XDS RT9は、世界最軽量の量産ロードバイクフレームとして2025年に大きな注目を集めている超軽量クライミングバイクです。Mサイズでフレーム重量わずか540〜550gという驚異的な軽さを実現し、完成車重量は6.1kgとUCIの最低重量規定6.8kgを下回る領域に達しています。本記事では、XDS RT9の詳細なインプレッション、乗り心地の特性、剛性感、そして総合的な評価について徹底的に解説します。中国発の新興ブランドが手がける世界最軽量フレームの実力と、購入を検討する際に知っておくべきポイントをお伝えします。

XDS RT9とは?世界最軽量フレームの正体
XDS RT9は、中国の大手自転車メーカーXDS(喜德盛/Xidesheng)の高性能ブランド「X-Lab」から発売されたフラッグシップモデルです。このバイクの最大の特徴は、市販ロードバイクとして世界最軽量を謳うフレーム重量にあります。
XDSブランドの背景と実績
XDS(正式名称:深圳市喜德盛自行車股份有限公司)は、1995年に中国深圳で設立された自転車メーカーです。設立から約30年の歴史を持ち、現在ではジャイアント、メリダに次ぐ世界第3位の自転車メーカーとして知られています。年間500万台以上の自転車を生産し、300を超える国際特許と国内特許を取得している技術力の高さが特徴です。
XDSは自社ブランドの自転車を販売する一方で、欧米の有名ブランド向けにOEM(相手先ブランド製造)を長年手がけてきました。同社のウェブサイトにはOrbeaのデカールが付いたフレームの工場写真も掲載されており、多くの有名ブランドの製品を裏で製造してきた実績があります。このOEM製造で培った技術力とノウハウが、RT9のような高性能モデルの開発に活かされています。
X-Labブランドの位置づけ
X-LabはXDSの中でも最高峰のパフォーマンスラインとして位置づけられています。この関係性はSpecializedとS-Worksの関係に例えられることが多く、X-LabはXDSの中でも特に先進的な技術と最高品質の素材を投入したモデルを展開しています。RT9はこのX-Labブランドのフラッグシップモデルであり、ワールドツアーレベルのレースバイクとして設計されています。
XDS RT9の基本スペックと使用素材
XDS RT9の驚異的な軽さは、東レ(Toray Industries)との協力によって実現しました。使用されているカーボン素材は、東レの最高級グレードであるT1100カーボンファイバーをメインに、M40Xファイバー、さらに少量のピッチ系カーボンを組み合わせた複合素材です。
T1100カーボンの特性
T1100Gは東レが開発した高強度・高弾性率炭素繊維で、その強さ(強度)は7.0GPa、硬さ(弾性率)は324GPaを誇ります。一世代前のT800Sと比較すると、強度は約19%、弾性率は約10%向上しています。東レはナノレベルで繊維構造を緻密にコントロールする焼成技術により、従来は技術的に困難とされた高強度と高弾性率の両立を実現しました。この素材がRT9の軽量性と剛性を支える基盤となっています。
ピッチ系カーボンの採用
RT9フレームには少量のピッチ系カーボンも使用されています。ピッチ系カーボンはPAN系カーボン(T1100やM40Xなど)とは異なる特性を持ち、柔軟性はないものの、最高品質のPAN系カーボンの約2倍の剛性を持ちます。さらに軽量かつ振動吸収にも効果的とされる素材です。
ピッチ系カーボンは航空宇宙産業での需要が高く、限られた工場でしか生産されないため、通常のカーボンファイバーの10〜20倍のコストがかかります。そのため、一般的な高級ロードバイクでも採用されることは稀であり、RT9がいかに素材にコストをかけているかが分かります。
主な仕様の特徴
RT9のフレーム素材はT1100カーボンファイバー、M40X、ピッチ系カーボンの組み合わせで、フレーム重量はMサイズで540〜550gです。シートポストはスタンダードな丸型(27.2mm)を採用し、ボトムブラケットはスレッドBB(ねじ切り式)となっています。リアディレイラーハンガーにはSRAM UDH(ユニバーサルディレイラーハンガー)を採用し、ケーブルルーティングはフル内装式、フレーム構造はワンピースモノコック設計です。
特筆すべきは、スタンダードな丸型シートポストとスレッドBBを採用している点です。これらは近年のトレンドであるエアロシートポストやプレスフィットBBに比べてメンテナンス性が高く、実用面での利点があります。
XDS RT9の剛性感とペダリングフィールのインプレッション
XDS RT9の剛性については、海外のレビューで「バランスの取れた剛性(nicely balanced stiffness)」と評価されています。極端に硬すぎず、かといって柔らかすぎることもない、クライミングバイクとして理想的な剛性バランスを実現しているという評価です。
レース志向の剛性設計
RT9はワールドツアーレベルのレースバイクとして設計されており、快適性を重視したSpecialized Aethos 2とは異なる方向性を持っています。Scott Addict RCのようなレーシングバイクに近い剛性感を持っており、ピュアなレース志向のライダー向けの味付けがなされています。超軽量フレームは一般的に剛性が犠牲になりがちですが、RT9はT1100カーボンとピッチ系カーボンの組み合わせにより、軽量性と剛性を高いレベルで両立しています。
ペダリングの反応性
公式サイトでは「RT9の剛性と反応性により、すべてのペダルストロークが確実に推進力に変わる」と謳われています。実際のレビューでも、ペダルを踏み込んだ際のダイレクトな反応性は高く評価されており、加速時のロスが少ないことが特徴として挙げられています。パワーを効率的に推進力に変換できる剛性感は、レースシーンで大きなアドバンテージとなります。
ハンドリング特性のインプレッション
RT9のフレームジオメトリはクライミングに最適化されており、丸みのあるチューブ形状と内装ケーブルルーティングによりドラッグ(空気抵抗)を低減しています。このデザインはSpecialized Aethosにインスパイアされたものとされています。
ハンドリングは「極めて俊敏(extreme nimbleness)」と評されており、タイトなコーナーや急な方向転換にも素早く反応します。ヒルクライムでのダンシング時や、下りでのコーナリング時に威力を発揮する特性です。軽量フレームならではの軽快なハンドリングは、山岳コースでの機動性を高めています。
ハンドルバーの硬さに関する注意点
RT9の標準装備ハンドルバー(コックピット)については「硬すぎる(overly stiff)」という指摘もあります。これはレビューにおけるマイナスポイントの一つとして挙げられており、長時間のライドでは手のひらや腕に疲労を感じる可能性があります。ハンドルバーを別の製品に交換することで改善できる部分ではありますが、購入を検討する際には注意が必要です。
XDS RT9の乗り心地と快適性の評価
RT9はクライミングバイクとして剛性を重視しつつも、ピッチ系カーボンの採用により一定の振動吸収性も確保しています。乗り心地の評価は、ライダーの目的や体力によって大きく異なる点を理解しておく必要があります。
振動吸収性について
ピッチ系カーボンは振動吸収に効果的とされており、路面からの微細な振動をフレームが吸収することで、手首や腰への負担を軽減する効果が期待できます。XDSロードバイク全般について、ユーザーからは「長距離ライドや数時間に及ぶサイクリングでも体への負担が極端にかかりにくい」「ロングライド後の疲労感が思ったより少なかった」という声が聞かれます。特にカーボンフレームモデルは振動吸収性に優れ、長時間のライドでも疲れにくいと好評です。
ただし、RT9は快適性よりもレース性能を重視したモデルであり、Specialized Aethos 2のような「乗り心地重視」のバイクとは設計思想が異なる点は理解しておく必要があります。
ロングライドでの乗り心地
RT9の軽さは、長時間のヒルクライムや山岳コースで大きなアドバンテージとなります。軽量なバイクは体への負担が少なく、疲労の蓄積を抑えることができます。グランフォンドのような長距離イベントや、ヒルクライムレースには最適なバイクといえます。
一方で、平坦な高速巡航では、エアロ性能を重視したバイクに比べて不利になる可能性があります。RT9は「軽量化を最優先し、空力性能は設計上の主要な考慮事項としていない」とされており、純粋なクライミングバイクとしての使用が最適です。
XDS RT9と競合モデルの比較評価
RT9は「Aethos風のバイク」「Aethosと競合するように設計された」と評されることが多く、主要な競合モデルとの比較は購入検討において重要なポイントです。
Specialized Aethosとの違い
フレーム重量を比較すると、初代Aethosは585g、第2世代Aethos 2は595gであるのに対し、RT9は540〜550gとさらに軽量です。同じスケールでほぼ同じセットアップ(ペダルなし、アウトフロントマウントなし)で計測した場合、AethosとRT9はどちらも完成車重量6.1kgだったという報告があります。ただし、この比較ではRT9は50mmのエアロホイールを装着していたのに対し、AethosはAlpinist(軽量クライミングホイール)を装着していたため、同じホイールで比較すればRT9の方がさらに軽量になる可能性が高いです。
乗り味の違いとしては、Aethos 2が「乗り心地」を重視しているのに対し、RT9はレース志向の剛性感を持っている点が挙げられます。快適性を重視するならAethos、レース性能を重視するならRT9という選択になります。
Scott Addict RCとの類似点
レビュアーの中には「Scott Addict RCが最も気に入っているバイクで、AethosやXDSよりも若干好みだが、XDSも素晴らしいバイクだ」という意見もあります。Scott Addict RCもワールドツアーで使用される軽量レースバイクであり、RT9と同様にクライミング性能を重視しています。両者とも「ワールドツアーレベルのレースバイク」というカテゴリーに属しており、剛性感やハンドリング特性に類似点が見られます。
Trek Émondaとのアプローチの違い
Trek Émondaは「超軽量ロードバイクの元祖」とも呼ばれるモデルで、最新版はOCLV 800シリーズカーボンを採用し、フレーム重量700g以下を実現しています。RT9のフレーム重量540〜550gと比較すると、約150〜200gの差があります。ÉmondaはTrek軽量性に加えてエアロ性能も考慮した設計となっており、RT9が「軽量化のみを最優先」しているのとは異なるアプローチを取っています。
価格面での圧倒的な優位性
RT9の最大の武器の一つは、競合製品に対する価格競争力です。「エアロホイールを装備しながらその軽さを実現し、次に近い競合製品より数千ドル安い」と評されています。完成車の米国での価格は「メーカー希望小売価格は確実に1万ドル以下」とされており、パワーメーターも含まれる予定です。同等の軽量性を持つ競合製品が軒並み100万円を超える価格設定であることを考えると、コストパフォーマンスの高さは際立っています。これはXDSが自社でカーボンファイバー製造から完成車組み立てまで一貫して行える生産体制を持っていることによるものです。
XDS RT9のプロレースでの実績と評価
RT9は2025年シーズンから、UCIワールドツアーチーム「XDS Astana Team」の公式機材として採用されています。プロレースでの実績は、このバイクの性能を客観的に評価する上で重要な指標となります。
2025年ジロ・デ・イタリアでの活躍
2025年のジロ・デ・イタリアでは、XDS Astana TeamがRT9を駆って印象的な成績を残しました。第16ステージでは、クリスティアン・スカローニとロレンツォ・フォルトゥナートが140kmを超えるロングエスケープに成功し、ワン・ツーフィニッシュを達成しました。この結果、チームは、ワールドツアーランキングで大きく順位を上げました。
フォルトゥナートは山岳賞でもトップを走り、マリア・アッズーラ(山岳賞ジャージ)を着用しました。RT9の軽量性がヒルクライムでの優位性を発揮していることの証左といえます。
ワールドツアーでの地位確立
XDS Astana Teamは2025年シーズン序盤、ワールドツアーからの降格が危ぶまれる状況にありました。しかし、ジロ・デ・イタリアでの好成績により、チームはUCIランキング17位まで上昇し、完全に降格争いから抜け出しました。2025年シーズンだけに限ればランキング4位という好成績を残しており、RT9を含むチームの機材がプロレースで十分に通用することが証明されました。
XDS Astana Teamの主要選手
XDS Astana Team 2025の主要選手には、ディエゴ・ウリッシ、ワウト・プールス、マイク・トゥーニッセンなどが名を連ねています。特にワウト・プールスは2016年リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ優勝者であり、ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝経験を持つ実力者です。こうしたトップ選手たちがRT9を使用していることは、このバイクの信頼性を示しています。
XDS RT9の購入に関する情報と注意点
2025年12月現在、RT9の日本での正式な販売ルートは確立されていない状況です。購入を検討する際には、入手経路や価格、アフターサービスについて事前に理解しておく必要があります。
日本での購入状況
XDS Japan(エックスディーエス ジャパン)が日本での正規代理店として活動しており、楽天やヤフーショッピングなどの通販サイト、ワイズロードやセオサイクルなどの自転車専門店でもXDS製品の取り扱いがあります。ただし、フラッグシップモデルであるRT9については取り扱いがない状況です。日本での購入を希望する場合は、XDS Japanへの問い合わせや、海外からの直接購入を検討する必要があります。
海外での購入ルート
海外ではシンガポール、オーストラリア、ドバイなどで販売が開始されています。シンガポールのPro Bikeでは、SRAM Red E1コンポーネントとZipp 353 NSWホイールセットを装備した完成車が販売されています。オーストラリアのPort Melbourne CyclesやUrban Pedalerでも、RT9フレームセットや完成車の取り扱いがあります。米国では2025年にサンタモニカにXDSの北米オフィスが設立されましたが、直接販売は行われておらず、世界各地のショップが組み上げた完成車を購入するか、フレームセットを入手して自分でビルドする形になります。
価格の目安
完成車の正確な価格は地域やショップによって異なりますが、XDSは「メーカー希望小売価格は確実に1万ドル以下」と明言しており、パワーメーター付きでこの価格帯は競合製品と比較して非常に競争力があります。フレームセットのみの価格は明確に公開されていませんが、完成車の価格から推測すると、競合製品より大幅に安価であることが予想されます。
XDS RT9に対する批判的な意見と課題
RT9は高い評価を得る一方で、いくつかの批判的な意見や課題も指摘されています。購入を検討する際には、これらの点も考慮に入れる必要があります。
「Aethosのコピー」という指摘
海外のフォーラムなどでは、RT9について「失敗したAethosのコピー品」という厳しい意見も見られます。「Specializedの技術力がないため、重量を減らすためにより多くの高弾性カーボンファイバーを使用する必要があり、フレームの生産コストが制御不能になった」という指摘があります。ただし、これらは一部のフォーラムユーザーの意見であり、RT9がワールドツアーチームの公式機材として採用され、実際にグランツールで好成績を残していることを考えると、製品としての完成度は十分に高いと言えます。
供給の不安定さ
RT9の生産数が限られているという情報があります。高価なピッチ系カーボンを使用していることもあり、大量生産が難しい可能性があります。購入を希望しても、希望するサイズやカラーが入手できない可能性には注意が必要です。
アフターサービスの課題
新興ブランドに共通する課題として、アフターサービスの体制があります。日本国内での正規販売ルートが確立されていない現状では、故障や破損時の対応に不安が残ります。海外から購入する場合は、保証やサポート体制について事前に確認することが重要です。
ビルドクオリティに関する指摘
海外のレビューでは「RT9は完璧に仕上げられたビルドではない」という指摘があります。標準装備のハンドルバーが硬すぎるという問題も含め、細部の作り込みでは老舗ブランドに劣る部分があるようです。ただし、フレーム自体の品質は高く評価されており、コンポーネントやパーツを自分好みに変更することで改善できる部分も多いです。
XDS RT9がおすすめのライダーと注意が必要なライダー
RT9は特定のライダーにとって非常に魅力的な選択肢となる一方、目的によっては他のバイクを選んだ方が良い場合もあります。
RT9をおすすめできるライダー
ヒルクライマーには、RT9は最適な選択肢です。RT9の最大の武器は軽さであり、ヒルクライムを得意とするライダー、あるいはヒルクライムを強化したいライダーに向いています。勾配のきつい山岳コースでは、その軽量性が大きなアドバンテージとなります。
レース志向のライダーにも適しています。RT9はワールドツアーレベルのレースバイクとして設計されており、競技志向のライダーに向いています。剛性感のある乗り味は、パワーを効率的に推進力に変換します。
軽量バイクファンにとっても魅力的です。世界最軽量の量産フレームという称号は、軽量バイクを追求するサイクリストにとって大きな魅力となります。
コストパフォーマンスを重視するライダーにもおすすめです。同等の性能を持つ競合製品より大幅に安価であり、予算を抑えながら高性能バイクを手に入れたいライダーに適しています。
注意が必要なライダー
快適性重視のライダーは注意が必要です。RT9は乗り心地よりもレース性能を優先した設計であり、ロングライドでの快適性を最重視するライダーにはSpecialized Aethosなど別の選択肢の方が合う可能性があります。
エアロ性能を重視するライダーにも向いていません。RT9は空力性能を設計の主要な考慮事項としていないため、平坦な高速巡航やタイムトライアルを重視するライダーには、エアロロードの方が適しています。
アフターサービスを重視するライダーも慎重に検討すべきです。日本国内での正規販売・サポート体制が確立されていないため、手厚いアフターサービスを重視するライダーは注意が必要です。
軽量カーボンフレーム選びの基礎知識
RT9のような軽量カーボンフレームを検討する際に知っておくべき基礎知識についても触れておきます。
カーボンフレームのメリット
カーボンフレーム(炭素繊維強化プラスチック)の最大のメリットは、圧倒的な軽さです。アルミやスチール(クロモリ)と比較して最も軽い素材であり、車体が軽くなることで操作がしやすく軽快な走りが可能になります。また、素材の特性として衝撃吸収性にも優れており、長時間のライドでも疲労を軽減する効果が期待できます。加工の自由度が高いこともカーボンの特徴で、空力特性を考慮した複雑な形状や、部位ごとに異なる剛性を持たせた設計が可能です。
カーボンフレームの注意点
一方で、カーボンはデリケートな素材であり、衝撃に弱い点には注意が必要です。ぶつけたり転倒したりした際の衝撃によって割れやすく、目に見えないクラックが入る可能性もあります。丁寧な取り扱いが求められます。また、カーボンは紫外線にも弱いため、保管する際は屋内を選択することが推奨されます。
フレーム重量の目安と自分に合ったグレード選び
一般的なカーボンフレームの重量は800g〜1500g程度です。RT9の540〜550gという数値がいかに軽量かが分かります。完成車全体で見ると、8kgが軽いか重いかの境目とされており、7kg台に入ると「軽量ロードバイク」と呼ばれることが多いです。
ハイエンドモデルは、乗り味を硬くしたカーボン素材が使われていることが多く、それに対応できる脚力がなければ性能を引き出すことができません。場合によっては、ハイエンドよりも一つ下のグレードを選んだ方が「快適に走れて、結果的にタイムも速い」ということも起こり得ます。RT9はワールドツアーレベルのレースバイクであり、その剛性感を活かすにはある程度の脚力と経験が必要です。初心者や体力に自信がない方は、より快適性を重視したモデルから始めることも選択肢の一つです。
RT9の完成車構成とホイールについて
海外で販売されているRT9完成車の代表的な構成として、SRAM Red E1コンポーネントとZipp 353 NSWホイールセットの組み合わせがあります。フレームとフォークはワンピースモノコック設計で製造されており、インテグレーテッドコックピット(ハンドルバーとステムが一体化したデザイン)と組み合わされています。この構成は「表彰台を狙えるバイク」として位置づけられており、プロレースでも通用する本格的なセットアップです。
Zipp 353 NSWホイールの特徴
RT9に組み合わされることの多いZipp 353 NSWは、Zippのホイールラインナップの頂点に君臨するNSWシリーズの軽量モデルです。リムハイト45mmのこのホイールは、ザトウクジラの胸ビレの形状から着想を得たノコギリ型のリム形状(Sawtooth技術)を採用しています。Zipp公式によると、最も軽い構成での重量は1,255g(フロント580g、リア675g)とされています。2021年にデビューした353 NSWは、2025年5月にフルモデルチェンジを受け、新機能の搭載と各部のブラッシュアップが施されました。RT9のような超軽量フレームと組み合わせることで、完成車全体の軽量化に大きく貢献するホイールです。
XDS RT9の総合評価とまとめ
XDS RT9は、世界最軽量の量産ロードバイクフレームという称号にふさわしい、極めて意欲的なモデルです。東レとの協力により実現したT1100カーボン、M40X、ピッチ系カーボンの複合素材は、540〜550gという驚異的な軽さと、ワールドツアーレベルの剛性を両立しています。
2025年のジロ・デ・イタリアでXDS Astana Teamが見せた活躍は、RT9がプロレースで十分に通用する性能を持つことを証明しました。軽量クライミングバイクとしての基本性能は、Specialized AethosやScott Addict RCといったトップブランドの競合製品に引けを取りません。
価格面では、競合製品より数千ドル安いという圧倒的なコストパフォーマンスが魅力です。一方で、「完璧なビルドではない」という指摘や、日本を含む多くの地域での入手性の問題、アフターサービスへの不安といった課題も存在します。新興ブランドの高性能モデルを購入する際には、これらのリスクを理解した上で判断する必要があります。
総合的に見て、XDS RT9は「超軽量クライミングバイクを、従来より大幅に安い価格で手に入れたい」というライダーにとって、非常に魅力的な選択肢です。ヒルクライムでの性能を重視し、自分でパーツをカスタマイズできる知識と経験を持つ中〜上級者には、特におすすめできるモデルです。世界最軽量の量産ロードバイクという称号は伊達ではありません。RT9は、従来は一部の超高級ブランドでしか実現できなかった領域に、より手の届きやすい価格で踏み込んだ意欲作といえます。


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