過労の兆候
- 膝の前面の痛み
- ペダリング中の大腿部の早期疲労感
- ペダリングが「ガタガタ」と不均一になる
- 上半身の過度な動き
最適活用の状態
- ペダリングが円滑で「流れる」ような感覚
- 長時間のライドでも持続的にパワーを発揮できる
- 膝に不快感がない
- 上半身が安定している
まとめ:大腿四頭筋とペダリングの理想的な関係
大腿四頭筋はサイクリングにおいて主要な動力源ですが、その使い方には繊細さが求められます。理想的なペダリングでは:
- 大腿四頭筋は主にダウンストロークとキックスルーで効果的に使用する
- ペダリングサイクルの他の局面では他の筋肉グループにも適切に役割を与える
- 適切なケイデンスとギア選択で大腿四頭筋に過度な負担をかけない
- 円滑で連続的な力の伝達を意識する
- 定期的なドリルとトレーニングで理想的なペダリングパターンを習得する
大腿四頭筋を「正しく使う」ことを意識することで、パフォーマンスの向上、疲労の軽減、怪我のリスク低減、そして何より長く楽しくサイクリングを続けられる体を維持することができます。ペダリングスキルは一朝一夕には身につきませんが、意識的な練習を継続することで、必ず改善していくものです。
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