ヤマハPAS CITY-Vリコール対象車両の確認方法|14,650台が対象

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ヤマハ PAS CITY-Vのリコールは、2025年12月2日にヤマハ発動機株式会社から発表された、ステムハンドルの無償交換を内容とする重要な安全対策措置です。対象車両は2018年8月から2025年6月までに製造された合計14,650台であり、自転車本体に貼付されたラベルに記載されている「PAS号機番号」を確認することで、ご自身の車両がリコール対象かどうかを判断できます。この記事では、リコールの詳しい内容から対象車両の確認方法、そして無償修理を受けるための具体的な手順まで、PAS CITY-Vをお持ちの方が知っておくべき情報を網羅的に解説していきます。

ヤマハ PAS CITY-V リコールの概要と発表の経緯

ヤマハ発動機株式会社は2025年12月2日、電動アシスト自転車「PAS CITY-V」においてステムハンドルの不具合が確認されたとして、リコール(無償修理)を発表しました。今回のリコールは経済産業省および消費者庁に正式に届け出がなされており、製品の不具合が消費者の生命や身体に危害を及ぼす可能性があると判断された重大な案件として取り扱われています。

PAS CITY-Vは、ヤマハの電動アシスト自転車ラインナップの中でも「レトロスポーティー」をコンセプトとした人気モデルです。24インチのタイヤサイズに直線的でスタイリッシュなV型フレームを組み合わせたデザインが特徴で、通勤や通学、都市部での移動手段として幅広い層から支持を集めてきました。内装5段変速による軽快な走行性能やアシスト力の強さ、そして何よりもデザイン性の高さがユーザーから高く評価されています。

しかしながら、今回明らかになった不具合は、まさにそのデザインと機能を支える構造部品に関わるものでした。自転車の操舵機能を担う最重要保安部品であるステムハンドルにおいて、構造力学的な問題が発見されたのです。この不具合を放置した場合、走行中に深刻な事故につながる可能性があるため、ヤマハ発動機は迅速にリコールを届け出て、対象車両の無償修理体制を整えました。

リコール対象となった不具合の内容とは

今回のリコールの原因は、ハンドルバーを車体本体に固定するためのステムパイプの剛性が設計上の想定よりも不足していたことにあります。この剛性不足によって、走行中に路面から伝わる振動や衝撃、あるいはライダーがペダルを踏み込む際にハンドルを引き寄せる動作で生じる応力を適切に分散させることができなくなります。その結果、ハンドルステムを内部で固定している「引き上げボルト」に過大な負荷が繰り返し集中し、最悪の場合には金属疲労によってボルトが突如として折損する恐れがあるのです。

走行中にハンドルを固定するボルトが折損した場合、操縦不能に陥ることは避けられません。転倒や衝突といった深刻な人身事故に直結する可能性が極めて高いため、今回のリコールは特に緊急性の高いものとして位置づけられています。

ステムハンドルの構造と不具合発生メカニズム

PAS CITY-Vを含む多くの実用車やクラシックデザインの自転車では、「クイルステム」と呼ばれる方式でハンドルを固定しています。クイルステム構造とは、フロントフォークの上端であるステアリングコラムの中にハンドルステムを差し込み、内部から固定する仕組みのことです。

この固定を担っているのが、ステムの上部から貫通している長いボルト(引き上げボルト)と、その先端に取り付けられた「ウス(ウェッジ)」と呼ばれる部品です。ボルトを締め込むとウスが引き上げられ、ステムの下部が斜めにスライドしながら拡張します。これによってステムがフォークコラムの内壁に強く押し付けられ、摩擦力によって固定されるという構造になっています。

本来、自転車が走行する際に受ける路面からの衝撃やライダーがハンドルを操作する力は、ステムのパイプ部分がその高い剛性によって受け止め、分散させるべきものです。パイプが十分に硬ければ、内部を貫通している引き上げボルトにかかる力は純粋に固定のための引張力が主となり、曲げの力は最小限に抑えられます。

しかしながら、PAS CITY-Vの該当部品ではこのパイプ部分の剛性が設計基準に対して不足していました。これによって走行中の振動や荷重でパイプ自体が微細に変形を繰り返し、その内部にある引き上げボルトに対しても本来想定されていない曲げ方向の力や引張力の急激な変動が繰り返し加わることになったのです。

金属疲労による破断のリスク

金属部品は、一度や二度の大きな力には耐えられても、小さな力が何万回、何十万回と繰り返されることで目に見えない微細な亀裂が生じ、最終的に破壊に至る性質を持っています。これが「金属疲労」と呼ばれる現象です。

剛性不足のパイプの中で引き上げボルトは、走行のたびに繰り返しストレスを受け続けます。そして疲労の蓄積が限界点を超えた瞬間、何の前触れもなくボルトが破断してしまうのです。引き上げボルトが折れるとステムをフォークに固定していた摩擦力が瞬時に失われ、ハンドルが抜けてしまったり、タイヤの向きとは無関係にハンドルが空転したりする状態に陥ります。

このような事態が走行中に発生した場合、ライダーはバランスを保つ術を失い、深刻な事故につながることは想像に難くありません。したがって今回のリコール対策では、原因である剛性不足のステムパイプそのものを対策品に交換する必要があり、ヤマハ発動機は「ステムハンドル一式の交換」を無償修理の内容として提示しています。

PAS CITY-V リコール対象車両の確認方法

リコール対象車両を特定するためには、お手元の自転車に付与された番号を正しく読み取る必要があります。ここでは確認すべき番号の種類と、その見つけ方について詳しく解説します。

車台番号とPAS号機番号の違い

自転車には「車台番号(フレームナンバー)」と「PAS号機番号」という2種類の番号が存在しており、リコール対象の確認に必要なのは後者のPAS号機番号です。この違いを正しく理解することが、スムーズな確認作業の第一歩となります。

車台番号は防犯登録などに使用されるもので、フレームのヘッドパイプやサドル下のパイプなどに金属へ直接刻印されています。これは警察が盗難車を照会するためのものであり、今回のリコール確認には使用しません。

一方、PAS号機番号はアルファベットと数字が組み合わされた文字列で、自転車本体に貼付されたラベル(シール)に印字されています。刻印ではなくシールである点に注意が必要です。このシールは主にバッテリーを装着する部分の裏側、サドル下のパイプ(シートチューブ)、あるいはチェーンケース周辺などに貼られています。PAS CITY-Vの場合、サドル下の縦パイプの下部でペダル付近を確認すると見つけやすいでしょう。

年式別のリコール対象PAS号機番号

今回のリコール対象は2018年8月から2025年6月までに製造された車両であり、年式によって対象となるPAS号機番号の範囲が異なります。以下の表でご自身の番号と照らし合わせてください。

年式対象PAS号機番号の範囲対象台数
2018年モデルX1NG-0001001 ~ X1NG-00048253,825台
2020年モデルX1NG-1001001 ~ X1NG-10034252,425台
2021年モデルX2PD-0001001 ~ X2PD-00039002,900台
2022年モデルX2PD-1001001 ~ X2PD-10031752,175台
2023年モデルX2PD-2001001 ~ X2PD-20022001,200台
2024年モデルX2PD-3001001 ~ X2PD-30031252,125台

これらを合計すると、14,650台が今回のリコール対象となります。

番号の確認方法として、まず2018年モデルと2020年モデルでは「X1NG」で始まる番号が対象です。2018年モデルはX1NG-0001001からX1NG-0004825まで、2020年モデルはX1NG-1001001からX1NG-1003425までとなっています。

2021年モデル以降は番号のプレフィックスが「X2PD」に変わります。2021年モデルはX2PD-0001001からX2PD-0003900まで、2022年モデルはX2PD-1001001からX2PD-1003175まで、2023年モデルはX2PD-2001001からX2PD-2002200まで、そして2024年モデルはX2PD-3001001からX2PD-3003125までが対象範囲です。

オンラインでの対象確認方法

上記の番号範囲に含まれているかどうかの確認に加えて、最終的な確認はヤマハ発動機の公式ウェブサイトにある「リコール対象検索システム」で行うことを強く推奨します。このシステムでは、ご自身のPAS号機番号を入力することで、対象車両かどうかを正確に判定できます。番号範囲に含まれていても既に修理が完了している場合や、例外的に対象外となるケースも稀に存在するため、公式システムでの確認が最も確実な方法です。

リコール対象車両のユーザーが取るべき行動

ご自身の自転車がリコール対象であることが判明した場合、あるいはその疑いがある場合に取るべき具体的な行動について、優先度の高い順に解説します。

直ちに使用を中止する

これが最も重要かつ緊急のアクションです。リコール対象であることがわかった時点で、直ちに乗車を中止してください。たとえ現状でハンドルにガタつきがなく普通に乗れているように感じても、金属疲労は目に見えない内部で進行しています。明日の通勤で、あるいは次の交差点でボルトが破断する可能性を否定できないのです。

「週末に自転車屋に行こう」と考えてそれまでの数日間乗り続けることは、非常に危険な行為です。金属疲労による破断は予兆なく発生するケースが多く、ライダーが危険を察知して回避行動をとることは困難です。ご自身と周囲の安全のため、修理が完了するまでは別の交通手段を利用するようにしてください。

販売店への連絡と修理予約

修理(部品交換)は原則として、その自転車を購入した販売店で行われます。まずは購入時の保証書や防犯登録の控えを探し、購入店を特定してください。

購入店に電話をする際は、「ヤマハのPAS CITY-Vのリコールの件で連絡した」旨を伝えます。その際に手元に控えたPAS号機番号を伝えると、店舗側での確認がスムーズに進みます。リコール発表直後は部品の供給が追いついていない可能性や作業の予約が埋まっている可能性があるため、いきなり持ち込むのではなく、必ず事前に電話で「部品の在庫状況」と「作業可能な日時」を確認することをお勧めします。

引っ越しやインターネット通販での購入などによって購入店へ持ち込むことが困難な場合は、最寄りの「ヤマハPAS取扱店」または「ヤマハ電動アシスト自転車修理サポート店」に相談してください。ヤマハ発動機の公式サイトには販売店検索機能があり、修理対応が可能な店舗を探すことができます。ただし、他店購入の車両の修理を受け付けてもらえるかは店舗の方針によるため、事前の電話確認は必須です。

無償修理の内容と所要時間

指定された日時に自転車を販売店へ持ち込むと、無償修理を受けることができます。今回の対応はリコールによる無償修理のため、部品代や工賃をユーザーが支払う必要はありません。

作業内容は「ステムハンドル一式の交換」です。これに伴い、ハンドルバーに取り付けられているブレーキレバー、変速シフター、ディスプレイスイッチ、グリップ、ベル、ライトなどの部品をすべて一度取り外し、新しいステムに移植する作業が発生します。この作業プロセスにおいてブレーキワイヤーや変速ワイヤーの調整も行われることになります。

作業時間はスムーズにいけば30分から1時間程度と想定されますが、店舗の混雑状況によっては自転車を数日間預けることになる場合もあります。代替の交通手段を確保しておくのが賢明でしょう。

ヤマハ発動機専用コールセンターへの問い合わせ方法

対象かどうかの判断がつかない場合、近くに販売店がない場合、あるいは販売店の対応に不安がある場合は、メーカーが設置している専用のコールセンターへ問い合わせることができます。

ヤマハ発動機「PAS CITY-V ステムハンドル」無償交換コールセンターの電話番号はフリーダイヤル 0120-715-182 です。受付時間は平日の午前10時から12時30分、および午後1時30分から6時までとなっています。土日祝日および所定の休日は受付を行っていないため、平日の受付時間内に電話する必要があります。

問い合わせの際は必ず「PAS号機番号」を手元に用意してから電話をかけてください。オペレーターが番号を照合し、対象車両かどうかの確認から修理の手配まで、的確な案内を行ってくれます。

電動アシスト自転車の安全な使用と日常点検の重要性

今回のリコールは設計上の不備によるものでしたが、これを機に電動アシスト自転車特有のメンテナンスの重要性についても理解を深めておくことが大切です。

電動アシスト自転車にかかる負荷の特性

電動アシスト自転車は一般的な自転車よりも車体重量が重く、20kgから30kg程度あります。さらにモーターによる強力な駆動力が加わるため、フレームや各部品にかかる負荷は想像以上に大きくなります。特に発進時や登坂時にはハンドルを手前に強く引く力が作用し、ステム周りには大きなねじれ応力が発生します。

今回のリコール対象外の車両であっても、長期間使用していればボルトの緩みや金属疲労のリスクはゼロではありません。特に「ハンドルのガタつき」や「異音」といった症状は危険信号です。ブレーキをかけて車体を前後に揺らすとカタカタ音がする、ハンドルを切るとキシキシ鳴るといった症状がある場合は、早急に点検を受けることをお勧めします。

定期点検の推奨

自転車、特に構造が複雑な電動アシスト自転車は乗りっぱなしにするのではなく、半年に一度あるいは一年に一度はプロの整備士による点検を受けることが推奨されます。自転車店での点検では専用のトルクレンチを使用して各ボルトが適正な強さで締め付けられているかを確認し、目視ではわからない亀裂や変形をチェックしてもらえます。

今回のリコール修理を依頼する際に、可能であれば追加料金を支払ってでも自転車全体の点検を合わせて依頼することをお勧めします。ブレーキパッドの減りやチェーンの注油状態、タイヤの空気圧、スポークの緩みなど、リコール箇所以外の潜在的なトラブルも未然に防ぐことができ、より長く安全に愛車を利用することができるでしょう。

リコールの法的位置づけと消費者の権利

今回のリコール事案について、日本の製品安全制度における位置づけを理解しておくことも重要です。

自転車は「消費生活用製品安全法」の対象製品です。この法律に基づき、製品の欠陥によって重大な事故が発生した場合あるいはその恐れがある場合、事業者は消費者庁へ報告し危害の発生拡大を防止する義務を負います。今回のヤマハ発動機の対応は、この法的枠組みおよび経済産業省の指導指針に則ったものです。

リコール届出番号が付与され消費者庁のリコール情報サイトで公開されることは、この問題が公的に管理され解決まで追跡されることを意味します。ユーザーにとってはこれがメーカーの任意のサービスではなく「社会的な安全対策の一環」であることを理解し、速やかに修理を受けることが重要です。

消費者としてリコール情報を確認する習慣を持つことも大切です。消費者庁や製品評価技術基盤機構(NITE)のウェブサイトでは、自転車を含む様々な製品のリコール情報が公開されています。自分が所有する製品に関するリコール情報がないかを定期的にチェックすることで、安全を守ることができます。

PAS CITY-V リコールに関するよくある疑問への回答

PAS CITY-Vのリコールについて、多くのユーザーが疑問に思う点について解説します。

リコール修理にかかる費用についてですが、今回のリコールは無償修理として実施されるため、対象部品の交換に関する部品代および工賃は一切かかりません。ただし、リコール対象外の部品の修理や交換、あるいは全体点検を依頼した場合には別途費用が発生することがあります。

修理にかかる期間については、店舗の混雑状況や部品の在庫状況によって異なります。作業自体は30分から1時間程度で完了することが多いですが、予約が混み合っている場合や部品取り寄せが必要な場合は、数日から数週間待つことになる可能性もあります。早めに販売店へ連絡することが重要です。

購入した店舗が閉店している場合や遠方で行けない場合は、最寄りのヤマハPAS取扱店に相談してください。ヤマハ発動機の公式サイトで取扱店を検索できます。また、専用コールセンターに電話すれば、近くで対応可能な店舗を案内してもらえます。

リコール対象車両を中古で購入した場合でも、無償修理を受けることができます。購入時期や購入経路に関わらず、対象車両であれば修理の対象となります。

まとめ:PAS CITY-Vユーザーが今すぐ確認すべきこと

ヤマハ PAS CITY-Vのステムハンドルリコールは、14,650台に影響する大規模な安全対策措置です。その原因はステムパイプの剛性不足という設計上の問題にあり、最悪の場合は走行中にハンドルが操作不能になる危険性があります。

該当するユーザーの皆様におかれましては「まだ壊れていないから」という楽観的な判断を捨て、直ちに乗車を中止し無償修理を受けることが重要です。これは単なる部品交換ではなく、ご自身と周囲の安全を守るための不可欠な対応です。

今すぐ確認すべきことは、サドル下のパイプ付近に貼付されているラベルからPAS号機番号を読み取り、対象範囲に含まれているかどうかを確認することです。不明な場合はヤマハ発動機の公式サイトで検索するか、専用コールセンター(0120-715-182)に問い合わせてください。安全で快適なサイクルライフを取り戻すために、まずは今すぐあなたの自転車のPAS号機番号を確認しましょう。

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